またまた入学式で10人の処分が?! 学校での強制に対して勇気あるたたかいの手記を紹介します はじめ通信 (2005.5.27)

 

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はじめ通信・05勝利をめざして5-527

またまた入学式で10人の処分が?!

学校での強制に対して勇気あるたたかいの手記を紹介します

 

●5月26日の教育委員会で、都立高校はじめ都内の学校の入学式で、君が代斉唱のとき、実施し真に従わなかった教員の人数が報告されました。

 都立高校で8名が不起立、伴奏拒否が1名、中学校で不起立が1名と報告されました。これまでと同様、多分、27日にも、合計10名の処分が発表されるものと思われます。

 

●しかし、いま都の日の丸・君が代強制に反対する都民運動が大きく広がっています。そのネットワークの中で多くの方々の怒りを呼び、また勇気あるたたかいに胸を打たれるメールが転送されています。

 

●これを読むと、日の丸・君が代強制と、その後の教員への不当な弾圧や処分をめぐって、都の教育庁のやり方が、文字通り無法きわまるものにエスカレートしていることが手に取るように分かります。

 

●私は、こうした処分や乱暴な取調べ・調査に携わっている一人一人の教育長職員が、実は学校現場では良心的に仕事をしてきた人もたくさん含まれていることを、各方面から聞いています。問題は、やはり石原・横山の超右翼的な教育「改革」路線と、そのための教育行政への支配・介入にあるのだということを見なければならないと思います。

 以下、原文のまま紹介します。

 

 物言える唇と心を託せる手を                  池田幹子

 

 今年の入学式で「君が代」ピアノ伴奏をせず、職務命令違反だとして「事情聴取」の対象となりました。戒告処分が予想されます。このことは不当ではありますが、予想していたことでした。

 

 しかし3月の休日に前任校(豊多摩高校)の卒業式に来賓として出席したときの「ひとこと」について、5月になって指導主事2名が現任校に乗り込んできて私に「聞き取り調査」を実施しようとしたこと、しかも調査の根拠すら説明せずに強引に調査に入ろうとしたことは、私の想定していた「都教委の不当なやり方」の範囲を遙かに超える、予想外の出来事でした。生徒を相手にした言葉を、狙い打ちして「物言えば唇寒し」と黙らせてゆく、その萎縮効果の広がりが恐ろしいと感じています。

 

 ピアノを弾く手には心を託し続けたい、物言う唇を持ち続けたいと願いながら、いま起こっていることを報告します。

 

(1) 前任校での「ひとこと」

 

 1年前まで勤務していた豊多摩高校の卒業式に、私は来賓として参加しました。式次第の「来賓紹介」のときに順番に立った際、「おめでとうございます。色々な強制がある中であっても、自分で判断し、行動できる力を磨いていってください」と祝辞を一言述べました。ただそれだけのことが聞き取り調査の対象とされたのです。

 

 卒業式の後早速、豊多摩高校の木部校長が現任校の校長に電話をかけてきて「国歌斉唱の際不起立だったことと、発言について極めて苦情に近いこと」を言ったと聞きました。現任校の校長から事実確認を求められましたが、「休日の言動について、違法行為など一切なかったのに、事実確認を求められる根拠を示して欲しい」と言って、そのやりとりを2〜3日行いましたが、それで終わったと思っていました。

 

(2) 入学式での「君が代」不伴奏と「事情聴取」

 

 4月の入学式で私は「君が代」伴奏をしませんでした。なぜ伴奏しなかったかについては、1年前に本に書いたことと基本的には同じなので、そちらを参照してください。【※注:最下段へ】

 

 このことの「事情聴取」に、教育庁人事部に4月14日に呼び出されることを12日に知らされました。事情聴取に弁護士立ち会いを認めるよう「申入書」(資料1)を13日に送りました。14日に弁護士に同行してもらって都庁へ行きましたが、「立ち会いは都教委が認めない」と都教委のS管理指導主事が答え、約40分間その問題で話し合いました。場所がない、と部屋にも入れてもらえず1階ロビーの椅子に座って話しました。

 

