横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー (2005.6.9)

 

 

組合員の皆さん

新しい週報をお送りします。
全員読めるように、テキスト形式にしましたので、
グラフは表示されません。また表も読みにくいかもしれません。
この部分は組合HPにも掲載しますので、そちらでご覧ください。

随 清遠

------------------------------------------------------------
横浜市立大学教員組合週報
                
 組合ウィークリー      2005.6.9

もくじ
学生の質問状への回答 「改革」についての組合の見解(1面)
大学当局、任期制同意状況を公表 同意の教員、新学部でも半数を下回る(1〜2面)

「ご質問への回答」(学生の質問状への回答)(3〜5面)

=======================================================
発行 横浜市立大学教員組合執行委員会
236-0027 横浜市金沢区瀬戸22番2号
Tel 045-787-2320    Fax 045-787-2320
mail to : kumiai@yokohama-cu.ac.jp
教員組合ホームページ http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm
=======================================================
--------------------------------------------------------------------

学生の質問状への回答 
「改革」についての組合の見解

 ある学生から、大学改革について各関係者の見解を調べる一環として、
当組合の立場についても質問がありました。
 組合書記長名において回答しましたが、当組合の大学「改革」に対する立場を示し、

あわせて今後の学生との連帯に関する考えかたを公表するよい機会ですので、本号において公開します。
(3面以下をご覧ください。)


大学当局、任期制同意状況を公表
同意、新学部で半数下回る

 最近、大学事務当局は、任期制への同意状況として、
任期制を受け入れた教員の先月30日現在の人数を、下記のように発表しました(次面へ)。

                               
教員数     同意数            同意割合
国際総合科学部(注)    167人    79人                47.3%
医学部                        227人    163人             71.8%
付属病院                     93人       64人            68.8%
センター病院                129人      104人          80.6%
                                616人     410人         66.6%

 「国際総合科学部」(注)において任期制に同意した教員の数は半数を下回っています。
 当組合執行部は、3月末の段階で、任期制に同意した教員の数は
金沢八景キャンパスにおいては半数を下回っていると推定していましたが
(本紙324日号)、現段階においても基本的にその状況は変わっていないことが明らかになりました。
 病院の教員と医学部教員の多くの部分は医師であり、
他の教員と条件が大きく異なっていますので、
そこですら7割程度しか同意がないのは、むしろ予想を下回るものです。
 なお、この件は今月6日付け『東京新聞』神奈川版でも
「統合の新設学部『同意』半数届かず」と報じられています。

(注)当局発表の「国際総合科学部」教員数は、金沢八景キャンパス勤務の専任教員(135名)に、
舞岡キャンパス(14名)と鶴見キャンパスの教員(18名)を加えた数となっています。

このうち国際総合科学部の授業を担当していない教員は学部教授会メンバーではありませんので、
同教授会の構成員は144名です(学部長口頭報告による)。なにゆえ医学部・病院以外の
全教員すべてを「国際総合科学部」に含めているのか不明です。
 なお、新しい国際総合科学部には、旧3学部(商・国際文化・理)教員のほか、
総合理学研究科・経済研究所・木原生物学研究所の教員、および新任教員が含まれています。

ご質問への回答

・・・・殿

 貴殿の質問に対し、以下のように回答いたします。
 学生のみなさんに当組合の立場をご理解いただき、また、大学の現状について
正確な認識を得られるための材料としていただければさいわいです。

2005
年5月23
横浜市立大学教員組合
書記長 随清遠

Q1.今回の改革に賛成or反対、またはどのように思うか?

 これまでの大学には、研究教育水準をさらに高め、またそのための制度・環境を整備することなど、
果たされるべき課題はたしかにあったと考えていますし、そのための改革であれば、
また、わたしたち教員の声を尊重するような適正な手続を踏まえたものであれば、
そして、教員・学生の権利をじゅうぶんに尊重したものであれば、
組合としても積極的に参加・協力したいと考えています。
 しかし、今回の「改革」は、こういった課題を正しい方向で解決しようとするものとはいえませんし、
そのプロセスも適切なものではありませんでした。
そして、教員の権利を著しく侵害する一連の制度変更を含んでいます。
 そのプロセスについて言えば、今回の「改革」は、はじめから市政主導の上位下達のかたちで行なわれ、
教授会などにおいて表明された教員の意思は無視されました[1]。また、具体的な改革内容の決定も、
閉ざされた場においてなされ、公開の議論すら、はばまれました。
学生の意思がまともに問われることもありませんでした。
 また、そもそも「改革」が必要であることの理由についても、まともな説明が行なわれたことはありません。
市長の諮問機関として設置された「横浜市立大学のあり方懇談会」は、
2003
年、市大が「1140億円の累積負債」を抱えているなどと、
センセーショナルな「答申」をしていますが、これはまったく虚偽に満ちた、
あるいは不正確きわまりない表現です。
実際には、横浜市がおもに大学病院建設や医療関連設備の整備のために
市債を発行した残高が1140億円となっていたのであり、
病院や関連諸施設は横浜市民の貴重な資産となっているものです。
したがって、この資産の存在を考慮するならば、
横浜市立大学が赤字を抱え込んでいるかのような誤解を与える表現は慎重に回避されるべき性格のものです[2]
「市大は赤字を抱えているから合理化が必要だ」というような誤ったイメージが、
一連の大学再編の地ならしに利用されたのであり、ほんとうはなぜ大学が
このようなかたちで「改革」されねばならないのか、まともな説明はなされていないのです。
 改革の内容も、多くの、賛成できない点があります。
 大学運営制度についていえば、「改革」のなかで定められた定款(大学のありかたの大枠を定めるもの。
市会で制定)、学則など一連の制度規定は、教授会の権限を著しく制限し、
他方で大学運営体制を徹底的にトップダウン体制化し、大学の自治と、
民主的運営制度を葬り去ろうとしています。このことは、大学の教育・研究活動に、
現場を担う教員の意見が正しく反映されなくなることを意味しており、
当然、教育・研究に悪影響を及ぼします。教員ばかりではなく、学生の権利と意見もまた軽視する体制となっています。
 また、教員の勤務条件の面では、ご存知のように、
任期制・年俸制・教員評価制度を中心とする、新しい制度が導入されようとしています。

