「意見広告の会」ニュース277 (2005.5.11)

 

 

「意見広告の会」ニュース277

*ニュースの配布申し込み、投稿は、
  qahoujin@magellan.c.u-tokyo.ac.jp まで、お願い致します。
*参院文教科学委員会の開会日程 野党質問予定者
  5月12日 小林美恵子議員(日本共産党)
   
5月17日 西岡武夫 議員(民主党)
               
鈴木寛  議員(民主党)
               
下田敦子 議員(民主党)

** 目次 **
1 4/22衆院文科委員会議事録の一部  議事録重要点を示します。
         
横光克彦議員質問
2 中田横浜市長への公開質問状
     横浜市立大学 吉岡直人教授
3 新教育の森: 障害児の性 どう教えるか、学校切実
     毎日新聞 200559日 朝刊
4 石播争議 緊急支援の要請
         
原告団長 渡辺鋼氏より
 4付 「差別根絶、まだ入り口」 行事参加声かけ、覚書に 石播訴訟和解
          2004.03.22
 朝日新聞夕刊

***
1 4/22衆院文科委員会議事録の一部
         
議事録重要点を示します。石川文科省高等教育局長の答弁にご注目下さい。

横光委員(社民党)
 その授業料なのでございますが、授業料の標準額が、昨年の十二月二十二日、年末に
、ぎりぎりに引き上げが通知されております。今年度の授業料ですね。ところが、これ
は昨年の八月の概算要求のときには、そうした話はなかったわけですね。いわゆる標準
額の改定というのは、概算要求では盛り込まれていなかった。であるから、当然、法人
化になって二年目になる各大学は、標準額の改定はないという思いで次年度の学校運営
の準備に取りかかっていたと思うんです。そして、それが年末ぎりぎりになって突如、
事前説明のないまま各大学に授業料標準額の改定の通知が来た。これでは、もう次年度
の用意をするには余りにも時間がなさ過ぎて、ほとんどの大学が大混乱に陥ったという
ふうに聞いておるわけでございます。
 これはある意味では、授業料が不明のまま入学試験を受けることになる学生や保護者
にとっては、私は非常に無責任な話になったのではないか、また、大学運営にも大変な
支障を来すことになったのではないかと思うんですが、なぜ、この夏から年末の数カ月
の間に突然標準額を引き上げることになったのか、その理由をちょっとお示しいただき
たいと思うんですが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 お答えを申し上げます。
 昨年の概算要求時点におきましては、授業料の標準額の改定というものについては盛
り込んでおらなかったわけでございます。これまでも授業料の改定におきましては、概
算要求時点ではそのように改定は盛り込んでおりませんで、予算編成の過程におきまし
て、その時々の社会経済情勢等を総合的に勘案して授業料の改定を行ってきたというよ
うな経緯がございます。
 今回の改定につきましても、このような経緯等を踏まえまして、予算編成の過程にお
きまして協議、折衝を通じまして授業料の標準額の改定を行うというようなこととなっ
た次第でございます。
横光委員 今のような御説明ならば、何で大学で混乱が起きるんですか。これまでは
、入学金、授業料交互に、毎年国立大学のときにはそういった対策をとってきたという
ことを各大学は知っている。しかし、法人化になって一年目、そして二年目になろうと
しているときに、突然年末にこのような授業料の変更を通知されて、今あなたがおっし
