日中首脳会議の真実 (2005.4.24)

 

メディアを創る

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日中首脳会議の真実  天木  2005/04/24 

 4月24日−メディアを創る

 

 日中首脳会談をめぐる真実

 

 すべて想定の範囲内だった。埋まらなかった日中双方の溝の深さ。それにもかかわらず会談が有意義だったと一方的に強調する小泉首相の姿。そして真実を何も伝えずに外務省が「与える」会談要旨を判で押したように垂れ流す日本のメディア。これでは国民は騙されてしまう。

しかし真実は驚くほど寒々しいものであったに違いない。それを一番知っているのは小泉首相自身だ。そして会談に同席した杉浦官房副長官や田中外務審議官、佐々江アジア局長らだ。さぞかし後ろめたい思いでいることであろう。首脳会談までやって関係改善の糸口さえ見つからず、しかもそれを国民に隠そうとしているのだから。

 いずれ真実はボロボロもれてくる。それよりも、今後も反日デモが続くという「事実」によって日中首脳会談の失敗が証明されることになる。

 その時を待つことなく、私は次の通り今回の歴史的な首脳会談を評価する。想定内であったとはいえ日本外交のあまりの劣化ぶりに我慢がならないからである。小泉首相が日本の首相で居る限り日中関係は決して好転しないだろう。小泉首相と胡錦濤主席との間の首脳会談も二度と開かれないであろう。被害者は反日デモの矢面にさらされる日本国民であり、一生懸命に働いてきた日本の中国進出ビジネスマンである。

 

1.私は昨晩から今朝にかけての日本の報道をつぶさに観察してみた。どれ一つとして真実に迫る記事や解説がない。議論に熱がない。深みがない。これはどうしたことか。皆わかっているのだ。この会談の無意味さを。しかしそれを書くと小泉首相に傷がつく。官邸は必死でメディアを規制しようとする。メディアがそれに従順に従っているのだ。首脳会談が終わったあとのNHKなどの醒めた報道姿勢は異常だ。これほど注目された歴史的首脳会談であるのに、そしてこの種の首脳会談の後には決まって特別報道を大々的に行うのに、今回はまったく報じられなかった。どう報道してよいかわからなかったのだ。報道振りを必死に考えていたのだ。

2.翌日の各紙やテレビ番組をみて報道関係者の苦衷をあらためて感じた。どれもこれも悩んでいるのだ。元気がないのだ。面白くないのだ。本当のことを書けない、言えないもどかしさ。それでいて中国政府に対する腹立たしさが随所ににじみ出る。まるで自慰行為をしているようなものだ。

「困っているのは中国政府だ」、「国民の不満が政府に向かうことを恐れている」、「世界の評判を落として損をするのは中国だ」、「行き過ぎた愛国教育が裏目に出た」などなどの言葉が踊る。しかしこれは勘違いも甚だしい。世界と中国との関係は良好だ。関係が悪化しているのは日本だけなのだ。中国国民の怒りが向けられているのは日本だけなのだ。世界は日中がケンカをするのは好ましく思っているのかもしれないが、日本が正しい、中国が悪いなどと本気で思う国はない。日本の味方をしているのは米国だけだ。しかもその米国さえいざとなったら中国との関係を優先するのだ。

3.それにしても小泉首相は卑屈な態度を見せたものだ。笑顔を見せない胡錦濤首相に駆け寄って、両手で握手し作り笑いを浮かべて友好会談を演出して見せようとした。会議後の記者会見で「日中関係改善に向けて対話促進で一致した」「有意義な会談であった」と一方的に自画自賛してみせた。しかしそんな演出をしてみたところで、一方の胡錦濤主席は会談直後の単独記者会見で「侵略戦争を反省し、中国人民の感情を傷つけることをするな」「言葉ではなく行動で示せ」と明言しているのだ。これほどの強い対日批判はない。一体どんな会談をしていたのか。小泉首相は正直に白状すべきだ。

4.そもそもこの首脳会談に臨む両首脳の外交に対する基本姿勢が対照的だ。胡錦濤出席は日中間の基本的問題に正面から取り組もうとした。日中関係を定めた三つの文書を引用したことの意味は重い。72年の日中共同声明、78年の日中平和友好条約、98年の日中共同宣言がそれだ。ここには歴代の日中指導者たちが苦労を重ねて積み上げた合意がある。その精神に反する言動を小泉首相が取り続けるから日中関係が悪化したのだ、中国国民が怒るのだ、そう言っているのだ。まことに筋の通った申し入れである。これに対して小泉首相はどうだ。会談の冒頭にアチェの被災地を訪れた感想を長々と述べて友好的な雰囲気をつくろうとしたという。これに対し胡錦濤主席が目を白黒させたという。そもそもこれほど重要な会談を前に一日中アチェの被災地を訪れて子どもたちとフラフープをしてパフォーマンスをしている小泉という政治家の資質を疑う。会談後の「ベリーグッドミーティング」と軽口を叩く不真面目さに不快感を覚える。不勉強な小泉首相は、「日中関係を定めた三つの文書」といわれても訳がわからずに目を白黒させたに違いない。アチェから疲れて帰ってきて会談に臨むのではなく、十分に勉強して襟を正して歴史的会談に臨むべきなのだ。

5.極めつけは、会談後の記者会見で、「首脳会談は外相会談と同じである必要はない」として、歴史認識や靖国参拝についての対応を避けたことだ。ふざけるな、何の為に必死になって首脳会談を設定したのだ。首脳同士で重要な問題を話し合うはずではなかったのか。現に胡錦濤主席は会談ではっきりと問題提起したではないか。中国の要求を明確にぶつけてきたではないか。

  首脳会談で面と向かって答えずに、会談後の邦人記者会見において、「今後の靖国は適切に判断する」との主張を繰り返して参拝の可能性を否定しない小泉首相。まるで空威張りのガキのようだ。ここまで指導者の器量の違いを見せつけられた首脳会談はかつてなかった。そんな指導者を頂く日本は中国との戦いに既に根本のところで負けているのだ。