手詰まりか、逆王手か 米長永世棋聖が提訴された「盗作疑惑」の仰天中身 『週刊朝日』2005年6月3日号 (2005.5.23)

 

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(以下は、200563日に加筆)

 

手詰まりか、逆王手か 米長永世棋聖が提訴された「盗作疑惑」の仰天中身

 

【写真説明】

「出題は100問中100問が同じだった」と武者野氏

 

「私が開発したゲームソフトとほとんど同じ内容のものを無断で販売され、著作権を大いに侵害された。将棋の大先輩とはいえ、これは許しがたい行為ですよ」

519日、棋士の武者野勝巳六段(51)が社長を務めるソフト制作会社が、永世棋聖の米長邦雄氏(61)らを相手に、約4100万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。

訴状などによると、武者野氏は将棋のルールや定跡を学びながら練習対局が可能な将棋ソフト「将棋セミナー21」を開発。米長氏を監修者に迎えて003月に発売した。

ところが、翌年、米長氏が「監修したことが恥ずかしい。失敗作だった」として、販売中止と廃棄を要求。武者野氏はやむなく要求を受け入れた。

023月、米長氏が監修役の「みんなの将棋」が発売された。これを見た武者野氏は唖然としたという。

「講義の構成や出題内容、プレーヤーが対局を経て段位の認定を受けられる点、初級、中級、上級の構成などが極めて似ている。これは私の独創部分なんです」

ソフトの類似点はそれだけではない。「三手の読み」「詰めろと必至」など、各章の見出しがほとんど同じ。棋譜に至っては金、銀、飛車、角から歩の位置までまったく同じなのだ。

もっとも、米長氏と武者野氏が交わした契約書には〈(米長氏の事務所の)米長企画の作成した詰将棋の問題、実戦譜解説らに含む表現についての著作権と著作者人格権は米長企画に帰属する〉とある。米長氏も、「著作権及び著作者人格権は米長に帰すると契約書の第1条に明記されている」とコメントしている。

だが、武者野氏は、「米長氏側の著作権が認められるのは、詰将棋と実戦譜の解説だけ」と猛反論する。

ちなみに、武者野氏によれば、米長氏との将棋の対戦成績は1勝1敗という。

提訴という形で先手を打った武者野氏。一方の米長氏は現役時代に、相手を引きずり込んで終盤に逆転する"泥沼流"で幾多の難局をくぐり抜けてきた。

決戦の舞台は法廷。二人の次の一手は。

本誌・佐々木広人