ゃるようなことであるならば、どこの大学も何ら混乱することはないじゃないですか。
そうでしょう。大変混乱を来したんです。しかも、大学の授業料が上がるか上がらない
か、幾らになるかわからないまま試験を受けた学生さん、いっぱいおるんですよ。これ
までそういうことはあったんですか。
 だから、そういった説明じゃだめでしょう。これまでの国立大学と今の国立法人化大
学はやり方が違うんですから。ですから、今回は、突如としてああいうことになったと
いうことに対して、もうちょっと説明不足だった、いろいろな理由で結局やむを得ずあ
のようなことになったんだということを説明しないと、やはり余りにも不親切ではなか
ろうかという気がしておるのでございます。
 また、この授業料引き上げに当たって、複数の学長さんは、運営交付金が標準額をも
とにして措置されている以上、授業料の据え置きは困難であった、標準額が改定されま
すと、それでも上げないでいこうというところはやはり難しいんだ。それはそうですよ
ね。上げなければその差額を埋めることはできないわけですから。事実、学部、大学院
を通じて授業料の据え置きを決定したのは、大学では佐賀大学のみである。
 つまり、法人化によって授業料の設定の自由度が増した、あるいは増す、そういうふ
うに言われておるんですが、実際のところ、大半の国立大学が授業料を引き上げたこと
から見ても、事実上、大学には選択の余地がなかったということになるんじゃないかと
思いますが、いかがでしょうか。
石川政府参考人 今回の授業料標準額の改定に伴って、運営費交付金等々、その財源
の状況が厳しくなる、それが各国立大学の学長さん方を大いに悩ませたのではないかと
いうお話でございます。
 授業料の標準額の改定について御心配をおかけしているということは、そういった状
況があると思っておりますけれども、運営費交付金等の財源措置につきましては、授業
料の改定額に伴います増収予定見込み額というのが大体八十億円程度と見込まれており
ます。運営費交付金の算定ルールの基本的な考え方に従えば、こういった収入があると
きには運営費交付金をその分減額する、そういったことがあり得るわけでございますけ
れども、今回の場合は、そういった減額を行っておりませんで、先ほど申し上げました
増収の予定見込み額に相当する額を運営費交付金の中で別途措置をいたしておるところ
でございます。
横光委員 それでもやはり、こうして標準額が改定された以上、ほとんどの大学が、
これに合わせて今年度の授業料を値上げしているわけでございます。一万五千円。全国
の国立大八十九校のうち、八十一校が値上げをしている。あるいは、値上げ幅を抑えた
り据え置く大学も八校あるわけですが、いわゆる全国一律だった国立大の授業料が、こ
の四月以降、初めて横並びという形が崩れていったわけでございます。
 格差がここで生じ始めたのではないかということになるわけでございますが、まず、
佐賀大学は値上げをしなかった。愛媛大学は九千六百円、三分の二だけ値上げをする。
なぜ、大多数の大学が一万五千円という標準額どおりの値上げを行うのか。
 要するに、当然のごとく、財政上の問題ということになろうかと思うんですが、であ
るならば、やはり財務諸表の公開など、具体的に説明していかなければならないのでは
なかろうか。これだけ学校もいろいろな形で効率化を図り、努力をしているけれども、
こういった状況でこれだけ苦しいんだ、そこで何とか御協力をという、せめてそういっ
た形をこれからは、それぞれの大学の法人化の努力というものが受験者、保護者、国民
に見えるような、そういった形がこれから始まるのではなかろうかという気がするんで
