横浜市立大の矢吹晋名誉教授に聞く 反日運動 今後の行方 デモ続発の恐れ 政府 収拾できぬ事態も (2005.4.17)

 

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2005年04月17日

横浜市立大の矢吹晋名誉教授に聞く 反日運動 今後の行方 デモ続発の恐れ 政府 収拾できぬ事態も

中国新聞(2005/04/15)

横浜市立大の矢吹晋名誉教授に聞く
反日運動 今後の行方
デモ続発の恐れ 政府 収拾できぬ事態も

 中国の反日運動は、収拾の気配はなく、十七日には北京で日中外相会談が開かれる予定。反政府運動への発展など内政への波及と今後の展開について、矢吹晋・横浜市立大名誉教授に聞いた。(共同編集委員・岡田充)
 ―中国側は「デモは自発的」と言いますが。
 官製デモではないと言いたいのだ。やらせではないと思う。江沢民前総書記が反日をあおってきたことが大きい。愛国主義だけを主張し国際協調を言わないから、排外主義、狭い民族主義になる。江氏の反日と、小泉純一郎首相のアジア無視が共振したのだ。
 ―日本大使館への投石など被害が出ているが、中国は「責任はない」と言います。
 中国外務省報道官は最初は(暴走は)見たくないと言っていたのに、だんだん変化した。「責任はない」というのはデモの背景についてであり、謝罪問題とは別だろう。当局が恐れているのは、今規制すれば、反日が反政府に変わることだ。最近、浙江省の化学工場で三万人のデモがあり、当局の規制で負傷者が出た。北京で規制すれば、反政府デモに転化する恐れがある。
 デモ計画者は巧みに計算している。中国ではこれから五月一日のメーデーに続き、一九一九年の反日運動「五四運動」記念日、六月四日の天安門事件記念日など、反日スケジュールがめじろ押しだ。今回のデモは始まりにすぎない。中国政府が対応を誤れば、各地に拡大し、収拾できない事態に発展する。
 ―中国の対応が揺れています。胡指導部は一枚岩ですか。
 温家宝首相は三月の全国人民代表大会(全人代)の閉幕記者会見で、対日関係改善に向けた三提案をした。胡錦濤政権は、外交政策で「平和的台頭」を強調するなど独自色を出し始めた。(温首相の三提案は)江時代の反日外交を軌道修正しないとまずいという意味だ。
 しかし問題は、これまで反日をあおってきた江沢民サイドだ。胡政権は江時代に広がった腐敗や汚職への取り締まりを開始し、過熱した経済への引き締めに乗りだした。だが江時代の既得権益者たちは愉快ではない。邪魔するには、騒ぎを起こすのが一番だ。
 ―共産党の指導力に陰りが出ているのでは。
 天安門事件後、江氏は政治改革を全くやらず、不作為のサボタージュをしてきた。経済は発展し社会も変化したが、政治だけは変わらない。共産党の統治は揺らいでいる。江政権も、長期政権で腐敗した旧ソ連のブレジネフ書記長と同じだ。
 ―権力闘争や反政府運動に発展する可能性は?
 中国は今、国際社会のイメージが悪化しても国内の安定を重視している。「愛国無罪」などと法治国家なら言ってはならないことを言うのも安定のためだ。中国外務省報道官の発言も、国内向けの説得だ。反政府運動に転化しないよう、事態沈静化を図っている最中だ。デモは規制するかもしれないが、北京のデモを見ると、主催者側の言うことを群衆は聞かない状態だ。政府は事態をコントロールできていない。
 ―日中外相会談の見通しは。
 日曜だから、警戒の厳しい北京を避け、地方でまた抗議デモがあるかもしれない。日本側としてはぜひ、中国から謝罪の言葉を引き出したいところだが、政権の苦境を考えるとどうだろうか。会談では当初、温首相の関係改善提案に基づき、具体策を協議する予定だった。今は改善姿勢は出しにくい。

 やぶき・すすむ 38年、福島県生まれ。東大経済学部卒。東洋経済新報、アジア経済研究所を経て76年から横浜市立大教授、2004年3月から名誉教授。

 

投稿者 管理者 : 20050417 02:03