「意見広告の会」ニュース273 (2005.4.25)

 

 

「意見広告の会」ニュース273

*ニュースの配布申し込み、投稿は、
  qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp まで、お願い致します。

** 目次 **
1 国会で更に授業料問題を審議
     衆院文科委員会 4月20日 4月22日
1−1 この間の国会状況
     「意見広告の会」事務局
1−2 国立大の授業料値上げ「急激すぎる」 衆院委で文科相
      Asahi-com  200504222313
1−3 質疑速報
     *質疑の模様はビデオでご覧になることができます。
1−4 復習「12・22文書」
      国立大学法人支援課長 清木孝悦
1−5 国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
     (衆議院文部科学委員会 二〇〇五年四月二二日)
2 首大 レッドパージ:「世間の目」とは違った現実  「だまらん」より
      2005420日<memory> http://pocus.jp/damaran.html
 +それにしても「朝日」の記事の劣化には驚くばかり


***
1 国会で更に授業料問題を審議
     衆院文科委員会 4月20日 4月22日
1−1 この間の国会状況
     「意見広告の会」事務局
 衆議院文部科学委員会は「国立大学法人法の一部を改正する法律案」(富山三大学の
統合、筑波技術短大の4年制化など)の審議に伴い、国立大学授業料標準額値上げに関
わる質疑が連続して行われ、さながら集中審議の様相を示しました。
 05年度授業料標準額は、3月31日付文科省令の発令により既に1万5千円上げで
決定していますが、その無責任かつ強引な手法への揺り戻しが生じています。いささか
時機を失した観もありますが、「国立大学法人法・意見広告の会」の意見広告制作者ら
を中心とした2月、3月に行われた国会対策の効果が現れてきています。
 詳細は速記録等の衆議院HPへの掲載後に更に続報いたします。

1−2 国立大の授業料値上げ「急激すぎる」 衆院委で文科相
      Asahi-com  200504222313

 中山文部科学相は22日、国立大学の授業料値上げについて衆院文部科学委員会で「
余りにも急激すぎる。ちょっと問題ではないか」と懸念を示した。松本大輔氏(民主)
らの質問に答えた。
 文科省が年間授業料の目安となる「標準額」を今年度から1万5000円上げて53
万5800円としたのを受け、ほとんどの国立大で授業料が引き上げられた。
 62年に東大に入った中山文科相は「それにしても随分高くなったもんだなという感
慨はある。自分たちのころは9000円だったから、とんでもないと思う」と語った。
 

1−3 質疑速報
 *質疑の模様はビデオでご覧になることができます。
 *http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index.htmから「衆議院審議中継」を
選択、「日  本語」カレンダーの日付「文部科学委員会」「説明・質疑者名」
 *「Windows Media Player」または「RealPlayer」などが必要です。
 *以下の記事の「分」は、その質疑者の映像の何分頃かを示します。

 4月20日分
*加藤尚彦議員(民主党) 43分頃
 12月22日文科省「事務連絡」文書について、混乱を招いたのではないか。
・石川文科省高等教育局長
 
標準額を改定する方針となった。改定に固まったということで各法人に連絡した
+コメント
 12/22文書を復習(1−5)すれば分かるように「方針となった」のではなく、
「改訂することとなりました」としている。国会軽視である。

*石井郁子議員(日本共産党) 冒頭
 03年文科大臣、副大臣答弁に違反している。今後値上げをしないか。
・中山文科大臣
 気持ちとしては、年々上げるものではない。
+この他石井議員は、労基法違反問題、大学病院の経営、教職員数の削減問題を扱って
います。

 4月22日分
*横光克彦議員(社会民主党・市民連合) 9分頃
 12月22日に引き上げが通知されている。
 概算要求では標準額の値上げを方針にしていないではないか。
 なぜ、突然に標準額を引き上げることになったか。
・石川高等教育局長 11分ごろ
 これまでも概算要求時には授業料の引き上げ盛り込んでいない。
 予算編成の過程で決定した。
+コメント
 石川局長は苦しい答弁を続けていました。この答弁には問題があります。参院で追及
したいところです。
*川内博史議員(民主党・無所属クラブ) 57分頃
 今年度の標準額値上げ手続きでどんな反省があるか。
・石川局長
 学長の意見を十分に聞いていない、全く聞いていなかったわけではないが。
 周知期間を十分に取れるようにしたい。
+コメント
 一体どこの学長に聞いたと言うのでしょうか

松本大輔議員(民主党・無所属クラブ) 57分頃
 幹部職員・理事の文科省出向者の数を問いただしたい。一体どれほど法人の自主性 
が強まったか。
+1−2も松本議員の質問に対する答弁