すが、その点はいかがでしょうか。
石川政府参考人 今回の授業料の標準額の改定につきましては、私どもといたしまし
ても、予算の内容が決まりましてから、年明けには例えば各ブロックごとにそれぞれの
国立大学に集まっていただきまして、そういった場で今回の内容ですとか趣旨を御説明
、お伝えしておる、そういったことをやってきております。また、それぞれの大学にお
きましても、通知を御父兄に発出する、あるいは校内の掲示板で掲示をする、あるいは
ホームページでお知らせをする、さまざまな手段によりまして、関係者に対して、そう
いった内容、それから授業料改定の方向について御説明をし、御案内をしているという
ことでございます。
横光委員 しかし、私は、まだまだそういった意味ではもう少し徹底を図って、これ
からやはり経済が、どちらかといえば、右肩上がりの時代が終わったにもかかわらず授
業料だけは年々右肩上がり、こういった状況であるだけに、説明というものが非常に重
要であるということを訴えたいと思っております。
 この中で、愛媛大が、ほとんどの大学が授業料を一万五千円上げている中で九千六百
円だけ値上げする。これは、学長さんの話では、学生の負担が大き過ぎる、現在でも授
業料は高いんだ、国の値上げ方針に抗議の意味を込めたということまで言っておるんで
すね。法人化になった以上、それぞれの学長さんの認識はこれから変わってくるかと思
いますが、こういった学長さんもいらっしゃる。
 ですから、その足りない分を自主的につくらなければならない。いわゆる効率化とか
、あるいはいろいろな形で寄附金を集めたりやらなければならない。約四千四百万円の
財源不足が生じるというわけです。この愛媛大では中退や休学を防ぐ取り組みを行うと
いうことでございますが、結局、財源不足はもうしようがないんだ、それぞれの大学で
知恵を絞って不足した分は補え、こういった形、いわゆる学校経営に別な形で負担をか
けていくことになるわけです。
 学校の方は学生に負担をかけないように努力する、ところが学校はそのために大変な
負担が生じる、こういった経営の姿が今回この愛媛大の場合は浮き彫りになったんです
が、この点はやはり文科省としては、やむを得ないんだ、それぞれの学校の自助努力で
やってもらうしかないんだというお考えなんでしょうか。
石川政府参考人 今委員からお話のございましたように、愛媛大学と一部の大学では
、標準額どおりの改定をしないというような形をとっているところもあるわけでござい
ます。また、その理由といたしまして、そういった財源不足にならないようなことで、
例えば愛媛大学の場合には、増加傾向にある休学者とか退学者を減らすというような努
力をしようというところもあると聞いております。
 ただ、財源論といいますか、運営費交付金のことに関しましては、先ほども申し上げ
ましたけれども、全体としては約八十億円でございますけれども、これが算定ルールで
あれば減るということがあり得るところを、別途きちっと措置をしておるわけでござい
まして、運営費交付金全体としては前年度の水準を確保できておるものと私どもは考え
ております。
 その上で、それぞれの授業料標準額をどう改定するか、あるいはどういうふうに扱っ
ていくかということにつきましては、各国立大学法人におきまして、学部や大学院の構
成ですとか、あるいは外部資金等の自己収入の状況、経営効率化への対応状況、あるい
は教育研究の充実方策なども考慮しながら判断をするということであろうかと思ってお
りまして、各法人の実情が異なるために、一概にその対応といったようなものを考える
こともなかなか難しいのではないか、こんなふうに思っております。


