「憲法改正国民投票法案」を考える緊急院内集会 (2005.4.12)

 

http://www.jdla.jp/jim-diary/jimu-d.html

 

 

2005年04月12日(火)

「憲法改正国民投票法案」を考える緊急院内集会  

本日、「報道の自由を考える弁護士の会」の集い。
次の企画として、メディア規制の観点から、改憲国民投票法案を考える院内集会をすることに。日本ペンクラブ、日本ジャーナリスト会議が共同企画者として名を連ねてくれる。新聞労連・民放労連・出版労連も、という見通し。

2001年11月に「超党派」の「憲法調査推進議員連盟」が発表した法案がある。通称「議連案」。自民党は、これを自民党案としたうえ、昨年11月3日公明党と摺り合わせて一部改定。これが、与党案となっている。

この法案のメディアに対する敵対意識は常軌を逸していると言って過言でない。がんじがらめの規制を掛けて、「絶対に、メディアで憲法改正問題の議論などさせるものか」という意気込み。そこで、緊急院内集会の副題を「自由な報道なくして、改憲案の是非を判断できるのか」とした。

たとえば、規制の対象はテレビや新聞、出版だけではない。インターネットにも及ぶと考えざるをえない。法(案)69条には、「新聞紙(これに類する通信類を含む。以下同じ)」として、規制対象となる新聞紙の定義が盛り込まれている。「これに類する通信類」とは、インターネットも含まれることになろう。私の「日記」など、真っ先に検挙されかねない。

同条で規制される行為は、「国民投票に関する報道及び評論において、虚偽の事項を記載し、又は事実をゆがめて記載する等表現の自由を濫用して国民投票の公正を害する」ことである。その違反には「2年以下の禁固又は30万円以下の罰金(85条1項)」が科せられる。処罰対象の行為は「表現の自由を濫用して国民投票の公正を害する」ことである。こんなに漠然とした構成要件では、あれもこれも犯罪とされてしまう。マスコミ・ミニコミに及ぼす萎縮効果は著しい。

法案の70条3項は、「何人も、国民投票の結果に影響を及ぼす目的をもって新聞紙又は雑誌に対する編集その他経営上の特殊の地位を利用して、当該新聞紙又は雑誌に国民投票に関する報道及び評論を掲載し、又は掲載させることができない」とする。一読して意味が理解できるだろうか。「経営上の特殊の地位を利用」という犯罪行為とは何なのだろう。

自民党が配布した解釈資料によれば、ここでいう「経営上の特殊の地位」とは、「新聞紙、雑誌に記事を掲載し又は掲載させることについて、相当の影響力を有する地位をいう(新聞社の社長、編集長、大株主など)」とされている。これなら分かるだろうか。普通の国語能力ではますます分からない。普通以上の国語能力では、ますますその危険性が見えてくる。違反者には、同じく「2年以下の禁固又は30万円以下の罰金(85条2項)」が待っている。

最大限に表現の自由が保障されねばならない局面で、表現の自由が圧殺されようとしているのだ。

集会の案内文は、以下のとおり。
 今国会にも提出と報じられている憲法改正国民投票法案については、一括選択による投票方法、投票日までの期間の在り方、有効投票の在り方、投票権者の範囲、無効訴訟の在り方など多くの問題が指摘されています。
 しかし、それ以上に問題なのは、国民の自由な選択を可能とするために最低限必要となる情報を流通させる手段として重要なメディアに関する報道のあり方や国民投票運動について過度に規制をするおそれがあることです。このような規制は、国民主権の観点から見過ごすことはできません。
 憲法改正そのものに対する立場を越え、表現の自由を制約するおそれのある国民投票法案を十分に検討する必要があります。
 そのために、憲法改正国民投票法案について考える院内集会を緊急で開催します。一名でも多くの国会議員の方にご出席いただけるようお願い致します。
日時:4月18日月曜日午前11時45分から午後0時45分まで
場所:参議院第3、4会議室にて
問題点の解説:第二東京弁護士会副会長
発言:学者、主催団体関係者など
ご出席いただいた議員の皆様にもご発言をお願い致します。

投票法案に対する基本姿勢に関して、出席者間に幾ばくかの議論があった。
「法案がもつ、表現の自由に対する規制について焦点を当てるべきで、改憲阻止を強調すべきではない」
「メディア規制に焦点を当てるとして、国民的議論を保障し国民の意見を真っ当に反映する法案なら良し、とする立場には抵抗がある」
「今から、そのような仮定で問題提起する実益はない。改憲を推進するための手続き法は不要だという人も、表現の自由規制だから反対という人もともに参加できる運動を組むべきだろう」
「手続き法が、徹底的に真っ当になれば、改憲派は改憲発議を躊躇せざるをえなくなるだろう」「パッケージ方式ではなく、テーマごとに賛否を問う投票方式にすることがその典型」
「改憲阻止という立場だけからの法案批判は具体性を欠いて迫力がない。徹底的に法案に即した分析をすべきだ」

結論が必要なのではない。見解はいろいろ。詰めて意見の一致を求める団体ではないのだから。しかし、意見交換は必要であり有益である。

私は思う。改憲勢力が本気で正確に民意を反映する真っ当な国民投票法を作ろうという事態はあり得ない。仮に法案批判の運動の高揚がそこまでの状況を作り出せたら、それこそ憲法改悪の企図を潰す護憲派のチャンスであろう。