「『首都大学東京』を少しでもよい大学にしていくために努力する」という方向性に本当に展望があるのか? だまらん (2005.5.22)

 

都立大の危機 --- やさしいFAQ http://tmu.pocus.jp/ 

だまらん http://pocus.jp/damaran.html 

http://pocus.jp/05-2005/052205-sdt-tembou.html 

 

 

[2005/05/22]「『首都大学東京』を少しでもよい大学にしていくために努力する」という方向性に本当に展望があるのか?

2005522日<prospect

「『首都大学東京』を少しでもよい大学にしていくために努力する」という方向性に本当に展望があるのか? [2005/05/22]

「都立の大学を考える都民の会」のニュース12号には、タイトルにある言葉が書かれていた。いずれ、「都民の会」のホームページに掲載されるだろうから、それからコメントしようかと考えていたが、512日に配信されてからすでに一週間が過ぎたので、こちらで引用しながら前後の文脈を紹介し、コメントすることにした。

 以下、簡単ですが集会・総会での議論の様子などについてもご紹介したいと思います。 集会・総会では、金子ハルオさん(「都民の会」呼びかけ人)が開会の挨拶に立ち、「首都大学東京」の発足という新しい状況の下で、会が息長い活動を続けていくために、みなさんの智恵を集めて今後の活動のあり方を考えていく場にしたい、と呼びかけました。 続いて行われた南雲智さん(前東京都立大学人文学部長)の講演では、人文学部長として一昨年八月の石原都知事による「クーデター」以降の状況をどのように闘ってきたのかを振り返りつつ、そこで生まれてきた変化(人事や教育内容等の決定に関して教員の権限が実態として回復していることなど)に触れ、「首都大学東京を変えていく」展望についてお話いただきました。 その後、講演を受けての質疑応答が行われました。会場からは 「『首都大学東京』を少しでもよい大学にしていくために努力する、という方向性に本当に展望があるのか?」 という率直な問いかけがなされ、南雲さんを交えての議論が行われました。 総会でも引き続きこの問題が議論されました。学内関係者からは、「首都大の学生・院生と都立四大学の学生・院生、と区別するのではなく、それぞれが大学に寄せる期待や要求に基づいて共同の取り組みを組織していきたい」(都立大院生)、「学内関係者の努力が本当に都民にとって望ましい方向に向かうのかどうか、これからも学外から厳しい目で見守ってほしい」(教職員組合関係者)との発言があり、これを受けて会場からも「私たちとしてどのようなことができるのか?」という視点から、いくつかの提案や問題提起が行われました。 会場からの発言は、申し合わせの内容に対する注文や改善提案、全国の都立大学同窓生の運動の紹介や裁判闘争の提案など様々なものがありました。紙幅の関係もあり、そのすべてを紹介することはできませんが、ご提案を受けて「申し合わせ(案)」の表現を修正する等、不十分ながらみなさんからの提案については反映できたのではないかと思います。 集会・総会では一定の緊張感を含んだ議論も交わされましたが、そのすべての意見・発言を共通して貫いていたのは、これまで都立の大学が培ってきた研究・教育の蓄積を、この新大学発足で決して途切れさせることなく、今後もさまざまな努力と取り組みをもって継承・再建していこうという意思であったと、私たちは受けとめました。新大学へのスタンスの違いを越えて共有されたこの意思を、私たちは改めてこれからの会の大切な指針としていきたいと考えています。

この質問:
『首都大学東京』を少しでもよい大学にしていくために努力する」という方向性に本当に展望があるのか?
に対して率直に答えれば、答えはYESであるが、
『首都大学東京』が最終的によい大学になるか? と尋ねられれば、答えはNOである。
「根本的によくする」ためには、大学法人の定款、大学の学則を(そして知事の独断で選ばれた大学名も含め)抜本的に改正する必要がある。なぜなら、それこそが私たちの反対してきた「首大構想」の根幹であり、内部で民主化をしようとしても、それを阻む砦となっているからだ。

折しも、横浜市立大学の国際総合科学部第2回教授会 代議制の原則がほぼ確立 (2005.5.20)というニュースを目にした。
「教授会の決定は代議員会のものに優越すること、教授会構成員の一定数以上の要求があった場合、教授会が開催されることが決定されています。」
とあるので、学内民主化の第一歩であろうと想像する。

一方、「首都大学東京」はどうだろうか? 「首大」の学則によると代議員会は、 以下のように規定されている。

(代議員会)第10条 教授会に代議員会を置くことができる。
2 前条第5項各号のうち、教授会が定める事項については、代議員会の議決をもって教授会の議決とすることができる。
3 代議員会を置く組織の長は、代議員会を招集し、その議長となる。
4 代議員会の構成等、必要な事項は、別に定める。