1−4 復習「12・22文書」
事 務 連 絡

平成16年12月22日
各国立大学法人
学生納付金担当理事 殿

文部科学省高等教育局
国立大学法人支援課長 清木孝悦

国立大学の授業料標準額の改定について

平成17年度以降の授業料標準額については、私立大学の授業料等の水準など社会経済
情勢等を総合的に勘案し、別紙案のとおり改訂することとなりましたのでお知らせしま
す。

今後、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令(平成16年3月31日文部科学
省令第16号、以下「費用省令」。)の改正を予定しています。

ついては、下記にご留意の上、必要なご検討、ご対応をいただくようお願いいたします



1.各国立大学における具体の授業料の改定については、費用省令の定める額を標準と
して、各国立大学法人の学則等により定められているところです。
2.各国立大学法人において授業料の額を改定される場合は、学生・保護者に対する事
前の周知に努めていただくようお願いいたします。(なお、各国立大学法人においては
、これまでも募集要項等において、授業料等が予定額であり、入学時または在学中に改
定を行った場合には、改定時から新たな授業料等を適用することなどを周知されてきた
ところと思います。)
3.なお、疑問点については、問い合わせ先に照会願います。


1−5 国立大学法人法の一部を改正する法律案に対する附帯決議
     (衆議院文部科学委員会 二〇〇五年四月二二日)

政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである


国立大学法人の再編・統合に当たっては、教育研究基盤の強化とともに、個性豊か
な大学の実現に資するよう努めること。 また、地域の知の拠点としての役割に鑑み、
各国立大学法人は地域とのさらなる連携に努めること。

障害者に対応した高等教育機関の整備については、筑波技術大学の整備・支援に努
めるとともに、一般大学における受入れの促進を図ること。また、筑波技術大学は、聴
覚・視覚障害者を対象とする我が国唯一の高等教育機関であることに鑑み、障害者教育
に関する支援及び情報の発信等に努めるとともに、大学評価に当たってはその教育研究
の特性に十分配慮すること。

授業料等の標準額については、経済状況によって学生の進学機会を奪うこととなら
ないよう、適正な金額・水準とするとともに、標準額の決定に際しては、各国立大学法
人の意見にも配慮するよう努めること。また、日本学生支援機構等の奨学金の更なる充
実を図るとともに、授業料等減免制度の充実や独自の奨学金の創設等の各国立大学法人
による学生支援の取組みについて、積極的に推奨・支援すること。

国立大学法人評価委員会による中期目標に対する評価の基準を示すとともに、運営
費交付金を算定する際にその評価結果がどのように反映されるかを速やかに明らかにす
ること。

国立大学において、質の高い教育研究成果を得るため、老朽施設の整備など研究環
境の着実な整備を推進すること。

*附帯決議は全員一致で採択


2 レッドパージ:「世間の目」とは違った現実  「だまらん」より
     2005420日<memory

「アエラ」No.1337日号)に<「公立合併大学」全10大学の成否> (P.29-31)とい
う記事が掲載されたが,その時,以下のような説明がつけられた (P.30)

 左寄り教員リストラ

  ある大学教員も,こう話す。
 「そもそも石原知事は,人文学部をはじめ『左寄り』の教員をリストラしたかったの
だと思います。しかし,新大学には『左寄り』の教員は相当数が残ります。実は『レッ
ドパージ』としても不発でした」

コメント(1)[2005/04/20]

 200528日,アエラに記事を書く予定だとライターの石渡嶺司氏から連絡が入り,
取材を受けることになった。私は,首大非就任者の会の会員として,他の2名(「開か
れた大学改革を求める会」の教員)と共に2時間に及ぶ取材に応じた。しかし,その結
果,書かれた原稿には予想もしなかった「レッドパージ」 の文字が踊っていた。上で
引用したのは,最終稿であるが,その前の初稿では「レッドパージ」に関してもっと多
くの紙面がさかれていたのだ。

 そもそも「レッドパージ」とは何か,知らない人のために簡単に説明する。(私も,
その言葉を聞いた時に内容は想像できたものの,最初にパージ(=purge)という言葉から
大型計算機のコマンドを連想してしまった(恥!)。しばし,文献を調べて歴史を再認識
することとなった。)詳しくは Hans Martin Krämer氏(Ruhr大学東アジア研究所
)による論考(Just Who Reversed the Course? The Red Purge in Higher Education
during the Occupation of Japan
)を参照。(http://ssjj.oupjournals.org/cgi/cont
ent/short/jyi011v1


