西村慎吾発言に見る靖国側の本音 澤藤統一郎の事務局長日記 (2005.7.9)

 

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西村慎吾発言に見る靖国側の本音    

世間は狭いようで広い。いろんな分野にいろんな人がいる。稀ならずに、不思議な人、脱帽せねばならない人に出会う。どうしてこの人この問題にこんなに熱心に、と目を瞠らねばならない人が少なくない。

そんな一人に、辻子実さんがいる。本業は何であるか、しかとは知らない。建築士だと伺ったことがあるが、本人が本業については語らない。この方が語るのは、もっぱら靖国神社であり、政教分離である。「侵略神社ー靖国思想を考えるために」(2003年9月刊 A5判 304頁 新幹社 3,000円)の著者として知られる。

この著書は、「台湾、朝鮮、満州、南洋諸島…、日本のアジア侵略と共にあった神社の歴史的意味を考える。写真200点を収録」というもの。靖国神社が軍国主義的存在であることは周知の事実だが、靖国の思想が植民地支配と一体化していたという記録である。情報収集の意欲と能力に感服する。その能力で、「小泉・石原靖国参拝違憲訴訟(東京)」原告団の事務局長として多忙を極める。本業に手を染める暇はなさそう。

靖国関係の政治的動向や運動については、この人が細大漏らさず情報を収集してくれる。とりわけ、私には情報源のない神社本庁・右翼など、アチラ筋の考え方やイベントについて教えてくれる。便利このうえない。以下は、その辻子さんの受け売り。

7月7日に「英霊にこたえる会」が、日比谷野音で「小泉首相の公約の八月十五日靖國参拝を支持する国民集会」を開催した。主催者発表で1500人が集まり、集会後日の丸と「草もう決起」の旗を掲げてデモ行進をしている。

「英霊にこたえる会」のホームページに次の記事が載っている。
『民主党の西村議員は、靖国神社参拝支持者を代表して演説。
 「戦争に負けると相手国が言いたいことをいう。今度戦争をする時は、負けないようにしよう」と。』

実は、彼の演説はこの程度のものではなかったようだ。共同の配信記事は以下のとおり。
『来賓として参加した民主党の西村真悟衆院議員は「村山富市元首相の謝罪談話を前提にして、靖国神社で不戦の誓いをしてはならない。近い将来、わが国は戦争を受けて立たなければならないこともあり得る。場所は東シナ海、台湾海峡だ。その時は勝たなければならず、そのために靖国神社を忘れてはならない」と訴えた。』

背筋が寒くならないだろうか。「靖国神社で不戦の誓いをしてはならない」と言うのだ。「近い将来の中国との戦争に勝たねばならない。そのための靖国神社」だと言う。なるほど、靖国神社は平和への祈りにふさわしい場所ではない。戦勝祈願と敵への復讐を誓うのにふさわしい場所なのだ。

靖国参拝は、戦争への反省でもなく非戦の誓いでもなく、むしろ自国の戦争を賛美し、再戦と戦勝への誓いにほかならない。歴史的経過からも現状からも、当然そのように受け取られる舞台装置なのだ。

西村発言が靖国陣営の本音ではあろうが、ここまで露骨に本音を述べる政治家が現れていることに慄然とせざるを得ない。