米長邦雄“盗作疑惑”: 「訴訟に関する一問一答」 質問者 Web駒音管理人・こばやし マリオ武者野のホームページ (2005.5.24)

 

マリオ武者野のホームページ http://www.koma.ne.jp/mario/ 

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訴訟に関する一問一答

質問者 Web駒音管理人・こばやし

1.提訴の時期
こばやし
ただ今訴状を読ませて頂きまして、初めて詳しい事情を知りました。
Web駒音の掲示板には様々な疑問・質問が寄せられています。
管理人として、掲示板を代表し、質問させてください。
まず基本的な確認ですが、武者野先生が社長をしている(株)棋泉から
『将棋セミナー21』(初級・中級。上級)が同時発売されたのが2000年5月。
約1年が経過し、米長氏の「失敗作である。市場に出ているのが恥ずかしい」
との強い要望により、発売停止・強制廃棄になったのがその1年後ですよね。
ところがさらにその1年後、2002年3月にサクセスから
『みんなの将棋』(初級・中級。上級)が同時発売され、
失敗作と指摘され発売停止になった『将棋セミナー21』の内容がほとんど
同じだったというのが今回の訴訟に至る経過であると報じられています。
要点としてはこれでよろしいですか?


武者野
だいぶ端折っていますが、大筋としてはそういうことです。

こばやし
Web駒音の掲示板で、まっさきに呈された疑問が、
「『みんなの将棋』(初級・中級。上級)が発売されたのが3年前のことなのに、
それがなぜ今頃になって提訴を決意したのだろう?」ですね。
一説には、「米長氏が立候補している(社)日本将棋連盟理事選への
選挙妨害が目的では?」という指摘もありますが?

武者野
その「選挙妨害うんぬん」というのは、私が出席していない棋士会で、
米長氏が事件を報じる週刊誌発売以前に突然発言された内容で、
公の場において行われた私の名誉への重大な毀損であると考えています。
私が米長氏を「理事にはふさわしくない人」と考えていることは否定しませんが、
今回の選挙には弟弟子の森下卓九段が立候補している。
彼は米長氏と立場が近いので私の立場は複雑。
よって今回の選挙は静観を決め込んでいます。

こばやし
ということは、この時期の提訴はまったく偶然だと?

武者野
米長氏のHPに今日初めて『時効』という文字が躍っていましたね。
『時効』というのが大きなキーポイントです。
できるなら(社)日本将棋連盟棋士同士の訴訟は避けたかったので、交渉しよう
と粘り強く人を介してましたが、まったく取り合う姿勢がありませんでした。
著作権侵害の時効は3年だそうです。2002年3月7日から3ヶ月間に
短期集中販売されていたとすると、時効は2005年6月7日に成立。
実際はもう少し長い間販売されていたのでしょうが、とにかく時効を
迎えると訴えの根拠自体が消滅してしまう。
「話し合いには応じない。だとすると泣き寝入りするか、提訴するか」
ずいぶん悩みましたが、これがこの時期に提訴することを決意した理由です。
だいたい米長氏は色々な公職に就いていますから、その改選時期がたくさんある。
その時期を各々調べて提訴の時期を避けようとするなどは、私が配慮する筋合い
のものではありませんし、何らかの妨害を意図したものであるなら、
むしろ別の役職に合わせた時期の方が効果的という指摘もあるくらいですよ。

こばやし
なるほど、傍目からは気がつかない時効というキーポイントがありましたか。


両ソフトの一致性
こばやし
ところで先に公開した画面比較ですが、「たまたま一部が一致しただけでは?」と
大泉逸郎の歌―『孫』でしたか、これなどを例に出した疑問の声もありましたが?

武者野
講座と問題集は順番や構成の違いこそあれ、「完全一致」と言っていいです。
そのような疑問の声があるのでしたら、HPの画面比較を増やしておきます。


著作権に関する契約
こばやし
この件が報道され始めた当初は沈黙を守っていた米長氏でしたが、
最近になって「商品(将棋セミナー21)については、両者の契約書の第一条に、著作権及び著作者人格権は米長邦雄に帰属する。と書いてあります。
とご自分のHPに発表しました。

武者野
「甲(株式会社米長企画)の作成した詰め将棋の問題及び実戦棋譜解説らに
含む表現についての著作権及び著作人格権は甲に帰属する」との
限定的な表現はあります。
「(一部は)米長に帰属)」の「(一部は)」を省いて記述すると、
意味が全く反対になりませんか?

