横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー (2005.4.15)

 

 

横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー   2005.4.15

もくじ
裁量労働制と勤務時間について
教授会 大学院国際総合科学研究科の教授会(14日)
メディアの報道 東京新聞12
投稿 ストロナク新学長の就任演説に思う

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発行 横浜市立大学教員組合執行委員会
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ホームページ http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm
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 裁量労働制と勤務時間について

 現在、新法人のもとで雇用条件を確定し、大学を運営するにあたって必要な
就業規則について折衝することと、労使協定を締結することが、労使のあいだ
でとりあえず必要なこととして課題となっています。
 組合は、任期制・年俸制・教員評価制度の導入など労働条件の変更に関して
当局に交渉を要求し、粘り強く協議、折衝を続けているところであり、このよ
うな問題の解決が強く望むところです。ただし、大学の正常な運営のために
は、一定の条件が満たされれば、労使協定を締結する等のことは、組合として
も当然です。
 ただし、現在、いくつかの問題があるために、就業規則の作成手続も、労使
協定の締結も遅れているのです。これらの問題を解決して手続を進行させるこ
とができるよう、さらに折衝、協議を重ねなければなりません。
 すでに全体の問題は、組合の要求書等を通じて述べてきていますが、さらに
事態を明確にするために、ここでは特に、労使協定締結の障害となっている、
勤務時間制度と裁量労働制の問題について解説します。

勤務時間 なぜ、6時15分まで? 当局にも修正する用意
 教員の勤務時間について、当局案は、5限の授業が1740分まであることを
理由として、815分から1815分までとしています。一般職員について17
15
分までとするのと比べて1時間長いのです。これは教員の拘束時間を、1時
間延長することを意味しており、不当であります。
 当局側は、実際には管理しないのだから問題ないのではないかとしていま
す。たしかに休憩時間も1時間45分とされており、実働時間に違いはありませ
ん。また、当局は、教員の勤務を実際に勤務時間どおりに管理することはない
と明言しています。それゆえ、この勤務時間規定は、一見どうでもよいことの
ようにも見えます。
 しかし、勤務時間は、正規に定められてしまえば、職務に専念する義務のあ
る時間となることに変わりはないのであり、場合によっては拘束されることを
覚悟しなければなりません。たとえば、子の保育園・学校等の送迎や、大学外
のさまざまな集会やNPO等の団体の会議への参加、兼業、さらには、組合活
動も制限を受けるおそれがあります。実際に、当組合は現在も、勤務時間を考
慮して、集会や会議は原則として515分以降に開いています。
 それゆえ、当組合は、勤務時間を1715分までとするよう要求しています。
時間外労働や休憩時間に関連する一連の労使協定は、すべて勤務時間と関わり
ますので、この問題が解決されないと妥結に至ることができません。
 ただし、折衝においては当局側も、この組合の主張に一定の理解を示してお
り、今後、整理すると述べています。当局側が勤務時間規定を修正すれば、こ
の点での障害はなくなります。当組合としては、この方向で事態を変えるよ
う、さらに協議を重ねます。

裁量労働制
 いわゆる「専門業務型裁量労働制」については、教員の業務形態にもよりま
すが、それが当該の教員にとって好都合であり、かつ過重労働にならない保障
のある場合については、適用することに当組合は、当初から賛成しておりま
す。
 しかし、現在の当局案においては、裁量労働制を任期付き雇用の適用とセッ
トにすることになっており、この点に重大な問題があります。
 松浦最高経営責任者(現副理事長)名において3月15日付けで教員に配布さ
れた文書は、任期制について説明するなかで、裁量労働制により「兼業の機会
もひろがる」などとしています。逆に言えば、兼業など学外活動において、任
期制を受け入れない教員の待遇をより不利なものとするために、裁量労働制を
用いようとしているのであります。このような差別は不当であるばかりではな
く、任期制に同意しないために不利益な取扱いをすることは違法であります。
断じて容認することはできません。
 したがって、当局案の裁量労働制がこのような差別的取扱いを前提としてい
るかぎり、裁量労働制の適用に関する労使協定は締結することができません。
 この点では当局はいまだ譲歩する姿勢を見せていませんが、今後、力強く修
正を要求していきます。
 また、裁量労働制の適用がない場合にも、教員の労働時間については本人の
判断に委ねることは当局も了解ずみですが、さらに、兼業等において不利益に
ならないようにすることをあわせて要求していきます。
 なお、その可能性は低いのですが、当局が態度を変更し、勤務時間を規定ど
おりに実際に管理しようとした場合にも対抗手段はかずかずあります。
 まず、教員は当然、規定の時間を越えて実験などの労働をせざるをえませ
ん。その場合、時間外労働に関する労使協定(36協定)の締結が必要です
が、教員についてのこの種の協定を当局は用意していません。したがって、現
状では、時間管理を厳格に行なえば、かえって違法な労働を行なわせざるをえ
ないこととなり、不可能です。
 また、教員についても36協定を結んだのち、規定どおりの時間管理を当局
が強行した場合、教員としては、きちんと出勤しつつ、授業、実験、研究室で
の研究(論文作成や文献読解作業を含みます)、授業準備作業?これらはすべ
て「労働」です?などを行なった分については、きっちりと残業手当の支給を要
求するという対抗手段もあります。
 わたしたちとしては、いたずらに恐れることなく、この問題については、単
に裁量労働制の差別的運用に反対すればよいのです。