1948
年から1950年にかけて日本の大学の教員の中から共産主義者と思われる者を<抹消
>しようとする政策が行われた。これを「レッドパージ」と呼ぶ。この政策が,本当に
アメリカの占領政策の一端として行われたものなのか,それとも日本の当時の政策担当
者の先導によるものなのか,現実はどのようなものだったのか,に関してはさまざまな
文献があり議論が分かれる。

さて,アエラの記事でなぜそもそも枝葉末節的な「レッドパージ」が取りあげられたの
か?
答えは簡単である。
 (A) 石原慎太郎東京都知事は,右寄りの超保守派である。
 (B) その保守派に反対するのは,「左寄りのアカ」に違いない。
そしてこれが「第三者の視点」(=「世間の目」)だと言うのだ。実際,ライターの石
渡氏もメールの中で次のように説明している。

  まず,先生にはご不快かもしれませんが,第三者の視点から見ますと,都民・国民
の相当数は今回の首都大統合について次のように理解しています。
 
  「石原知事は保守派の政治家。都立大学の左よりの教員が疎ましく,統合を理由に
リストラをした,いわばレッドパージである」
  「統合に反対する教員は,学内でのポストはじめ既得権益を守りたいからにすぎな
い。石原知事は無駄な税金投入を避けるために行政改革を進めている」

  私がそうだ,というわけではないですが,こうした見方が多数ではないでしょうか

 それに後者の見方が多数派だからこそ,統合反対の声が都民に広がらなかったものと
思います。

実際に,kubidai.com への意見の中にも「石原都知事に加担することは,右翼に加担す
ることだ」といった本論からはずれた意見も寄せられたことがある。このような「世間
の目」が存在するとしたら,極めて残念なことだと言わざるをえない。

今回の都立4大学廃校,「首都大学東京」設置にあたる中心的問題は「レッドパージ」
ではなかった。根本的問題は,
 (C) 東京都知事と一部の関係者が考えた構想を,大多数の大学教員の意見を聴かずに
強行した。
 (D) 東京都の行政のためになる研究を中心に大学を変質させた。
ことである。

(C)
は大筋の構想がまとまったところで(およそ20044月頃),東京都側(大学管理本
部)は一転して教員の言うことを聞き始めたが,それは個々の具体的な大学の仕事内容
を把握できていなかったからだ。この後期部分を指して,「大学管理本部は昔とは違い
,教員の言うことを聞き始めた」と喜んだ者もいたが,それは幻想にすぎない。動かし
がたい枠を作った上で,こまかな具体的作業を教員に任せただけなのだ。また,この時
期を指して,「東京都側は,教員と話し合って構想を煮詰めている」と評するのも筋違
いである。

(D)
は,「基礎研究・教育軽視」(=「実学重視」),「予算大幅カット」(=任期制
・年俸制導入,=運営交付金を毎年2.5%ずつ6年間削減,学生数を増やす),「研究軽
視」(=大学院構想軽視,=実践的教育重視)という形で現れた。これらは,すべて大
学の研究教育の基礎体力を奪うものだった。さらに
(E) 
地方独立行政法人となり,独立するかに見える大学だが,設置者権限を持つ知事
から理事長への支配が可能なシステムであるため,大学の指導権を最終的に東京都に奪
われる結果となった。
従って,「首都大学東京」構想に反対することは,(C), (D), (E)に関しての反対であ
り,都知事が右翼だろうと左翼であろうと関係なかったのだ。

それにもかかわらず,「世間の目」を意識し,問題をイデオロギーの対立にすり替えて
しまう人達がいた。「世間の目」が興味本位の刺激を求める無知な存在なら,それが違
うことを堂々と主張すべきだ。それこそ本来のマスコミのあるべき姿だと思うのだが,
この国のマスコミはそうなっていない。低きに流れる国民の興味を後追いして,「もっ
と面白いものがあるよ」,「実態はもっとすごいんだよ」とふれて回る。これではいけ
ない。さらに悪いことに,政治家やお役人の発表を,そのままマスメディアに垂れ流す
ことだ。本当のことを言っているのか否か,裏を取らずして報道するのは罪である。迅
速な報道を追いかけるあまり,「大本営発表」ばかりになってしまっては,何が本当な
のか,まったくわからない状況になってしまう。

コメント(2)[2005/04/20]

私は,社会主義者でも共産主義者でもないことをまず宣言しておく。実際に,ヨーロッ
パの旧社会主義国が社会主義をやっていた時に,たまたま何カ国か訪れる機会があり,
社会主義が理想とは程遠く,まったく機能せずに腐りきっているのを見てきた。