2 中田横浜市長への公開質問状
     横浜市立大学 吉岡直人教授

  公開質問状
  横浜市長 中田 宏 様

横浜市立大学に勤務する吉岡直人と申します。

市長が本年度の本学入学式で述べられた「市長として、市大の中味に口を出したことは
一度たりともありません。」(市大ホームページより引用、以下同様)という発言に疑
問が沸いてきましたので質問させていただきます。

この発言に対しては、すでに本学の旧数理科学科の2教授より、数理科学科の存続につ
いて、市長が口を出したのではないか、という疑問・抗議が寄せられていることは記憶
に新しいところです。2教授の言っておられることは、まことにその通りであると私も
感じておりますが、ふと立ち止まって考えてみますと、それ以前の問題として以下のこ
とがあるのではないか、と疑問が沸いてきました。

すなわち平成14年に、市長は「横浜市立大学あり方懇談会」なるものを立ち上げられま
した。あれは、何のために作られたのでしょうか?「口を出す」ための材料を取り揃え
るためだったのではないかと、つい、勘ぐってしまうのです。そうではなく、意見を聞
き置くためだけであった、と市長がおっしゃるのであれば、ここでは一先ずそうしてお
きましょう。

ではその後に、市立大学内部の組織としてではなく、市の組織として、前田副市長を本
部長として設置された「横浜市大学改革推進本部」は何のためだったのでしょうか。市
長の号令でそのような組織を作ること自体「口を出す」ことに他ならないように私には
思えるのですが間違っているでしょうか。

以下、具体的にその理由を述べます。

平成1512月1日に、貴職は「市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方」と題
する文書を公表されました。これには「『横浜市立大学の新たな大学像について』を基
本的に尊重して、改革を推進していく」と書かれており、それぞれの項目ごとに「(設
置者の考え方)」が示されています。

たとえば、「第3章 教育研究体制の改革」の項目では、「プラクティカルなリベラル
アーツ教育(実践的な教養教育)を総合的に行うことを目的として3学部を統合し国際
総合科学部(仮称)とすることについては、高く評価する。」とした上で、「国際総合
科学部(仮称)を構成するコースについては、編成数や内容を大学の案を参考にしなが
ら設置者として更に検討する。」と、「中身に口を出す」ことを明言しておられるので
はありませんか。また「口出し」は細かい点にまで及び、「教職課程について、大学の
案では『原則として廃止する。』としているが、取得できる教員免許の教科を精選し、
存続させる。」と、その内容を覆す決定もされています。これらはほんの一例にすぎず
、このほかにも類似の表現が随所に見られます。

さらに平成151217日には、貴職が作られた上記「横浜市大学改革推進本部」は、「
コース案等検討プロジェクト部会設置要綱(要旨)」なる文書を全教員に配布し、その
中で「12月1日に公表した『市立大学改革案に対する設置者の基本的な考え方』に基
づき、設置者として、コースの設定等の検討を行うため、コース案等検討プロジェクト
部会を設置します。」(下線筆者)と、ここでもはっきりと「中身に口を出す」ことを
公言されています。また、「2 検討内容及び検討体制」の項では、「設置者としての
案を作成します。」、「大学改革推進本部等により横浜市としての意思決定を行います
。」とも明言しておられます。

「市大のことは市大でやる。(中略)大学自身が考えるべきである」(入学式挨拶より
)という市長の言葉とは裏腹に、貴職がしてこられたことは、細部に至るまで「中身に
口を出す」ということであったのではないでしょうか。

コース案等検討プロジェクト部会のメンバーの何人かが本学教員であったことは言い訳
にはなりません。彼らは、貴職が作られた「横浜市大学改革推進本部」の「プロジェク
ト部会」のメンバーに過ぎないのですから。

これらのことから、貴職の本学入学式における「市長として、市大の中味に口を出した
ことは一度たりともありません。」という発言は、学生・市民を欺くものであるとの疑
念が胸を去りません。このことについて、5月末日までに文書でお答えいただきたく、
お願い申しあげます。

早々

平成17年5月9日

横浜市立大学・研究院・教授  
吉岡 直人


3 新教育の森: 障害児の性 どう教えるか、学校切実
     毎日新聞 200559日 東京朝刊
 入浴時に職員が指導/「性」語り合う会開催/人間関係相談に乗り

 思春期を迎えた障害児に、二次成長する自分の体についてどう理解させるのか、悩ん
でいる親や教師は多い。これまでタブー視される傾向が強かったが、性をめぐる被害も
多く、社会的自立を促すためにも、障害児にとって「性」は切実な問題だ。どう教える
か、学校や施設で模索が続く。【野倉恵】

 「廊下などでズボンに手を入れ、触り続ける男児もいる。それが自慰行為なら、『こ
こはそういう場所じゃないよ』と手を引き、自室に連れて行く」。4月下旬の午後。学
校帰りの子供たちのにぎやかな声が響く「白根学園児童寮」(横浜市旭区)。知的障害
のある男女30人が暮らす。親から虐待を受けていた子もいる。体の発達や異性への関
心は健常児と変わらない。職員がこまやかに目を配り、男性職員が入浴時、男の子に性
器の洗い方を教えることもある。

