虚偽は虚偽を生む――抗議文への横浜市の回答への反論―― 『カメリア通信』第35号 (2005.5.16)

 

 

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横浜市立大学の未来を考える

『カメリア通信』第35

  2005516(不定期刊メールマガジン)

Camellia News No. 35, by the Committee for Concerned YCU Scholars

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虚偽は虚偽を生む――抗議文への横浜市の回答への反論――

平成17年5月15日

横浜市立大学研究院

教授  一楽重雄

教授  市田良輔

先日、市長に宛てた抗議文に対して、横浜市からの回答が届いた。ただし、もしかすると、横浜市からの回答ではなく「横浜市都市経営局大学調整課長 中山雅裕」からの回答かも知れない。

なにしろ、横浜市は普通の組織とは違って、市長が副市長など部下のしたことの責任は取らないらしい。横浜市として横浜市の役人がしたことも、市長は知らないことであってよいらしい。となれば、この回答も横浜市の回答かどうか怪しい、いざとなれば、中山課長個人の回答であって横浜市の回答ではないと言い出さないとも限らない。

この回答では、次のように言っている。

「市長の市大大学改革に係わる指示といたしましては、あくまで改革の方向性や進め方に関する基本的な考え方を示したものであり、大学改革の詳細な内容について指示をした経緯はありません。

誰が大学の詳細な内容を市長個人が指示すると考えるだろうか。

「市長として、市大の中味に口を出したことは一度たりともありません。」

と言う意味は何か。

これは「市大の中味は大学が考えたのであって、横浜市が中味にまで口を出していない」ということを意味しているのである。

中田市長個人が市大改革の詳細について指示しているかどうかが問題なのではない。今回の大学改革において、大学の中味を

「大学が決めたのか、それとも、市が決めたのか」

が問題なのである。「中田市長が直接指示をしたか、副市長が指示をしたのか、あるいは、担当部長が指示をしたのか」が問題なのではない。

組織の長である市長として口を出していないということは、当然、副市長以下の部下も口を出していないことを意味する。

特に入学志望者の半減などから、今回の改革の内容を誰が決めたのかが、これから問題になる。それを見越して、中田市長は「自分に責任はない」と言いだしたのではないか。あるいは、市長が大学の中味にまで口を出すことは「大学の自治」に反し違法であることから、「口を出していない」と強弁しているのではないか。

 中山課長は、次のように続ける。

 「ご指摘の市立大学国際総合科学部におけるコース設定につきましては、横浜市大学改革推進本部事務局(事務局長:大学改革推進部長)に大学の教員を中心に構成した「コース案等検討プロジェクト部会」を設置して検討し、「国際総合科学部(仮称)コース・カリキュラム案等報告書」(以後、報告書とします。)としてまとめ、横浜市大学改革推進本部(本部長:副市長)において承認・決定しました。」

 つまり、副市長は「口を出すどころか、その責任において決定した」のである。だけれども、「副市長は市長とは別人であるから、市長が口を出したことにはならない」ということなのだ。市長が、副市長のしたことに責任を取らないなどということが、どこの世界で通用するのだろうか。

 そして、最後は虚偽である。

虚偽の発言を弁護するためには、やはり、虚偽が必要なのだ。

「また、ご指摘のありました日本数学会理事長あての文書における表現につきましては、先に述べましたようにあくまでも大学を中心に組織的に検討した結果を踏まえて、最終的な決定権者としての判断をこのように表したものでございます。」

「大学を中心に組織的に検討した」というのは、まったくの虚偽である。大学の教員は個人として協力したかも知れないが、大学という組織は検討にまったく加わっていない。大学ではなく横浜市が検討したのであるのは、直前の文章に述べられているとおりである。それを、あたかも大学が検討して決めたかのごとく思わせるために、わざわざ、虚偽を書きこんでいるのである。

これまでも、実質的に市民を欺く「大学の教員を中心に検討した」という表現を横浜市は何度もしてきたが、これは言葉としては虚偽とは言い切れない面があった。大学ではなく、一部の教員が個人として検討に協力したことは事実であるからである。しかし、このように表現すれば、事情に詳しくない多くの人々は、当然「大学が検討した」のだと思ってしまう。

横浜市大学改革推進本部というのは、横浜市の組織であって大学の組織ではない。大学教員の協力を得て横浜市が決定したことは、決して、大学が決定したことではなく、横浜市が決定したことである。

 中田市長自ら主張するように、民主主義の基本は情報公開であって、市民を欺き虚偽の情報を回答する行政は決して民主主義と相容れるものではない。

 改めて、市長祝辞に対して抗議をするとともに、その訂正を求めるものである。

 

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編集発行人: 矢吹晋(元教員)   連絡先: yabuki@ca2.so-net.ne.jp

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