ネオコン革命 米国の利益を追求する新帝国主義 (2005.5.13)

 

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ネオコン革命

(2005.5.13)

米国の利益を追求する新帝国主義

 

 国連憲章に違反する先制予防攻撃のイラク戦争を推進した右翼タカ派、ブッシュ政権の中枢ともいわれるネオコン(新保守主義者)は、一挙に世界に名を轟かせた。ブッシュ大統領はこのほどネオコンの中核、ウォルフォウィッツ国防副長官を世界銀行総裁に、ボルトン国務次官を国連大使という要職に指名した。この人事は、世界に「ネオコン革命」を広げようとする第2期ブッシュ政権の布石と受け止めるべきだろう。

 ブッシュ大統領は昨年大統領再選を果たしたことで、イラク戦争は米国民に信任されたと公言している。大量破壊兵器を持つフセイン政権を放置することは米国の安全保障に関わるというネオコンの詭弁に乗って、大統領はイラク侵攻に踏み切った。フセイン政権打倒後、大量破壊兵器はなかったことが判明したにもかかわらず再選されたことで、大統領は第2期政権でネオコン路線を一層進めることに自信を持ったようだ。

 英紙オブザーバーは第2期ブッシュ政権の世界政策を「ネオコン革命」と呼んだが、第1期政権でネオコンと一線を画したパウエル前国務長官が去り、大統領のお気に入りのライス氏が後任に指名されたことで、このことがはっきりした。政権内でネオコンを支えてきたチェイニー副大統領やラムズフェルド国防長官の影響力は一段と増した。 大統領は外交・安保政策でチェイニー氏を最も頼りにしているそうだが、チェイニー夫人はネオコン機関紙<Eイークリー・スタンダードの常連寄稿家でもある。

 ラムズフェルド長官はイラク戦争泥沼化の責任を問われる立場にありながら、大量破壊兵器に関する情報処理で威信を落としたCIA(中央情報局)から秘密工作の権限をペンタゴン(国防総省)に移すなど、イラク戦争を通じてペンタゴンの権力拡張を実現した。ネオコンの狙う次の目標はイランといわれているが、国防長官の指示によりイラン核施設攻撃に備えて米軍秘密偵察部隊がイランに潜入しているという情報も明るみに出た。

 「ネオコン革命」を一言で言えば、冷戦終結後唯一の超大国となった米国が自らの好みに合わせて世界を造り変えるということだ。いうなれば、世界最強の軍事力・経済力をフルに活用して米国の利益を追求するという新帝国主義である。米国の利益に合わない国際条約は守らなくても構わないという横暴な振る舞いもそうだ。京都議定書や国際刑事裁判所条約から離反し、あるいは戦時捕虜に関するジュネーブ協約も無視するという行いも、新帝国主義からすれば驚くには当たらない。

 「イラク戦争の設計者」といわれるウォルフォウィッツ氏を世銀総裁に登用したのは論功行賞であると同時に、途上国の経済発展を支援し世界の貧困問題解決に取り組む世界銀行という場を通じて米国の利益追求を貫くという戦略を反映するものだ。一方、ライス国務長官が「圧制国家」と名指しした北朝鮮の金正日体制を最も強く批判したことで知られるボルトン国務次官を国連大使に指名したことは6カ国協議の行き詰まりがさらに深刻化することを予測させる。「ネオコン革命」で世界は一層暗くなりそうだ。(伊藤力司)