国立二小「事件」とは 澤藤統一郎の事務局長日記 (2005.6.1)

 

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国立二小「事件」とは  

 

国立二小弁護団会議で、報道特集番組のビデオを見た。国立二小「事件」が起きたのが2000年春。その後一年の時点で、「事件」を振り返っての特集。教員のひとりが録画したものの再生。

 

実に手際よくできているのに感心した。作成・報道したのは「MXテレビ」である。ときおり、この局の取材に出くわす。延々と石原慎太郎の記者会見を放映するチャンネルという印象が強く、記者には「石原慎太郎のテレビ局ね」と毒づいていた。先入観はよくない。これまでの傲慢な態度を謝罪しなければならない。

 

とは言え、この番組けっして被処分者側に立って作られたものではない。したり顔をした石原慎太郎の右翼根性丸出しの演説もあれば、事件当時の校長、次の校長のコメントもバッチリ撮っている。処分を受けた教員はひとりも出て来ない。主役は一年後の子どもたちである。実に的確に、国立の教育の本質を語り、日の丸を掲げた校長とのやりとりの意図を語った。「校長先生に求めていたのは、納得できる説明だった」「普段は使わないような敬語を使って話をした」「子どもだって、自分でものを考える」と。勝負ありなのだ。

 

国立二小「事件」とは何なのか。実は、何の事件も起こってはいない。跳ねた校長が学校の歴史や地域の事情を無視して卒業式当日に校舎屋上に日の丸を揚げた。これに30人余の卒業生が掲揚の理由を問いただした。校長の回答の不手際もあって問答は2時間余に及び、最後は教員の取りなしもあって、校長は子どもたちに非を認めて謝罪し、自ら日の丸を降納した。これだけのことである。

 

ところが事態は10日後に一変する。産経が「子どもたち 校長に土下座要求」というおどろおどろしい見出しで、一面トップの記事にした。ここから事件がでっち上げられ、「国立の教育」への総攻撃が始まる。そちらが、本当の「事件」なのだ。

 

MXテレビの特集報道は、産経の紙面を映し、国立に結集した60台もの右翼の街宣車の映像を流し、都教委の幹部が語って石原につながる。右翼グループの連係プレーであることがまことに分かり易い。最後は、子どもたちの身の安全のために顔は映せないという説明がはいる。

 

弁護団は、二小の教職員13名に対する本件処分は、実は全国的にも注目されていた「国立の教育実践」を潰すことが目的の、政治的な弾圧であったことを主張している。なるほど、この番組は石原や校長の言い分に時間を割いているだけに、雄弁に真実を語っている。

 

産経のごとく、行政からリークされた記事を大げさに載せて、でっち上げに加担するメディアもある。しかし、これを批判するジャーナリズムもまだ健在なのだ。捨てたものでもない。今日は少し嬉しくなった。