平安女学院大学守山キャンパスでの就学権確認訴訟、 大津地裁 学生側の訴え認めず (2005.5.24)

 

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2005年05月24日

平安女学院大学守山キャンパスでの就学権確認訴訟、 大津地裁 学生側の訴え認めず

 5月23日大津地裁にて,平安女学院大学守山キャンパスでの就学権確認訴訟の判決があった。判決文の具体的な内容はわからないが,各紙の速報を読む限り,結果は原告学生(川戸佳代さん)の訴えを認めなかったようだ。いずれ原告あるは代理人弁護士から,今回の判決の具体的内容およびそれに対するコメントあるいは声明が発表されると思われる。

 この就学権確認訴訟は,平安女学院大学守山キャンパスの移転・統合に反対した同大の学生による訴訟である。裁判所への直接的な請求事案は,原告が卒業するまで(卒業最短年限)の間、被告の設置するびわ湖守山キャンパスにおいて就学する権利(教育を受ける権利)があることを確認することであった。しかし,この訴訟の持つ意味は「同じキャンパスで卒業させろ」という単純な訴えにとどまらないと考える。
 第一に,原告学生は,昨日発表した「判決の言い渡し(5月23日13時15分から)を前にして」でも書かれているように,平安女学院大学の社会的責任を問うためにこの訴訟を提起した。平安女学院大学は滋賀県および守山市から総計約34億円もの巨額な補助金を受けて守山キャンパスを設置しておきながら(守山市と協定では同キャンパスの長期存続を約束),わずか5年で同キャンパスを廃止し高槻キャンパスへ移転・統合を決定した。原告代理人弁護士が指摘するように,いわば「補助金の食い逃げ」を実行したのである。しかもこの決定を,関係自治体への了承を取り付けることもなく,また特に学生への十分なる事前説明と納得を得る努力をしないままに理事会で一方的に決定・強行した。こうした大学における全構成員の自治(いわゆる本来の大学の自治)が機能しないところで発生した就学権の侵害と,教育機関として社会的道義にもとる行為への社会的責任の追求が今回の訴訟を通じて意図されたと思われる。
 この点に関わり,本来ならば,こうした大学の事業計画とその遂行に関しては,直接的に大学内部の,特に教授会や学則上で定められている大学評議会などで充分審議されるはずの事柄である。また,教職員組合等においてもその責任のあり方が追求されてしかるべきであった。しかし,同大学における実態は必ずしもそのようなものではなかったのではないか(もし,教授会・評議会等の学内組織で充分な審議を尽くし,理事会決定と今回の特異な進め方を支持したとするならば,それこそ教育組織の質が問われる)。したがって,当該学生たちの運動と原告学生の訴訟は,それらに代わって本来的な大学自治を取り戻すための役割を積極的に担ったと評価することも可能ではないか。
 第二に,これは原告代理人弁護士が述べているが,本来、補助金を出した滋賀県と守山市がなすべき大学存続を求める訴訟を学生が代わって提起したという側面がある。同大守山キャンパスは自治体が巨額な税金を使って誘致したものである。その大学がわずかな期間をもって撤退を一方的に決定した際には,自治体自らが訴訟に持ち込んででもその責任を追及してしかるべきであった。しかし,滋賀県も守山市も,実際には当初,移転・統合の決定に反対を表明したに過ぎなかった。
 この点について,原告学生らが移転反対の運動と署名活動を展開した際,守山市長や市議らの相当数はその活動に賛意を示し,署名に応じた(守る会「抗議文」ではこう書かれている。「市長は守山キャンパス(現代文化学部)の存続を求める学生の思いを真摯に受け止めると様々な場所で発言されてきました。そして、びわ湖守山キャンパス(現代文化学部)の存続を求める署名もされ、私たちを応援するとおっしゃっていました」)。
 しかし,市長は同じ時期に移転反対を貫くどころか,立命館大学の川本理事長と秘密裏に会見し,今回のような学生や生徒たちの願いを無視した処理の仕方を協議していた。そして,それを突然マスコミに発表した。これを学生の立場からみると「裏切り」以外に,なんと表現できようか。今回の守山市長の対応は,そのような性質のものであった。また,こうした事情を知りつつ,守山女子高校の移管を条件とした同大キャンパスの市への返還を話し合った立命館大学理事会の最高責任者も,ひどい対応をするものである。これらの者に,教育を語る資格もその事業を担う資格もないと感じるのは私だけであろうか。
 
 「守ろうの会」原告学生たちは,移転反対の署名をわずか半年の間に約2万筆集めた。2万筆という数字は,やってみた者はわかると思うが,それほど多くはない人数の女子学生たちの活動量にしてみれば,途方もない数字である。それだけ,彼女らの努力は並大抵ではなかったと思うし,またその主張と取り組みに対して,同大学の学生はいうまでもなく多くの市民が支持していたと言えよう。今回の判決結果は別にして,彼女ら学生の主張の正当性は社会的に充分証明されていると思う。

大学移転反対の訴え認めず 大津地裁、学生敗訴の判決

共同通信(5/23)

 平安女学院大が滋賀県守山市のキャンパスを大阪府高槻市のキャンパスへ統合させた決定は不当として、同大4年の川戸佳代さん(21)=守山市=が、大学を経営する京都市の学校法人に、守山市で就学する権利の確認などを求めた訴訟の判決で、大津地裁は23日、川戸さんの請求を退けた。
 稲葉重子裁判長は判決理由で就学権の確認について「訴えの利益を欠き、不適法」とした。大学と原告との間で結ばれた就学の契約は「特定なされた施設を利用させることまでは内容となっていない」として「卒業するまで(ずっと)守山で就学する権利は発生しない」とした。
 川戸さんは「守山キャンパスで教育を受けることは就学契約上の重要事項。市や県が補助金を出す際もキャンパスの長期存続が約束されており、大学は守山で授業を続ける義務がある」と主張。大学側は「守山での就学まで要求されていない。統合は大学の自治の範囲」などと反論していた。


[同ニュース・関連ニュース]
平安女学院大キャンパス統合 守山での就学権認めず 大津地裁判決(京都新聞5/23)
契約違反といえない=キャンパス廃止、学生敗訴−「学科、授業と違う」・大津地裁(時事通信5/23)
大学移転反対の訴え認められず(日刊スポーツ5/23)
守山女子高PTAが要望書 立命館への設置者移管計画で(京都新聞5/23)

投稿者 管理者 : 20050524 03:33