こばやし
確かに米長HPだけを読んだ人にとっては反対の意味に受け取れますね。

武者野
第一条の意味するところは『将棋セミナー21』に収録された
入門講座や上達講座、それに連動する問題集とは一線を画して、
米長氏著作の本から収録した詰め将棋と、実戦棋譜解説の表現についての
米長氏の著作権を認めたものです。
それでさえもデジタル化権(著作隣接権)は別のものですし、ソフト全般にわたる
著作権の全てが米長氏にのみあるという考え方は無理がありすぎます。

こばやし
「詰め将棋の問題及び実戦棋譜解説らに含む」の『ら』が、ソフト全般を指して
いるという主張は成り立ちませんか?

武者野
裁判でそう主張するのは勝手ですが、もしそうであれば、こんな長い文章にせず
「本ソフトの著作権は米長企画に」と簡潔な表現にしたことでしょうね。

こばやし
では契約書に『ら』の文字が入れられた本来の意味するところは?

武者野
『コーヒーブレイク』というコーナーがあって、そこに将棋の蘊蓄話を収録してある。
厳密に言えば、冒頭の挨拶とその音声も対象といえるでしょう。

こばやし
なるほど、他にも細々した部分があるので『ら』の1文字を入れたのですね。

武者野
もともと著作権というのは、書いたときに自然発生的に生じる無形財産です。
講座や問題集は(株)棋泉が作成したもので、それを証明する資料はいくらでも
ありますし、米長氏も承知でしょうから、この部分は争点にはならないのでは。


転用了解の存在は?
こばやし
ちなみに、商品においてのCopyright(丸にCが入っているマーク)の著作権表示
は、どうなっていますか?

武者野
パッケージとマニュアルに「ALL RIGHT RESERVED, COPYRIGHT (C) KUNIO YONENAGA ・KOMAOTO CORPORATION」と明記されています。

こばやし
法律的には分かりませんが、収録物の著作権は共同管理となっているようですね。

武者野
少なくとも一方だけの意志で転用はできないと心得ています。
米長氏関連のパーツを除いた新バージョンの制作はほぼ完了していますが、
その前に著作権の存在を完全確認しなければプレスなどの実作業には移れません。
ここに至れば、司法の手によって権利関係を明確にしていただくしかありません。

こばやし
もう一つお聞きしたいのですが、セミナー21の販売終了後に、
米長氏に対し講座や問題集内容を『みんなの将棋』に転用することを
了解したということはありませんか?

武者野
自分たちが時間と情熱と費用をかけて制作した作品は自分の子供のようなもの。
それを回収の末に廃棄処分される気持ちが分かりますか?
それにもかかわらず、その内容物の著作権一切を、強いて廃棄を求めてきた
相手に無料で供与…なんてことをしたら、私が株主から訴えられてしまいますよ。

こばやし
そりゃあ、そうですよね。では、これはありえないということで。


将棋連盟除名との声には?
こばやし
「米長氏は将棋連盟会長になる。武者野は除名になるぞ」
という書き込みがありましたが…。

武者野
なかなかショッキングな話ですよね。
連盟関係者からも「だから早く矛を収めた方がいいよ」という忠告もあります。
この種のや指摘は聞きようによっては脅迫になってしまいます。
こばやしさんの「できるだけオープンに」の掲示板運営の精神には敬服しており
ますが、法に触れかねない書き込みについては対処を考えてほしいと思います。

こばやし
いわゆる「荒らし」や「煽り」の書き込みについては、私の判断で削除か修正
するようにしています。
対立する話題によっては互いの主張が熱くなり、どうしても表現が乱暴に
なってしまいがちなので判断が難しいですが、それも加えて
善処していきたいと思います。


不正競争防止法は?
こばやし
これまで様々な疑問や指摘について遠慮なく聞かせて頂きました。
最後にもう1つだけ、「(米長氏には)不正競争防止法違反もあるのではないか」
という書き込みがありましたが、これについて聞かせてください。

武者野

ソフト業界の仲間や弁護士さんからも、不正競争防止法の恐れについての
指摘は頂いています。この罪状だと刑事事件になりますね。
うーん…微妙な問題ですので、それ以上のことはお答えできません。

こばやし
わかりました。それでは、もっと聞きたいこともあるのですが、公の場での
争いになったことでもあり、発言にはいろいろ制約があることは承知して
おりますので、このあたりで終わりにします。
武者野先生、どうもありがとうございました。


 ※以上は2005年5月23日、埼玉県さいたま市内にて行われたインタビューを
   Web管理人・こばやしが編集したものです。
 ※この一問一答を編集している最中に武者野先生より電話がありました。
  「第1回公判が6月21日午後1時半より、東京地裁にてと決まった」