軍隊なき占領 天木直人メディアを創る (2005.5.27)

 

 

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軍隊なき占領

 

 久し振りに面白い本を読んだ。面白いというより慄然とする本だ。占領の混乱期に、米国が日本を自らの都合のいい国に支配しようと暗躍していたということは知っていた。しかしここまで日本の指導者層が米国の手先になっていたとは驚きである。

 ジョン・ロバーツというジャーナリストの手による「軍隊なき占領」(講談社アルファ文庫から03年3月20日に邦訳発行)は、マッカーサーの日本民主化政策が、ハリー・カーンをはじめとしたジャパン・ロビーの手で180度逆行させられ、戦後の日本が、民主化どころか、米国に操られた日本の指導者層と闇のフィクサーによって、国民の犠牲のもとに完全な米国の手先にさせられてしまったという事実を、資料に基づいて証明した本である。

 圧巻は、自ら絞首刑を覚悟していたというA級戦犯の岸信介が、おなじくA級戦犯の児玉誉士夫、笹川良一とともに無罪釈放され、米国の手先となって日本を米国に差し出した売国奴であると断定している箇所である。期限が切れそうになった安保条約を国民の反対を押し切って延長した岸の米国にとっての存在価値がそこにある。

その岸内閣で閣僚を務めた福田赳夫もジャパン・ロビーに取り込まれた一人だ。岸の孫である安倍晋三や福田の下足番をしていた小泉がここまで米国に従う理由は、実は我々が想像している以上の深い理由があることを、この本は教えてくれる。

 ジョン・ロバーツは言う。日本の歴史学者は日米関係の裏面史を決して書こうとはしない、それは彼らもまたジャパン・ロビーとの関係を有難がってきた連中であり、なによりも米国に操られたこの国の支配者層の最大の汚点を追及することは自殺行為であるからだと。

 我々はひょっとしたら孫悟空のように米国というお釈迦様の手に上で踊らされているのかもしれない。いくら小泉批判を重ねても無駄なことかもしれない。小泉首相がこれほど傲慢でいられるのも米国という強力な後ろ盾によってその地位が保証されている事を知っているのかもしれない。もちろんその為にはあらゆる米国の指示を、国民の願望よりも優先するという対価を払っての事である事も。

 果たして日本はこの「軍隊なき占領」から逃れられるであろうか。徒手空拳の我々国民ができることはあるのか。むしろ無駄な抵抗を諦め、口をつぐんで体制に従うことが利口なのか。

そうではあるまい。この国が我々の知らないところで深く米国に占領されているのなら、なおさら日本を米国から取り戻さなければならないであろう。それは将来の世代への我々の責任であろう。

すべては事実を知る事から始まる。一人の出来ることは限度がある。しかし皆が知識を持ち寄り、情報を分かち合って、日本の戦後史を徹底的に学ぶことだ。後世に語り継いでいくことだ。そして日本を奪還する希望を失わないことだ。

米国や米国に操られた日本の支配層が最後におそれるのは、国民の目覚めである。自立である。最後に従わなければならないのが国民の声である。大衆の叫びである。だからこそ彼らは事実を伝えようとしない。国民のマインドコントロールに躍起である。小泉首相のパフォーマンスもその一つだ。

しかし情報伝達の進歩は、そのような姑息な操作をますます難しくさせていくであろう。過去には可能であっても最早時間の問題だ。真実が明らかになり国民が目覚めた時こそ、新しい日本の始まりに違いない。