呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視 asahi.com (2005.5.25)

 

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呉副首相会談キャンセル、海外メディアも注視

2005年05月25日12時10分

 中国の呉儀(ウー・イー)副首相が小泉首相との会談をキャンセルして帰国し、外交問題になっている事態について、各国のメディアは「中日、国際マナー舌戦」(韓国・東亜日報)、「中日関係は厚い氷結期に」(英フィナンシャル・タイムズ)などと報じ、強い関心を示している。しかし、英国では4月に起きた中国の反日デモ報道に比べ扱いは小さく、米国やアジア諸国では悪化する日中関係の流れに位置づけ、日中の主張をほぼ等距離で伝える報道が目立つなど、冷静な分析が主流なようだ。

 米ワシントン・ポスト紙は、靖国問題を巡る両国の感情的な対立が東アジアにおける「戦略的なライバル関係の拡大意識」によって激化していると指摘。ニューヨーク・タイムズ紙は、中国側の対応は日本側には「明らかな侮辱」としたうえで、「中国側の行動は恐らく裏目に出て、反中強硬派の安倍晋三幹事長代理の小泉後継を手助けするだろう」とするロビン・リム南山大教授の分析を引用した。

 韓国の東亜日報は、「日中間には、歴史だけでなく、台湾、釣魚島(日本名・尖閣諸島の魚釣島)問題、日本の安保理常任理事国入りなど地域の主導権を争う問題が多く、しばらく冷却状態が続くだろう」と、状況の改善に悲観的な論者の見解を紹介した。

 朝鮮日報も日中の「冷たい政治関係が熱い経済関係まで悪化させることはないだろう」としながら、「軍事・経済の覇権をめぐる競争が激しくなり簡単には解消されない」という専門家の見方を伝えている。

 戦後60年で歴史認識を巡る日本と周辺諸国の摩擦に注目が集まるドイツでは、多くのメディアがこの問題を取り上げた。フランクフルター・ルントシャウ紙は、中国は「キャンセルする以上、理由をはっきりと示さなければならない」と中国政府の外交手法を批判した。

 ロシアの主要各紙も一斉にこの問題を報道。「日本の首相は中国の怒りを恐れていない」(新イズベスチヤ)などと、日中間の険悪な空気を伝えている。

 日中双方の立場を等距離で伝える論調が目立つ中、中国に批判的な意見が目立つのがマレーシア。「マレーシアでは補償もすんだ話とみなされており、問題視されない」(地元大手紙幹部)。

 台湾では、呉副首相の突然の帰国は中国の「外交失態」(自由時報)と位置づける見方が目立っているが、同じく台湾の中国時報は「副首相訪日に込められた『関係改善の手がかりに』という北京のメッセージが分からない小泉外交の愚かしさ」と書いている。