横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー (2005.6.1)

 

http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/kumiai-news/weekly050531.htm 

 

 

横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー       2005.6.1

 

もくじ

●教員集会、開催される

●労使協定の問題@ 時間外休日労働協定(36協定) 教員の位置づけが必要

●労使協定の問題A 裁量労働制 任期制のための差別に利用するな!

●労使協定の問題B 勤務時間問題 教員のみ9時間拘束は不当

●定期昇給分 調整

●中田市長発言「大学の中身に口を出したことは一度もない」をめぐって

一楽・市田氏抗議文と市の回答

一楽氏・市田氏抗議文(4月25日)

抗議文に対する市の回答(今月11日)

一楽氏・市田氏反論(今月15日)

●おわびと訂正

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

教員集会、開催される

 

 26日、金沢八景キャンパスで、組合主催の教員集会が開催されました。

 執行部が、現在までの経緯と現状を報告したのち、今後の方針や運動のしかたについて、活発な討論が行なわれ、率直な意見交換が行なわれました。

 就業規則や労使協定をめぐるさまざまな問題について、検討が行われましたが(重要な問題については、下記の記事に解説)、全体を通じて、労働組合としてわたしたちの権利をきっちりと主張し、粘り強く交渉を続けていくべきことが確認されました。

 

 組合執行部に対しては、当局との交渉のしかたや情報伝達活動の充実について、多くの提案がなされました。

 当執行委員会は、組合に寄せられている大きな期待に応えるべく、寄せられた意見を吸い上げながら、活動のしかたの工夫を今後も続けてまいります。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

労使協定の問題@ 時間外休日労働協定(36協定)

 教員の位置づけが必要

 

 就業規則は、当局が5月2日までに全事業場の就業規則を労働基準監督署に提出したことにより、いちおう成立したものとみなさざるをえません(もちろん、今後、その改訂のための闘いが必要です)。

 しかし、実際の勤務のためには、さらにいくつかの《労使協定》が締結されなければなりません。労使協定は、使用者と労働者代表(事業場の過半数代表者・過半数組合)のあいだの合意によって結ばれるのですから、わたしたちが認められないものは、成立しません。

 当局が用意している労使協定のうち問題があるのが、すでに何度か本紙も触れているように、1)時間外・休日労働に関する協定(36協定)、2)休憩時間に関する協定、3)裁量労働制に関する協定です。

 そのうち、36協定は、残業手当を支給するためにも必要なものですが、当局案に不備があるため締結に至っていません。3月末日に当局が提示した文案では、教員についての規定がありません。つまり、当局の当初案は、「教員には時間外・休日労働を命じない」、すなわち、形式上は時間外・休日労働が行なわれないことにしたいというものでした。 

 実際には教員は、入試業務等により休日に出勤しなければならないことが多く、また、時間外勤務も多いのですから、これは無理な協定です。

 そのため、現在、組合は、教員の時間外・休日労働について36協定に載せ、また、教員が行なう時間外・休日の入試、その他の必要な業務が、きちんと時間外・休日労働とみなされるようにすることを要求して、交渉を続けています。

 当局側が必要な修正をすれば、締結できる見込みです。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

労使協定の問題A 裁量労働制

任期制のための差別に利用するな!

 

 労使協定として、専門型裁量労働制についての協定も用意されていますが、これは現状ではまたく合意できません。

 当局は任期付き教員についてのみ裁量労働制を導入し、任期付きではない教員については裁量労働制を適用しない方針です(就業規則第39条第4号)。

 これは、任期制に合意した教員と、そうでない教員のあいだに格差を設けようという、差別制度です。

 任期制の導入のために、このような差別を行なうことは不当・違法であり、断じて許すことはできません。現段階で裁量労働制の労使協定に合意することは、このような差別を容認することを意味しますから、到底できることではありません。

 わたしたちは、このような差別を行なわないことを強く要求し、また当面は裁量労働制の適用がなくとも教員の研究・教育・勤務について従来どおり自主的裁量を認めることを要求し、粘り強く交渉を続けていきます。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

労使協定の問題B 勤務時間問題

 教員のみ9時間半拘束は不当

 

 労使協定として「休憩時間の一斉付与の例外」についての協定が、当局から提案されています。

 一斉に休憩時間を取ることに意味はありませんから、この協定も締結したいところですが、協定の前提として定められている、教員の勤務時間の問題が未解決です。

 当局の決めた規定では、教員の勤務時間が午前8時45分から午後6時15分となっており、他の職員よりも1時間長く9時間30分拘束されることになっています。

 当局は「5限の授業があるため」としていますが、それならば、5限の授業のない場合にはどうするのかなど、問題は尽きません。

 当局も、協議のなかで、運用のしかたによって調整したいとしていますが、問題が残らないように、適切な勤務時間運営となるよう、また、その「運用」をきちんと文書化するよう、要求して交渉を続けます。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

定期昇給分 調整 

 