 教授会 大学院国際総合科学研究科の教授会(14日)

 横浜市大の新制度においては、大学院は、国際総合科学研究科と医学研究科に
分かれ、それぞれに教授会が設置されています。
 昨日、金沢八景キャンパスでは、大学院国際総合科学研究科の教授会が開催さ
れました。7日の国際総合科学部の教授会と同様に、ここでも教授会の基本的な
ありかたと、代議員会の構成が問題になり、討論が行なわれました。
 その結果、代議員会は、専攻ごとに専攻所属の教員のなかから選挙により3人
ずつを選出して代議員とすること、これに研究科長1名を加え、定員を16名とす
ることが決まりました。また、教授会は、研究科長が招集を決定するほか、構成
員の25パーセントの要求があった場合に招集されることが決まりました。
 代議員会の構成員は、教授会の選出する者でなければならないという、学内民
主主義の最低限の要件がここで確保されました。他の研究科教授会および学部教
授会もこの例に従うよう、呼びかけます。


メディアの報道 東京新聞12

 すでに3月にも伝えたとおり、最近、メディアでは横浜市大の問題が報道され
るようになってきました。12日付けの『東京新聞』は、「揺れる『全員任期制』
 独法化の横浜市大」という見出しで、原則全員任期制の実施という当局の思惑
どおりには、事態が進んでおらず、実際には多くの教員が任期制に同意しないで
いることを伝えています。

(メール版のみ、全文を掲載いたします。
「揺れる『全員任期制』 独法化の横浜市大

 四月から地方独立行政法人となった横浜市立大学で、「全教員を原則任期制
とする」とした方針が揺れている。教員に任期制への同意を求めた大学側に対
し、特に三学部の統合で新設された「目玉」の国際総合科学部の過半数の教員
が、態度を留保するよう呼び掛けた教員組合に委任状を託す事態となっている
からだ。任期制で競争原理を持ち込み教員の質を高めたいとする大学側だが、
思惑通りに運ばず多難な滑り出しとなっている。 (金杉貴雄)

大学側、思惑通り進まず
 大学側によると、任期制により、教員は教授、準教授(旧来の助教授、講
師)、助手に分類。教授は五年任期で何度も契約更新されるが、準教授は五年
任期で更新は二回まで、助手は三年任期で更新は一回まで。つまり教授は継続
的に雇用されるが、準教授は最長計十五年、助手は同六年で契約が切れる。
 大学側は「契約の継続を希望する準教授や助手は、契約期間中に博士号を取
得したり優れた研究実績を残したりして、教授あるいは準教授への昇格を目指
してもらう」とする。
 任期制は雇用形態が変更となるため、個々の教員の同意が必要とされるが、
同意しない場合でも身分の継承が地方独立行政法人法で義務づけられているた
め、従来通りの「身分の定めのない契約」として継続される。
 だが、大学側は任期制を選べば(1)裁量労働制を結ぶことができ勤務時間
の自由がきく(2)基本的な一律の研究費(年三十万円)のほかに、付加的な
研究費(最高年五十万円)を優先的に配分する?などとし、有利な面があると
する。
 これに対し、市立大学教員組合は「雇用形態で差別的な扱いをすることは許
されない」と反発。各教員に「任期制に同意せず組合に委任状の提出を」と呼
び掛けている。
 大学側は当初、三月二十二日を同意期限としたが、同意書が集まらなかった
ため期限を延期している。新大学がスタートした現在でも「どの学部で何人が
同意したかは、現時点で答えられない」という。
 一方、教員組合の山根徹也書記長は、新大学の二つの学部のうち組合組織率
が低い医学部については不明だが、国際総合科学部(旧商・国際文化・理学部)
では教員約百二十人のうち半数以上から委任状を預かっているといい、任期制
に同意したのは、ごく一部ではないかとみている。
 組合側は大学側に話し合いを求めているが、教員の処遇をめぐる混乱が長引
けば、学生の不安にもつながりかねない。」)



