福島大陸上部名伯楽の川本監督 HP封印 『河北新報』2005年6月15日付 (2005.6.18)

 

http://www.shutoken-net.jp/2005/06/050617_1kahoku.html

 

 

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『河北新報』2005年6月15日付

 

福島大陸上部名伯楽の川本監督 HP封印

 

 

 陸上の女子短距離界で多くの名選手を輩出した福島大陸上部の川本和久監督

(47)=人間発達文化学類教授=が、自身のコーチング理論などを公開して

きたホームページ(HP)を、4月に閉鎖していたことが分かった。大学が国

立大学法人化したのを受け、「企業秘密を守るため」が理由だという。法人化

した大学の研究成果の管理や社会貢献の在り方をめぐり、一石を投じそうだ。

 

 HPは「川本和久研究室」のタイトルで、1999年に開設。コーチングに

関する川本監督の考え方などを掲載し、競技関係者らから年間10万件前後の

アクセスがあったという。

 

 現在、HPには閉鎖した事実とその理由だけを掲載。これまで自由に閲覧で

きたコーチング理論などはすべて削除されている。

 

 HPの中で川本監督は「陸上競技をしっかりみて、福島大の名前を表に出す

責任が生じた。つまり、企業として頑張る必要が出てきた。残念だが、このサ

イトも閉鎖して企業秘密を守ろうと思う」と強調。川本監督の理論や選手育成

の方法などを「企業秘密」とする見解を示している。

 

 これまで高校の陸上選手らに公開してきた福島大陸上部の練習見学について

も、「これからは、よほどのことがない限り、お受けしない」と宣言している。

 

 このHPを参考にしてきた陸上関係者は複雑な思いだ。宮城県内の30代の

高校陸上部顧問は「川本先生の理論は難解だが、レベルを落とすなどして高校

生の練習にも応用できた。考えがあってのことだろうと思うが、閉鎖は残念だ」

と話している。

 

 福島大陸上部は、8月の世界選手権代表に選ばれた女子短距離の丹野麻美

(2年)や同走り幅跳びの池田久美子(スズキ)ら多くの優れた選手を育てて

いる。福島大はほかの国立大と同様に、昨年4月に法人化した。

 

 川本監督は「閉鎖はあくまで個人の判断だ。理由はHPに掲載した通り」と

話している。

 

<川本和久氏(かわもと・かずひさ)>

 佐賀県伊万里市出身。筑波大大学院でコーチ学を専攻後、1984年に福島

大教育学部に赴任し、陸上部監督。91年から1年間米国留学し、カール・ル

イスのコーチのトム・テレツ氏からコーチ技術を学んだ。帰国後、日本記録保

持者の女子100メートルの二瓶秀子、同400メートル障害の吉田真希子ら

を育てた。