 「1度言うだけでは難しい。その都度、根気よく伝えるしかない。男の子には父親が
家庭で……とも言われるが、親に頼れない子もいる。家族では恥ずかしさから、うまく
いかない場合もある」と中里誠施設長は言う。

 併設の「通勤寮」では、養護学校高等部の卒業生らが働きながら暮らし、自立をめざ
している。利用者が職員と年に数回、性を語り合う。男女に分かれて語ったり、個別に
話し合うこともある。「戸惑い、悩んでいるのが自分だけではないことを知り、落ち着
く人が多い」。具体的なイメージを持てるよう、結婚した障害者に話をしてもらうこと
もある。

 興味本位でテレクラを利用し、初対面の男性宅に泊まった女性がいた。「おじさんは
やさしかった」と言う女性に、職員は危うさを説いたりもしている。
     
 都内の女性教諭は、初潮や精通、声変わりなどに戸惑う知的障害児を見てきた。「違
和感があるからか、教室の中で体毛をハサミで切っていた中学の男子生徒がいた。生理
用品を体から外しては、トイレの床に捨てる女児もいた」

 教室で「セックス」と繰り返し叫んだり、好意を持つ女児に性器を見せる高校生の男
子がいた。母親の暴力から保護された経験があった。「それは人前ですること?」と根
気よくたしなめた。リラックスを体験する授業を組み、「足湯」で水虫だらけの男児の
足を丁寧に洗うと、表情が和らいだ。自分の名前の漢字の意味を問いかけるなど、男児
が言葉を発することができる場も作った。次第に男児は落ち着くようになり、わいせつ
な言葉を言わなくなった。

 性をめぐるトラブルの背景には、生活体験の満たされなさや人間関係のつまずきがあ
る場合が多い。

 障害別に避妊など説明/歌や人形使った試みも

 「髪の上の方を1人で洗い、流せた」(高校3年6月)。「つめを1人で切れるよう
になった」(高校2年5月)−−。東京都日野市の都立七生養護学校に長男が通ってい
た女性は、性教育の授業記録の紙を大切に保存している。ダウン症の長男は授業で、髪
の洗い方やはなのかみ方を身につけた。それまでは、髪を触られるのを嫌い、散髪や洗
髪も難しかった。

 同校では、都教委が03年9月、性教育や学級編成、服務実態が不適切だったなどの
理由で、40人以上の教員を厳重注意処分とした。このうち10人以上が、授業で「ペ
ニス」などの言葉の入った「からだうた」を歌わせたり、性器のついた人形を教材に使
っていたことなどが「不適切な性教育」と指摘された。そうした人形や、ストッキング
を使い射精の仕組みを教える教材なども提出させた。これに対し、教員や一部保護者ら
が東京弁護士会に人権救済を申し立てた。同弁護士会は今年1月、「教師の教育の自由
を侵害し、処分は重大な違法がある」などとして、処分撤回を求め、都教委に警告した


 同校の性教育は、生徒の約半数が暮らす併設の施設で、園生同士の性的いたずらが発
覚したのを機に97年ごろから始まった。小学部で年間約2〜8時間、中学部約5〜1
0時間、高等部約10時間。就労予定の生徒などを主な対象に、避妊や性行為について
も教えた。授業は障害の程度ごとにグループ分けされた。重度グループだった女性の長
男は、体を清潔にしたり、こわばりをほぐす内容が多かった。授業の前に家庭に内容を
通知し、事後には授業中の子供の様子を記したプリントも配られた。

 女性は「体をどう大事に清潔にするか、親では甘えがちでも、仲間と共に学校の先生
に学べば身につきやすい。息子は赤ちゃん人形を授業で抱いた後、小さい子を見る目も
やさしくなった。体の部位なども『あそこ』では分からず、教材は必要だったと思う」
と話す。同校の元教諭は「知的障害児の多くは抽象的なことは分かりづらく、歌や教材
は具体的なイメージを持つため不可欠だった。体の大切さや命のつながりを学んでもら
おうとした」と言う。