 当組合は、勤務条件にかかわるすべての制度を決して変更してはならないと
主張しているわけではなく、合理性のある変更であれば認める方針を持っています。
また、教員の既得権益に固執しているのではなく、労働者としての権利が尊重され、
かつ公正な教育研究の発展のために必要な制度が保障されることを求めているのです。

 しかし、現在、大学当局が提示している新制度は、
その公正さ、透明性・客観性において大きな疑いがあり、また、
任期制を受け入れさせるために、それを受け入れない教員を差別するきまりを設けるなど、
実に不当・不公正なものであり、またそればかりではなく、違法です。
 こうした「改革」は、主体的に教育・研究に取り組もうとする教員に
大きな不満を持たせることになっています。
ここ1〜2年のあいだに多数の教員が流出していることの原因について、組合は特定しておりませんが、
このような「改革」のありかたへの不満があったとしても不思議ではありません。
 また、商・国際文化・理3学部の統廃合と、それに伴うカリキュラムの改変においても、
現場の声と、幅広い議論を無視した拙速で、一方的な改革が裏目に出ており、
かずかずの問題を引き起こしています。今年の入試において、
受験倍率が昨年までに比して著しく低下したことも、
こうした改変と無関係と考えることはできないでしょう。
 このように問題を多く抱えた一連の大学再編をもし「改革」というなら、
これはあってはならない改革だと言わざるをえません。

Q2.学校運営に対して望むこと

 まず、大学運営の自律性の強化と、民主化を実現すべきです。学校教育法にあるとおり、
教授会の重要な事項についての審議権を回復し、これを中心に、
大学構成員の運営参加と発言権を保障すべきです。もちろん教員ばかりではなく、
学生の自主的な参加の権利の保障もたいせつですし、
教員・学生・職員のパートナーシップを構築し、
自律的な大学運営を実現することが目的とされるべきでしょう。
 次に、改革の結果については、「改革」を主導した市、大学改革推進本部(すでに廃止)、
あるいは、市長に改革の方針を提言した「横浜市立大学のあり方懇談会」メンバーは、

この「改革」の結果に責任を取るべきです。大学構成員の自主的改革の道を排除して、

トップダウン方式で「改革」を行なった以上、「改革」の結果には必ず責任を取らなければなりません。

Q3.今後の横浜市立大学の生徒に望むこと

 大学の主人公として、大学の変化に関心を持ち、また学生同士、話しあって、
主体的な意見を形成し、表明してほしいと思います。学生の意見が反映されない
改革には大学の将来はありません。そして学生のみなさんと教員のあいだで大学を
あるべき方向に変えるための連携ができればと願っています。
 当組合としても、学生との対話や連携を重視したいと思います。

Q4.今の一年生の授業のカリキュラムについてどう思うか?

 ここでも学生の権利を軽視し、現場の教員の意見を無視した無理な改革が、
さまざまな問題を生んでいると思われます。
 たとえば、英語教育では、TOEFL500点取得を進級要件とする制度については、
その非現実性が教員の側からすでに指摘されてきました。このまま強引に進められれば、

学生の進級・卒業等に関して、大きな問題が生じると予想されます。

Q5.横浜市に対する要望、意見など

 おもに以下のとおりです。
 一連の改革の結果について明確に責任を負い、
他方、大学の自主的・民主的な運営を保障すること。
大学の自治と民主的運営を阻害する、定款を見直すこと。
教員の労働条件については、法人が誠実に労働組合と交渉することを尊重すること。


[1]
当時の教授会の意見・決議は、下記の当組合サイトでご覧ください。
 http://homepage3.nifty.com/ycukumiai/index.htm
[2]
市大債部門別の起債累積額を示すグラフは組合HPでご覧ください。
病院建設・医療関係の起債は、大学債全体の8割以上を占めていました。