 2月に催された、教員の労働条件についての説明会において、2005年度の賃金には、定期昇給分を加味するとの説明がありましたが、当執行委員会では、4月に定期昇給のあるはずの教員から、昇給がなされていないむねの指摘を受けております。

 この点を当局側(人事担当課長)に問い合わせたところ、今年度の定期昇給分については、4月・5月においては給与に反映することができないが、給与には加味する。6月以降の支払いで調整したい、との回答を得ています。

 事務局(経営企画室)はすでに、このことに関する通知を出したようです。

 また、その他、賃金に関する疑問や不安、問題など、個別のケースでもけっこうですので、お気づきの点があれば、ご相談ください。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

中田市長発言

 「大学の中身に口を出したことは一度もない」をめぐって

一楽・市田氏抗議文と市の回答

 

 4月5日に行なわれた横浜市立大学入学式における来賓挨拶のなかで、中田宏横浜市長は、「市長として、市大の中味に口を出したことは一度たりともありません。」と述べました(『横浜市大新聞』2005年4月5日付け報道)。

 この発言は事実と異なるとして、市大教員の一楽重雄・市田良輔の両氏が、同月25日付で抗議文を提出し、これに対する市の回答が、今月11日に示されています。

 この間のやりとりは、今回の市大「改革」のありかたを考えるうえで重要と思われますので、抗議文提出者のコメントも含めて掲載します。

 現在と今後の市大のありかたを考えるためにも、これまでの経緯において、市長と市行政が、どの程度、市大に関与したのか、市長側が言うように大学が自主的に、今回の改革内容をはたして決めたのか、明らかにする必要があります。

 なお、ここに掲載するいずれの文書も、当組合としての見解を示すものではありません。

(次面以下に、各文書掲載)

 

おわびと訂正

 

 前号(19日付け)の記事において、教員集会の日付を、「26日」とすべきところ、「24日」と誤記した箇所がありました。お詫びして訂正いたします。

 また、前号(19日付け)において、中西新太郎氏の論文「改革のための改革が変質させる大学-横浜市立大学「改革」の現状と問題-」(『現代社会と大学評価』創刊号,10日発行)を掲載するにあたり、発行主体たる大学評価学会年報編集委員の許諾を得ている旨、表記することを怠りました。編集委員会に対してお詫びいたします。

 

=======================================================

発行 横浜市立大学教員組合執行委員会

236-0027 横浜市金沢区瀬戸222

Tel 045-787-2320 Fax 045-787-2320 

mail: kumiai@yokohama-cu.ac.jp

HP: http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

(一楽氏・市田氏抗議文-4月25日)

 

抗 議 文

平成17年4月25

中田宏横浜市長殿

 

横浜市立大学研究院 

教授 一楽重雄

教授 市田良輔

(前理学部数理科学科所属)

 

 去る4月5日に挙行された横浜市立大学入学式の祝辞の中で、貴殿は次のような発言をしておられます。しかし、これは事実と大きく異なるものであり、厳重に抗議するとともにすみやかに訂正されることを要求いたします。

「市長として、市大の中味に口を出したことは一度たりともありません。」

私たち前理学部数理科学科に所属していた人間にとって、とりわけ、上の発言は許せないものであります。

 市大の大学改革は確かに学長が市長に提出した「新たな大学像」に基づいたものでありますが、「新たな大学像」には「数理情報コース」の設置が明言されていました。実際には、その後の横浜市大学改革本部が設置した「コース等検討プロジェクト委員会」による具体案作成の段階で数理情報コースが削除されました。

 このことは、貴殿が日本数学会理事長にあてた回答(市広聴第900665号)の中でも、「コースについては、編成数や内容を大学の案を参考にしながら設置者として更に検討することにしました」と明言し、「数理情報コースについては、数学の専門家を養成するためのコースの必要性は低いと判断し、専門のコースの設置は見直しました」と述べています。

これは「市大の中味に口を出したこと」を中田市長自らが認めていることに他なりません。一部の教員の協力があったことで、このことを決定した責任が大学に移るということはあり得ません。

以上のことから、中田市長の発言は事実をゆがめるものであり、発言の撤回と訂正を求めるものです。正確な情報の発信は民主的行政の基本であることは、市長自ら折に触れ主張されているとおりです。文書による速やかな回答を求めます。

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

(抗議文に対する市の回答-今月11日、中山雅裕横浜市都市経営局大学調整課長)

 

横浜市立大学研究院

一楽重雄様

市田良輔様

 

 45日に行われた市立大学入学式における市長祝辞については、次のように考えております。

 市長の市大大学改革に係わる指示といたしましては、あくまで改革の方向性や進め方に関する基本的な考え方を示したものであり、大学改革の詳細な内容について指示をした経緯はありません。