 S指導主事は「職務上起こりえたことだから、直接の上司である校長に立ち会ってもらう。公正を期するために立会人を設定しているが、立会人は校長であり弁護士は都教委として認めない。」と回答しました。校長は事故報告を出した当事者であって、「公正を期するための立会人」にはなり得ないことを質しましたが、答えは変わりませんでした。

 

 「申入書」で指摘した「昨年、勤務時間を30分以上超えて休憩も取らせず事情聴取を行った件」については「勤務時間を超えたことは不適切だった。今は勤務時間を超えないよう厳しく言われている。」「休憩時間は出張の時は取れない場合もあるので事前に校長が休憩を与えておかねばならなかった」旨、S指導主事が回答しました。

 

 納得しがたい答えでしたが、事情聴取は不成立で終わりました。(資料A「申入書」を都教育委員会へ4月27日に送りました。)

 

 校長のみがその後長時間、聞き取りされた模様です。その後、前任校での発言を(不起立は対象とならず)伝聞を基に現任校の校長が都教委へ文書報告しました。

 

(3)5月6日の「聞き取り調査」

 

 5月2日に校長から「5月6日11時から11時半に指導部から2名来校し、聞き取りを行うので応じるように、口頭で職務命令を出す。弁護士は同席できない、記録はだめ、印鑑が必要。」と言われました。

 

 当日都教委のE統括指導主事とM指導主事が来校しました。弁護士にも来てもらいましたが、指導主事が「弁護士立ち会いは認めない。認めない理由は答える必要がない。自分たちは答える立場ではない。聞きたければ職員課長に聞いてくれ」「休日の言動について職務だと言って調査する理由は『聞き取り』に入ったら説明する」と繰り返しました。

 入り口論だけで45分近いやりとりとなりましたが、指導主事は早々と「職務命令に違反し聞き取りを拒否した」と結論づけようとし、こちらは「拒否していない、しかし応じる前提として説明を求めている」と問いかけ続けました。

 

 話の途中でE指導主事が「これは都教委の調査委員会の調査である」と言いました。「何の調査委員会か」をたずねても「調査委員会です」としか答えず、「何を調査する委員会なのですか?」と聞き直しても「調査委員会です」と繰り返すのみ。最後にE指導主事は「お答えする必要はないと思う」と言い放ちました。

 

 昨年13校67人が「調査対象」とされ、「厳重注意・注意・指導」などの処分を受けました。今年は私を含め4人が調査対象になっていると聞きます。

 

 他の人達の調査も不当ですが、休日に前任校へ行ったときのことを調査されているのは私だけです。出張でもなく、もちろん職務命令も出されていませんでした。

 

(4)自分で判断し、行動できる力

 

 私は1年前、異動年限にも達していず、1学年担任でしたが、異動希望などないのに、大変遠い学校へ異動させられました。

 

 豊多摩高校の卒業式には2年生も全員出席するので、私にとっては担任した学年の生徒たちに会えます。卒業生も、色々な思い出のある、教えた生徒たちです。「「自主・自律」を重んじる校風の中で、伸びやかに育ってきた生徒たちに、「自分で判断し、行動できる力を磨いていってほしい」と述べたのは、私の、最後までつきあえずに別れてきた生徒たちへのはなむけの言葉です。旧職員の来賓が卒業式でひとこと語りかけるのは、決して珍しいことではありません。ひとこと語りかけた内容も、どこが咎められるのか、今も理解できません。

 

 内容がどうというよりも、大人が本気で生きている姿、語りかける言葉を若い人達は必要としていると思います。内容の是非は若い人達がそれぞれ自分で判断するし、何かをこちらが言ったからといって、それでその通りになるというものでもありません。ただ、大人が本音を隠して、適当にごまかして生きている姿は、目に見えない、言葉にできないあきらめ、絶望のようなものを蔓延させてゆく、若い人達の希望を失わせてゆくと思います。

 

 たった一言をも許さず、嫌がらせとも言える「聞き取り調査」を仕掛けてくる人々、しかもそれを「教育」とか「指導」の名の下で行う人々が、一方で自分の行う調査の基本にかかわることについて「答える立場にない、職員課長に聞いてくれ」と子どもの使いのようなことを言って恥じる様子もない、それを見るにつけてもこれからの人たちが「自分で判断し、行動する力」を信じて欲しいと願わずにはいられません。