 基礎資料が必要と、ハンドブック出版−−家族の会

 知的障害者や家族で作る「全日本手をつなぐ育成会」(東京都港区)は今年2月、男
女の体の違いや妊娠、出産の仕組みなどをイラスト入りで解説したハンドブック=写真
=を出した。

 松友了常務理事は「知的障害者が自分の性の変化を受け入れたり、性衝動を自分でコ
ントロールするため、どんな工夫や支援ができるかは、科学的に議論すべきだ。特定の
考えで一切だめとか、よいとすべきものでない。分かりやすい基礎資料は必要」と話す


 冒頭の児童寮の中里さんも監修者の一人だ。「情報が入りにくく、仲間との共有体験
も乏しくなりがちで、コンビニの雑誌やテレビから偏った刺激だけ入ることもある。だ
からこそきちんと伝える必要がある。地道に、どう手助けできるか、考え続けたい」

[
教育取材班]kyouiku@mbx.mainichi.co.jp


4 石播争議 緊急支援の要請
         
原告団長 渡辺鋼氏より

支援団体 支援者 関係者 各位様

石播争議の新しい段階にあたりみなさまにお願い申しあげます。

昨年3月の画期的な勝利和解から、早いもので1年以上が過ぎました。
みなさまからいただいたご支援の数々に、あらためてお礼を申しあげます。

その後、原告団は活動を継続し、和解で勝ち取った和解条項と和解覚書にもとづき、全
事業所の差別を根絶すべく、昨年10月に「人権回復を求める石播連絡会」を結成し、
現在では全6事業所から161名が名乗りを上げております。

現状と私たちの主張につきましてはこのたび作成いたします国民向けのビラ(B4判両
面)のPDFを添付いたしますのでご覧ください。

会社はこれまで原告団と5回本社交渉に応じているものの、ごまかしたり是正の規模を
できるだけ小さくする小細工を弄しておりますが、株主総会を前にした次回6月8日の
交渉で、事態を大きく進展させたいと考えております。

つきましては、大変ぶしつけではございますが、以下4点をお願い申しあげますので、
ご検討くださいますようお願いいたします。

1.石播社長への要請ファックスを、5月11日〜13日に集中してください。

2.全国民向けのビラ配布にご協力ください。

3.このメールを協力していただけそうな団体個人に転送してください。

4.できれば返信用紙に記入のうえご返事をください。

以下、それぞれにつき説明させていただきます。

1. 石播社長への要請ファックス

用紙、書式などはご自由ですが参考までに雛形を添付いたします。差し支えない範囲で
、発信者のお名前をご記入ください。また決まり文句では物足りない方のために、追記
または新規作成の参考に、以下にいくつかの文例を用意しました。
なお、FAX No.を変更される恐れがありますので、5月11日〜5月13日の間に集
中して取組みたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

抗議先

石川島播磨重工業株式会社 代表取締役社長 伊藤源嗣(もとつぐ)
FAX No. 03−3244−5049

文例
 特定従業員への差別を見せ しめに職場支配するなど時代遅れです。即やめなさい

 差別によって、ものが言えない職場にすることは、企業不祥事を生む温床を作って
いるのと同じです。すぐにやめるべきです。
 伊藤社長、あなたは、差別されている従業員の痛みを、自分や自分の家族に置き換
えて考えたことがありますか。それがなければ社長として失格です。人権侵害をすぐに
やめなさい。
 思想・信条で従業員を差別しておいて、コンプライアンスの重要性をいくら説いて
も、従業員には馬耳東風なのでは? 自ら憲法を守り、人権を尊重すべきです。
 日本を代表する大企業で、憲法違反の思想差別が行われているとは信じられません
。すぐに中止して是正の求めに応じるべきです。
 貴社は、思想差別裁判で和解して一年が過ぎても、なお差別是正が行われていない
と聞きます。差別是正を訴えている社員の声を聞いて、一日も早く差別撤廃を公表し、
社員の皆さんが安心して働ける会社にするべきだと思います。

