一方はアメリカが怖い、他方は選挙が怖い 五十嵐仁の転成仁語 (2005.6.29)
http://sp.mt.tama.hosei.ac.jp/users/igajin/home2.htm
一方はアメリカが怖い、他方は選挙が怖い
自民党は昨日の総務会で、郵政民営化法案の修正案を多数決で了承し、党議拘束をかけることを確認しました。修正に反対していた小泉首相も、「いい知恵を出してくれた」と受け入れる考えを明らかにしています。
郵政法案の焦点は、自民党が造反をどれだけ抑え込めるか、衆院での採決での攻防に移ろうとしています。
総務会は全会一致を慣例としてきましたが、今回は異例の多数決でした。武部勤幹事長は総務会終了後、採決時に党議拘束に反した議員を処分すると脅しをかけています。
自民党は、公明党の了承が得られ次第、衆院郵政民営化特別委員会に共同提案するつもりのようです。ただし、採決の時期については、自民党が7月3日の東京都議選投票日前の衆院通過を目指しているのに、公明党は都議選後の採決を主張してます。
昨日の自民党と公明党の幹事長・国対委員長会談でも合意できませんでした。どうして、このような意見の違いがでてきたのでしょうか。
自民党が早く衆院を通したいと考えているのはサミットがあるからです。ここで日米の首脳が顔を合わせれば、小泉首相はブッシュ米大統領からこう聞かれるでしょう。「例のあれ、どうなった?」と……。
郵政民営化は、毎年10月に出される対日「要望書」でも明記され、これを実現することをアメリカに約束してきた経緯があります。小泉さんは胸を張って、「着々と進んでいます」と言いたいところでしょう。
そのためには、衆院くらい通しておかなければならないというのが、政府・自民党側の都合です。アメリカの目が怖くて、強行突破しようとしているわけです。
そんなことは公明党の知ったことではありません。もし、混乱のうちに採決されれば、いかにも無茶をやっているように有権者の目に映ります。
公明党としては、都議選前でのこのような混乱は避けたいというわけです。公明党は「選挙上手」で知られていますが、それだけになおさら、不利になるような材料は減らしたいと考えているのでしょう。
公明党の関係者がブッシュ大統領に会うわけでもありませんから、「アメリカから何を言われようと知ったことではない。それよりも選挙だ」というわけです。公明党が都議選前での採決を避けようとしているのは、選挙が怖いからです。
いずれの場合にも、優先されているのは自分たちの都合です。国民の生活にとって郵政民営化が是か否か、という本質的な問題からの判断ではありません。
訳の分からない波にもまれて、また重要問題が漂流を始めたということでしょうか。郵便局は将来どうなってしまうのか、という国民の不安を置き去りにしたまま……。