おそらく多くの教授会では、代議員を教授会選挙で選んだであろうと私は想像している。しかし、代議員が教授会の意見を代弁できる場所が、どれだけ提供されているのであろうか? それが疑問だ。

 教育研究審議会の委員は、当初の定款案にあったように、

「教育研究審議会は、学長、副学長及び法人の規程で定める組織の長をもって構成する。」

となってとしたら、まさにこの 「教育研究審議会」で、どれだけ代議員会の意見が、反映できるかが焦点となる。「教育研究審議会」が果たしてどれだけの実権を持つのかが気にかかるところである。教授会から人事権を奪ったのみならず、教授会からの意見が「教育研究審議会」で全く反映されないとしたら、この大学は死に体ではないだろうか?

「首大をもりたてよう。闘争の成果で大分よくなってきたので,さらに活動を強め,少しでもよい大学にしよう」という路線に組みしない、と私は以前 ここで書いた。繰り返しになるが、その意味は、首大システムは根本的なところ(大学の理念を含む公立大学法人、学則)で間違っているからだ。現実の「首都大学東京」のさまざまな矛盾を少しでも改善しよう、という動きに反対するものではない。しかし、そのシステムとしての矛盾を放置しては、最終的に意味がない。従って、「つぶれた方がよい」という意見は、システムとしての矛盾を解消する1つの方策である、と考える。「つぶしてから再建する」(SCRAP AND BUILD)のか、「つぶさずに再建する」のか、議論が分かれるところだろう。「つぶさずに再建する」ことでシステムの再構築が可能なのかどうか、現在の私は、その方向性に懐疑的である。
 将来的に、都知事が変わり、都知事のお仲間である理事長も学長も(寮長も学部長も)変われば、首大システムを抜本的に改革する道が開けるかもしれない。それまで待つのか、それとも。。。

ちなみに、「都民の会」は、以下のような今年度の活動方針を掲げた。

「都立の大学を考える都民の会」2005年度活動方針

 会の申し合わせ事項「U.運営と活動の基本 2.活動の柱」に基づき、今年度は次の活動に取り組む。

1)地方独立行政法人「首都大学東京」の問題点を明らかにし、批判と行動を継続する。
 独立法人化によって都立の大学の運営にどのような問題点が生じているのか、引き続き事態を注視し、批判と問題提起を行う。例えば研究教育費の削減等による研究教育条件の悪化や「語学教育の外部委託」等が引き起こしている問題などについて広く都民に知らせ、その改善を求める。また法人への交付金に対する「効率化係数」の導入等を理由にした授業料値上げには反対する。

2)都民による「大学黒書」づくり・都民の会の活動報告書づくりに取り組む
 在学生・院生に入学時に契約された研究教育条件を保障しているか、学内当事者の自主性を尊重した大学運営が行われているか、教育研究が都民の立場に立つものとなっているか、経営や情報公開などの点で「都民に開かれた」運営を行っているか等の観点から、新しくつくられる都立の大学について定期的な「評価」を行い、その結果を公表する。あわせて都立の大学を支える様々な人たちの意見を集約し「黒書」の内容に反映させる。またこの間の都民の会の活動記録を報告書としてまとめる。

3)都民による「都立の大学」講座(仮称)を定期的に開催する
 都立の大学の中で営まれてきた学問・研究の蓄積について「都民の立場」から掘り起こし、共有できるような学習会・講演会を定期的に開催する。また都立の大学が取り組んでほしい様々な教育研究のテーマ・課題に即して、大学内外にこだわらずゲストを招いての学習会を行う。

4)ホームページ・ニュースによる情報発信・「情報公開」制度を活用した資料の公開を行う
 都民の会ホームページやニュースの発行などを通じて都立の大学をめぐる状況を随時報告する。その中で適宜都民の会としての見解を表明し、世論を喚起する役割を担う。また「情報公開」制度を活用した都立の大学に関わる様々な資料の公開と蓄積を今後も継続する

5)学内の教育研究条件の切り下げに反対し、その保障と改善の取り組みを支援する
 引き続き学内諸団体と連携を取り合いながら、在学生・院生・教職員の教育研究条件を守るための取り組みを支援していく。また定期的に学内諸団体との懇談を行う。

6)都政革新のための教育・福祉・医療・労働を横断したネットワークの形成に向けて
 教育・文化・医療・福祉など様々な分野の取り組みと連携し、都政を変えていくためのネットワークづくりに取り組む。当面その準備のために、昨年2月の日比谷集会を通じてつながりをもった諸団体に懇談会の開催などを呼びかける。

7)会員を拡大し、会の財政基盤を充実させる
 当面500人を目標に会員を広げる。また団体会員を現在よりも増やす。あわせて世話人会・事務局を求められる活動に相応しい規模に拡大する。