後輩・武者野六段が激怒! 「米長邦雄を盗作で訴える」 スクープ プレイステーションゲームソフトで大揺れ 「週刊現代」2005年5月21日号 (2005.5.21)

 

 

「私はもう後には引けません。米長邦雄さんを訴える決意をしました。私はこれまでも、米長さんから長年にわたりイジメ、嫌がらせを受けてきました。しかし、我慢も限界です。523日には、日本将棋連盟の会長が改選されます。米長さんは、会長の座を狙っています。もし、米長さんが会長になれば、私の立場など、簡単に吹き飛ばされてしまうでしょう。それはそれで、仕方ありません。でも、黙って泣き寝入りするより、せめて一矢を報いたいのです」

 悲壮な決意を語るのは、武者野勝巳氏(51歳)だ。武者野氏は、日本将棋連盟の棋士六段。20代の若さで、日本将棋連盟の理事に選ばれる一方、ドングリ目に口ひげという風貌から、「マリオ武者野」の愛称で将棋ファンから親しまれている。一方の米長氏(61歳)は、現在、日本将棋連盟専務理事で九段、永世棋聖。東京都教育委員会委員も勤めている。

 武者野氏は、こう語る。

「私はコンピュータが得意だったので、将棋ゲームソフトの作成・販売を手がけていました。そのゲームソフトは「将棋セミナー21」(ウィンドウズ版・00年販売)という名称で、そのなかで米長さんのキャラクターを使用する契約を結んだのです。

 しかし、翌年、米長さんから、「契約を止めたい。売れ残ったソフトもすべて破棄してほしい」と連絡があったのです。確かに、そのソフトは私の営業力の不足もあって満足できる売れ行きではありませんでした。しかし、将棋の入門・上達ソフトですから息が長い商品です。印税を支払う契約ですから米長さんが損する話ではありません。

 なぜそこまで言うのか、理由を聞いたら、米長さんは「こういう失敗作が世の中に出ていると恥ずかしいから」と言うのです。しかし、購入したユーザーの評判はよかったですし、第一、ソフトを破棄するにはコストがかかります。米長さんにそう伝えると、自分の会社(米長企画)で処分すると言うので、泣く泣く同意しました」

 それから1年もたたない翌年の3月、米長企画は「みんなの将棋」(プレイステーション版)というゲームソフトを販売した。その内容を見て、武者野氏は驚いた。

 「何とソフトの内容が私が作った「将棋セミナー21」とうり二つ、まったく同じゲームだったのです。価格は11800円(全3巻)。私のソフトは13800円(同じく全3巻)でしたが、向こうは開発費が一切かかっていませんから、安く売ることができるのでしょう。

 私はすぐに米長さんに抗議しました。しかし、米長さんは「歩は前に進む、飛車の動きはこうだよ、という説明は誰が書いても変わらない。だから、著作権侵害には当たらない」と言うのです。まるで子供のような言い分です。米長さんのソフトは、メニューの内容から、問題の出題形式まで、完全なパクリ。私が反論すると、米長さんは「訴訟でもなんでもやってください」と言い放ったのです。

私ははらわたが煮えくり返るほど腹が立ちましたが、棋士が棋士を訴えることになれば、将棋界全体のイメージが悪くなるのではないかと考え、そのときは、ぐっと我慢したのです」

 武者野氏は将棋関連のインターネットビジネスを続けているが、それも米長氏による妨害・嫌がらせが続いているという。武者野氏はゴールデンウィーク明け早々に、訴状を裁判所に提出する。

 「武者野氏のソフトと米長氏のソフトがほとんど同じ内容というのは一目瞭然です。著作権の侵害は明らかです」(武者野氏の訴訟代理人・弁護士)

 本誌は、米長氏の言い分を聞くため、武者野氏の主張を整理して書面で質問状を送付したが、米長氏側からは何の回答も無かった。

 前代未聞のことだが,今後,裁判所でプロ棋士が対決することになる。

(取材協力・国際東京プレス)