つくる会教科書を採択 栃木・大田原市 出席委員、全会一致 「東京新聞」 (2005.7.13)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050713/eve_____sya_____001.shtml 

 

 

つくる会教科書を採択 栃木・大田原市

出席委員、全会一致

 栃木県大田原市教育委員会(小高一紘委員長)は十三日、同市立の中学校で来春から使う歴史と公民の教科書について、「新しい歴史教科書をつくる会」主導の教科書(扶桑社発行)を採択した。同市の教科書採択協議会が十二日、つくる会の教科書を選定したのを受けたもの。十月に同市に合併する黒羽町、湯津上村をも含め、来春からの四年間、大田原市立の中学校計十二校(生徒数約二千三百人)で使われる。東京都立と愛媛県立の中高一貫校や養護学校では既に採択されているが、市区町村立中では初めて。

 小沼隆教育長は会見で、扶桑社の両教科書について「歴史の全体の流れを理解しやすく日本文化の誇りと愛情をはぐくみ、先人の努力の内容も記述されている」とし、「最も適切と判断した」と述べた。全委員五人のうち出席した四人が全会一致で決めた。十二日の同市採択協議会でも委員七人が全員一致で合意したという。

 この日の市教委は、冒頭の委員長あいさつの後、非公開。会場に詰めかけた採択に反対する市民ら約五十人から「こんな強引なやり方でいいのか」「本当に子どものことを考えているのか」と、抗議の声が上がった。

■昨年から攻防激化 支持、批判勢力

 四年ぶりとなる中学校教科書の全国一斉採択に向け、「新しい歴史教科書をつくる会」の支持勢力と批判勢力は昨年六月ごろから、早くも活動を活発化させていた。

 まず、「つくる会」と同じ一九九七年に発足した自民党の議連「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」が活動を再開。昨年六月に主催したシンポジウムでは特定の教科書名は出さないものの、藤岡信勝・つくる会副会長や、つくる会会員の地方議員がパネリストとして参加。衛藤晟一議員が「平成十三(二〇〇一)年の教科書採択で勝つことができなかった。これからが戦いだ」と気勢を上げた。

 一方、教科書を発行する扶桑社が検定合格前の「申請本」を教職員らに配布し、文部科学省に三度にわたって管理の徹底を指導された。

 こうした「つくる会」側の攻勢に、反対派の市民団体や在日外国人団体も警戒を強めている。

 教育委員会に「つくる会」支持者が多いとされる東京都杉並区では連日、市民が署名活動や同教委への要請行動を展開。大韓民国青年会中央本部も全国の教委に不採択を求める要請書を送るなど、採択期限の八月末に向け、さらに激しい攻防が予想される。