5月16日の小泉首相の「靖国参拝」に関する開き直り的・挑発的発言は反中国・反韓国宣言に等しい暴挙である (2005.5.18)

 

森田実の時代を斬る

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5月16日の小泉首相の「靖国参拝」に関する開き直り的・挑発的発言は反中国・反韓国宣言に等しい暴挙である

 

「争気ある者とは与(とも)に弁ずる勿れ」(荀子)

[やたらに人と争う性質の者とはことの是非を語り合うことをしてはならない、との意]

 

 

 小泉首相は争いを好み紛争を起こす性質をもった「争気ある者」である。平和を好まず、日本国民を対立と紛争に巻き込むおそれのあるきわめて危険な政治家である。

小泉首相は、この半年間、靖国神社参拝問題について「適切に対処する」との発言を繰り返してきた。記者団から「靖国参拝」について質問されたときに「言わない」とまで言い、事実上沈黙を通してきた。

 ところが、5月16日、小泉首相は国会において沈黙を破り、「他の国が干渉すべきことではない」「いつ行くかは適切に判断する」との開き直り的・挑発的発言をした。「適切に対処する」とは、「参拝するかしないか」についてではなく、「参拝する時期」のことだったのである。これは中国、韓国に対する事実上の「宣戦布告」である。中国と韓国は、この小泉発言を「政治的挑発」と受け取るだろう。

 小泉首相はこれくらいのことはわかって発言しているはずだ。小泉首相はあえて中国、韓国との対立・紛争の道に踏み込んだと見なければなるまい。これはブッシュ政権のアジア分断戦略に従ったものであろう。

 ブッシュ政権は、日本とアジアとくに日本と中国とを分断することにより、アメリカ帝国主義のアジアの分割・支配を実現しようと企んでいる。このブッシュ戦略を小泉首相は手先として実行し始めたと見るべきであろう。

 中国の反応を、5月17日付け東京新聞朝刊(北京・加藤直人記者)が伝えている。見出しは「『アジアの反対にかかわらず表明』/新華社が報道」。以下、同記事を紹介する。

 《小泉首相が衆院予算委員会で靖国神社参拝を継続する意向を表明したことについて、中国政府は16日夕現在、公式反応を示していないが、国営新華社通信は英文ニュースで「小泉首相はアジア諸国の反対にもかかわらず、世界大戦のA級戦犯が合祀(ごうし)されている悪名高い靖国神社を今年も参拝すると表明した」と報じた。

 新華社電は、首相の発言にコメントは加えていないが、予算委で野党議員が「首相の靖国参拝は日本の外交関係のリスクを高めるものだと批判した」と伝えた。

 中国指導部は小泉首相の突然の“参拝表明”に困惑するとともに、今後の対応を早急に検討しているとみられる。》

 この記事は中国政府の「困惑」に触れている。これは鋭い指摘である。

 胡錦濤政権は、江沢民前政権時代の対日強硬政策を転換し、「日中友好」政策に踏み切った。ところが、争いの好きな小泉首相に肘鉄(ひじてつ)を食らった。小泉首相は、ブッシュ政権のアジア戦略に従い、日中対立を激化させようとしているように見える。中国政府は、小泉首相の挑発に耐えなければ「日中友好」路線が瓦解することをよく知っている。だから、当分の間は我慢するだろう。

 だが、問題は中国の反政府学生運動だ。反日運動をテコにして反政府運動に立ち上がるのに、「小泉首相の挑発発言」という絶好の口実を手に入れた。中国は混乱するおそれがある。これはブッシュ・小泉の狙いどおりかもしれない。

 ここで問題なのは、日本国民が平和を望むか、それとも小泉首相の対立・紛争路線に乗るか、である。日本国民がブッシュ・小泉の戦争政策を支持し、対立・紛争の道をとるなら、日本に未来はないと思う。われわれ日本国民は、どんなことがあっても平和を追求する心を捨ててはならない。小泉首相の中国と韓国を挑発するような暴挙を許してはならない。