「首大構想」がいかに「大学の自治」や「学問の自由」を破壊するものなのかを訴えよ
うと,都議会文教委員会の委員(=都議会議員)のところを回った教員や学生が数多く
いる。しかし,自民党の委員は,ほとんど面会すらしてくれなかった(一回だけあって
話をした,という教員はいるが)。なぜ彼らは,都立大教員や学生に会ってくれなかっ
たのか? 理由は簡単である。
自民党は与党であり,石原知事の案には賛成するのが原則だからだ。
彼らにとって,「首大構想」などは関心がなかった。だから,大学のことなど,勉強す
らしてくれなかった。

そんな中で,唯一希望の星だったのは,曽根はじめ議員(共産党)であった。彼は,事
細かに事実を収集し,教員や学生の意見を聴き,実際に文教委員会では,みごとな質疑
応答をしてくれた。私を含めた多くの教員や学生達は,感謝の念を抱きながら,彼の質
問に一喜一憂した時期があった。( 曽根議員の質疑の一例)そう,曽根議員が共産党
議員であることは私たちにとって重要ではなかった。関心があったのは,彼が文教委員
としての熱心に勉強してくれ,都立大の教員や学生の声の代弁をしてくれたというその
事実と,彼の人間的誠実さにあった。そして,面会して話すら聴いてくれないのが自民
党議員だった。

2004
12月。法人の定款が文教委員会で議論される段になって,曽根はじめ議員が文教
委員からはずれていることが判明した。同時期に,花輪ともふみ議員(民主党)が,文
教委員に加わったのだが,彼は都立大学B類の卒業生であることが判明した。教員も学
生もそれなりの期待をし,委員会目前に面会に行き,話をしてきた教員や学生もいる。
 12
13日の文教委員会で,花輪ともふみ議員はこのような質問をしたが,なんと最終
的には,「首都大学東京」の定款に賛成する側に回った。なぜか? それは,民主党が
「首都大学東京」に賛成という方針を出していたからである。花輪議員は,党の方針に
は逆らえなかった。花輪議員の質問は,突っ込みが足りず,過去の都立大学礼讃で終わ
っている。正直に言って,落胆したのは私だけではなかった。

後になって,平成16年第4回定例会(1216日)で 小松恭子議員(共産党)の発言が
あったことを知った。この内容は,明晰で全面的に賛成できる内容だと思う。繰り返し
て言うが,私は共産主義には興味がないし,共産党員でもない。しかし,問題の核心を
捉えているのは,小松恭子議員であり,これは事実である。(ちなみに,共産党の新聞
である「赤旗」も,繰り返し「首大構想」の問題点を説明していたが,私は敢えて,「
やさしいFAQ」では取りあげなかった。一般人の誤解を招きたくなかったからだ。)

「世界」という岩波の月刊紙も,左翼の雑誌のように思われているふしがある。その意
味で,近代経済学グループが「首大構想」に反対した理由を述べる文章を発表する段階
で,迷いがあったようだ(「世間の目」からして,あの人達はやっぱり「左寄り」なん
だ,という烙印を押されたくなかったのだ)。

コメント(3)[2005/04/20]

枝葉末節であるが,都立大のいわゆる「左寄り」の方々はどう行動したか,という点に
関しては,初見氏が「世界」5月号(P. 166-167)に次のように説明している。

  「意思確認書」問題からは,今回の都立大学教員敗退の布地が明瞭に見て取れる。
 こうした局面で批判的な姿勢をとるよう期待されているらしい人々の動向を事情に疎
い学外者からしばしば尋ねられるので,少し具体的に示しておくなら,法・経済学部と
も,この露骨な恫喝に正面切って抗う教員は相対的少数派であり,学部内意見は実質的
に分裂,法学部政治学専攻は前だ学部長の路線に追随し,経済学部のいわゆるマルクス
経済学者も早々と都への協力体制に入っていた。
  人文学部では社会学系の教員の大半は沈黙を守るか,都の方針に断固とした異を唱
えることにむしろ否定的な意見を突出させた。さらに,教授会で「意思確認書」の扱い
は個人の判断とせず当面学部全体で保留することを決定していたにもかかわらず,ほと
んど全員が提出する一部専攻すらあった。これが,「意思確認書」非提出で学部意見を
まとめられなくなった人文学部長が,あくまで非提出の堅持を表明していた教員をも含
めて<全員提出>という離れ業に打って出た背景である。

普段から,社会批判を積極的に行っている著名な方々が沈黙したのは,七不思議としか
思えなかった。