 投稿

 組合員から新学長の就任演説についてのコメントが寄せられました。組合と
しての見解ではありませんが、組合員の参考に資すると考え、掲載します。

ストロナク新学長の就任演説に思う。

 4
4日の教員説明会におけるブルース・ストロナク新学長の就任演説には、注
目すべき点がいくつかあった。たくさんの教員がその演説に送った拍手は、外
国人新学長に対する単なる儀礼的なものではなかったように思う。
 私がとりわけ注目したのは、彼が、大学運営における「民主主義」のあり方に
は多様性があり、今何が目指されるべきかに触れ、それを「シェアード・ガヴァ
ナンス」(Shared Governance)と名づけたことである。ストロナク氏は、一方
の端に伝統的なケンブリッジ大学の教員による「直接民主制」をあげ、他方の端
にキューバのハバナ大学の「民主主義的中央集権制」をあげた。そして、彼はそ
の双方を退け、アドミニストレーションとアカデミックの相互信頼に基づく、異
なる意見を持った構成員による透明性のある共同統治を実現する「民主主義」の
あり方を模索しようと呼びかけた。 
 言うまでもなく「プロジェクトR」の大学組織論は、行き着くところ「命令と
服従」を大前提とした「ハバナ大学型」であると多くの教員は感じている。彼ら
は大学を企業か軍隊かのように「効率的に」トップ・ダウンで運営したいよう
だ。今回の「プロジェクトR」は、教授会を事実上解体して大学運営の民主主義
を徹底的に形骸化し、教員の間に憤激と絶望を引き起こし、その結果、多くの優
れた教員が去ってしまった。 
 こんな状態だからこそ、ストロナック氏の「シェアード・ガヴァナンス」論に
多くの教員が一縷の希望を感じ、拍手を送ったのであろう。それはなお抽象論に
とどまってるが、「大学は単に管理されるだけの組織であってはならず、多様な
異なった意見を尊重しつつ、競争的市場社会で生き残れるコミュニティーとして
運営されねばならない」とのストロナク氏の主張には納得できる点がある。とり
わけ専門家集団の組織である大学は、教員の主体的参加なしにはその生命力は失
われ、競争力を失う。民主主義なしには、教員の主体的参加、教育・研究の発展
はありえない。もちろん民主主義の形態は固定的なものではなく、多様な意見を
尊重しつつ、個性ある大学経営の道を切り開く民主主義的大学運営の道は必ず見
出せるに違いない。
 もう一つ、ストロナク氏の演説で注目すべき点を挙げたい。彼は、「教育改革
の永続性」を強調し、教員は教育について休むことなく「学び直す」必要がある
ことに触れた後、教員評価においては、専門家同士の「同僚評価」がその成功の
鍵になると述べた。これまで教育改善(FD)に系統的に携わってきたわれわれ
は、教員相互の励ましあいと交流を通じて授業改善を模索し新たな地平を築きつ
つあった。しかし、「プロジェクトR」はわれわれの地道な改革努力を踏まえる
のではなくこれを踏み潰し、非現実的な「上からの評価」を振りかざし、大学を
大混乱に陥れている。
 それ故にこそ、今回ストロナック氏が、「同僚評価」の重要性に触れたこと
は、意義深い。大学における授業評価制度の確立を推進している専門家集団の間
では、「同僚評価」の重要性はいまや、いわば常識になっており、彼の主張はな
んら新しいものではない。だが、それがわれわれに新鮮な印象を与えるのは、横
浜市立大学の現在の異常事態をあらわしているとしか言いようがない。
 だが、ストロナク氏の演説は一般論を述べたに過ぎない。私たちは、これから
の彼の主張がよき実を結ぶよう、その実践を注意深く見守る必要がある。そし
て、現場からの教育改革の実践と現場からの大学運営への積極的参加によって、
民主主義的な新たな「大学の再建」をめざして再出発すべきだと思う。 
(一組合員)