2. 全国民向けのビラ配布にご協力を

添付いたしましたビラを数十万枚作成し全国の地域・職場・駅頭などで配布したいと考
えます。ご協力いただける場合は返信用紙に枚数と送付宛先などを記入のうえお知らせ
ください。折り返しお送りいたします。送料は当方負担としますが、ご負担いただけれ
ば大変助かりますので、その旨お書きください。

3. このメールを転送してください

輪を広げていただけると大変助かります。

4. 返信用紙に記入のうえ返送してください

返信用紙を添付しておりますのでよろしくお願いいたします。

原告団長 渡辺鋼
******************
 
 人権回復を求める石川島播磨原告団 
     188-0001
西東京市谷戸町1-3-14
  Tel 0424-23-1828 Fax 0424-23-1816
  
Email isihari-jinken@muf.biglobe.ne.jp
******************


4付 「差別根絶、まだ入り口」 行事参加声かけ、覚書に 石播訴訟和解
     2004.03.22 東京夕刊 23頁 1社 (全994字) 

 石川島播磨重工業(東京都千代田区)が、共産党支持などを理由に従業員を差別して
いたことを認め、和解に応じた。「厳秘」とされたブラックリストに載せられ、長く会
社と闘ってきた原告らは「画期的な勝利」と喜んだ。(1面参照)


 22日午前11時半前、東京地裁の書記官室で和解が成立すると、原告や支持者約3
0人から拍手がわいた。原告の一人で、東京の田無工場に35年間勤めて昨年暮れに退
職した渡辺鋼(こう)さん(60)は「長く続いた差別の根絶に向けて、この和解は入
り口に過ぎない。原告に加わっていないが差別を受けている従業員はたくさんおり、引
き続き会社に是正を求めていきたい」と話した。

 「ZC計画管理名簿」のZCは、「ゼロ・コミュニスト」の頭文字だ。名簿の存在を
うわさで知っていた原告たちも、01年に初めて手にしたときは驚いた。石川島播磨重
工業の経営者側が、共産党員とその支持者を社内から一掃しようとしていたことは明ら
かだった。

 名簿では、労働組合の活動家らがA〜Dにランク分けされていた。Aは「党員」、B
は「活動歴あり」と備考欄にある。

 「妻が共産党市議をしている」といった家族状況の記述もあった。「がん」「腎炎」
などの病歴や地域でのサークル活動など、プライバシーにわたる記載もあり、会社側が
身辺調査をしたことがうかがえる。リストは毎年更新されており、共産党員や支持者以
外の従業員も含まれていた。

 会社側による「反共政策」は、組合活動が激しくなった60年代から始まっていた。
実際に人事担当者が「ZC」名簿をつくるようになったのは、70年代に入ってから。
01年の社内の会議で、人事担当幹部が「今もなお共産党が企業にとって危険ファクタ
ーであることに変わりない」と発言したことを記した文書もある。

 このリストに載った原告らは、職場の歓送迎会や旅行会、納涼祭などの親睦(しんぼ
く)行事にも呼ばれなかった。冠婚葬祭からも締め出され、社内で「村八分」にされた


 差別への反省から、この日の和解では「会社行事、職場行事には、全員の声かけを徹
底する」という覚書も交わされた。

 同社では、今回和解した8人とは別の従業員が86年のある日突然、150人の従業
員に取り囲まれ、「会社を辞めろ」「退職届を書け」と迫られたため、退職強要の中止
などを求める裁判を起こし、94年に会社に「遺憾の意」を表明させて和解した。この
従業員も共産党支持者だった。