 ご指摘の市立大学国際総合科学部におけるコース設定につきましては、横浜市大学改革推進本部事務局(事務局長:大学改革推進部長)に大学の教員を中心に構成した「コース案等検討プロジェクト部会」を設置して検討し、「国際総合科学部(仮称)コース・カリキュラム案等報告書」(以後、報告書とします。)としてまとめ、横浜市大学改革推進本部(本部長:副市長)において承認・決定しました。その後、報告書に基づき文部科学省への申請手続きを進め、平成16921日、市長名で正式に届出を行ったものです。

 市長は意思決定過程の考え方の方針を決めたものであり、市長自らがコース設定などについて直接の指示をしたことはありません。

 また、ご指摘のありました日本数学会理事長あての文書における表現につきましては、先に述べましたようにあくまでも大学を中心に組織的に検討した結果を踏まえて、最終的な決定権者としての判断をこのように表したものでございます。

 以上、今後とも横浜市立大学の円滑な運営にご理解とご協力をいただくようお願いいたします。

 

平成17511

横浜市都市経営局大学調整課長 中山雅裕

 

--------------------------------------------------------------------------------

 

(一楽氏・市田氏反論 5月15日)

 虚偽は虚偽を生む -抗議文への横浜市の回答への反論-

 

 先日、市長に宛てた抗議文に対して、横浜市からの回答が届いた。ただし、もしかすると、横浜市からの回答ではなく「横浜市都市経営局大学調整課長 中山雅裕」からの回答かも知れない。

 この回答では、次のように言っている。

 

「市長の市大大学改革に係わる指示といたしましては、あくまで改革の方向性や進め方に関する基本的な考え方を示したものであり、大学改革の詳細な内容について指示をした経緯はありません。」

 

 誰が大学の詳細な内容を市長個人が指示すると考えるだろうか。

 「市長として、市大の中味に口を出したことは一度たりともありません。」と言う意味は何か。

 これは「市大の中味は大学が考えたのであって、横浜市が中味にまで口を出していない」ということを意味しているのである。

 中田市長個人が市大改革の詳細について指示しているかどうかが問題なのではない。今回の大学改革において、大学の中味を「大学が決めたのか、それとも、市が決めたのか」が問題なのである。「中田市長が直接指示をしたか、副市長が指示をしたのか、あるいは、担当部長が指示をしたのか」が問題なのではない。

 組織の長である市長として口を出していないということは、当然、副市長以下の部下も口を出していないことを意味する。

 特に入学志望者の半減などから、今回の改革の内容を誰が決めたのかが、これから問題になる。それを見越して、中田市長は「自分に責任はない」と言いだしたのではないか。あるいは、市長が大学の中味にまで口を出すことは「大学の自治」に反し違法であることから、「口を出していない」と強弁しているのではないか。

 中山課長は、次のように続ける。

 

「ご指摘の市立大学国際総合科学部におけるコース設定につきましては、横浜市大学改革推進本部事務局(事務局長:大学改革推進部長)に大学の教員を中心に構成した「コース案等検討プロジェクト部会」を設置して検討し、「国際総合科学部(仮称)コース・カリキュラム案等報告書」(以後、報告書とします。)としてまとめ、横浜市大学改革推進本部(本部長:副市長)において承認・決定しました。」

 

 つまり、副市長は「口を出すどころか、その責任において決定した」のである。だけれども、「副市長は市長とは別人であるから、市長が口を出したことにはならない」ということなのだ。市長が、副市長のしたことに責任を取らないなどということが、どこの世界で通用するのだろうか。

 そして、最後は虚偽である。

 虚偽の発言を弁護するためには、やはり、虚偽が必要なのだ。

 

「また、ご指摘のありました日本数学会理事長あての文書における表現につきましては、先に述べましたようにあくまでも大学を中心に組織的に検討した結果を踏まえて、最終的な決定権者としての判断をこのように表したものでございます。」

 

 「大学を中心に組織的に検討した」というのは、まったくの虚偽である。大学の教員は個人として協力したかも知れないが、大学という組織は検討にまったく加わっていない。大学ではなく横浜市が検討したのであるのは、直前の文章に述べられているとおりである。それを、あたかも大学が検討して決めたかのごとく思わせるために、わざわざ、虚偽を書きこんでいるのである。

 これまでも、実質的に市民を欺く「大学の教員を中心に検討した」という表現を横浜市は何度もしてきたが、これは言葉としては虚偽とは言い切れない面があった。大学ではなく、一部の教員が個人として検討に協力したことは事実であるからである。しかし、このように表現すれば、事情に詳しくない多くの人々は、当然「大学が検討した」のだと思ってしまう。

 横浜市大学改革推進本部というのは、横浜市の組織であって大学の組織ではない。大学教員の協力を得て横浜市が決定したことは、決して、大学が決定したことではなく、横浜市が決定したことである。

 中田市長自ら主張するように、民主主義の基本は情報公開であって、市民を欺き虚偽の情報を回答する行政は決して民主主義と相容れるものではない。

 改めて、市長祝辞に対して抗議をするとともに、その訂正を求めるものである。