横浜市立脳血管医療センター問題:脳神経外科で3医師退職 緊急手術が困難に 「東京新聞」 (2005.6.1)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/kgw/20050601/lcl_____kgw_____000.shtml

 

 

脳神経外科で3医師退職

緊急手術が困難に

 脳卒中などの脳血管疾患の専門病院として二〇〇〇年に開院した横浜市立脳血管医療センター(同市磯子区)で、脳神経外科の医師四人のうち三人が辞め、緊急の外科手術が困難になっていることが三十一日分かった。三人は一昨年、経験のない内視鏡手術で医療ミスを引き起こした医師。市とセンターは後任の医師を確保できないでいるが、最大の要因は今後のセンターの医療機能をめぐる議論が混迷し長期化しているため。多額の税金を投じて設立したセンターが“機能不全”に陥れば、市の責任が問われることになる。 (金杉 貴雄)

 ■改革案混乱、後任確保できず

 三人のうち一人は今年三月末に退職し、他病院に勤務。ほかの二人も五月三十一日付で退職した。いずれも一昨年七月、脳内出血の女性患者に経験がなく内視鏡手術を実施し、患者が重体となり、医療ミスを指摘した外部専門委員会の報告を受けた市は、今年一月に三人を処分。また、三人は患者家族から刑事告訴され、損害賠償を求められている。

 本来定員四人の脳神経外科は一日から一人体制に。同センターによると、脳内の血などを管で外部に排出する「ドレナージ」など簡単な手術はできるが、くも膜下出血や脳内出血などの大がかりな手術には対応できないという。市立市民病院から不定期に応援を頼むことも検討しているというが、緊急対応は難しい。

 このため同センターは今後、土日祝日の外科手術は停止し、平日は救急患者を受け入れるものの外科手術が必要と判断した場合には他病院に転院させる方針。しかし、市消防局救急課は、「専門の医師に早く診てもらいたいが、患者を運んでも転院が頻繁に起きれば、救急の仕事が滞る」と懸念を示している。

 後任が決まらない最大の要因は、センターの医療機能をめぐる議論が長引いているため。市は今年一月、急性期医療をやめ慢性期のリハビリ病院化が望ましいとの考えをにじませた改革案をまとめ、外部の有識者会議に議論を委ねたが、会議では意見が錯綜(さくそう)。四月の答申予定が、数カ月延びることになった。

 退職した三人はいずれも市大出身。後任について市大病院脳神経外科の山本勇夫部長は、「出身医師が処分されたので協力しないわけではない。将来どういう病院にするか分からない状態では医師を行かせることができない」とする。

 センターは全体でも医師定数三十二人に対し、五月末段階で二十五人。循環器系内科の医師が四月からいないなど問題を抱える。臨床研修制度が導入された影響で各病院で医師が不足していることも一因となっている。