横浜市立大、昇進システムは大学自治を踏まえるべきである(2005.7.19)

 

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2005年07月19日

横浜市立大、昇進システムは大学自治を踏まえるべきである

大学改革日誌(永岑三千輝氏)
 ●最新日誌(7月15日)

7月15日 昨日は教員組合の総会があった。教員組合員がこの間、増えているそうである。大学教員の教育研究条件、労働・生活条件をきちんと大学教員にふさわしく確保・確立していくには、任期制問題とも絡んで、教員組合への結集が必要なことがますます認識されているということなのだろう。

 大学独自の自立的自治的な運営と、教育研究条件、労働条件・生活条件は密接に関連する。その関連性を具体的に深く認識することが必要だろう。

 大学教員の労働と生活の条件、それは教育と研究にどれだけ専念できるかに深く関わる。その重大な要因の一つが昇進である。昇進(助手から准教授へ、准教授から教授へ)は、経済的要因であると同時に身分的要因(名誉・勤労意欲、精神の自由などに深く関わる)である。

 業績の達成(勤労意欲、教育研究意欲とその発揮、その物的保障としての賃金条件・勤労時間条件・勤務形態の自由度の要件などが前提条件をなす)、それにもとづく昇進が公正に大学の自治・学問の自由を保障する中で行われなければならない。昇進できるかどうかは、労働条件・生活条件と直結し、教育研究条件と密接に関係する。いつの時点で昇進できるかによって、生涯賃金も大きく変化する。昇進が公正に行われるかどうかは、教員全体のモラールに影響する。教育研究の質に影響する。

 したがって、昇進がどのような機関で、どのようなメンバーで、どのような基準で決められるかは、決定的に重要なことである。だからこそ、これに関しては、教員採用人事と並んで、教授会の重要審議事項であった。

 ピアレヴューのあり方と内実(研究活動では、Readの研究者DBを見ると、近い分野であればあるほど、どのような質と量の仕事をしているかわかるが、専門が遠くなればなるほど不明になる、つまり専門が細かく深くなればなるほど厳密には専門家にしかわからない、専門家の評価・ピア・レヴューの重みが見えてくる)が公正・適正で、精神の自由・学問の自由を保障するものでなければならない。上意下達を旨とする精神構造と精神の自由・学問の自由の精神構造とはまったく違う。科学の研究教育において、上意下達が支配すれば、学問の自由、精神の自由など存在しない。

 機関、メンバー、基準、その情報の公開は、自由で公正な競争のための基本的前提条件である。学長諮問委員会の人事委員会の権限の範囲、それと教授会の権限の範囲、などをきちんと文章化して確定し、公開しておかなければならない[1]。

 また、そうした具体的な規則ができる前には、これまでの3学部を統合した国際総合科学部の場合、しかるべき諸条件を組み合わせた昇進条件の確定を早急に行い、過渡的措置として、移行に伴う混乱や行政当局による制度整備の不十分さ・無責任さによって、大きな不利益をこうむる人が出ないような対策を講じる必要がある。

 かりにこのまま行政当局(現在の法人と大学の重要人事はすべて「上から」「外から」の任命であり行政当局による直接的任命に他ならないが)に任命されたものだけが、原則・ 基準や手順を未公開のままにして、人事政策のすべてを内内に、水面下で取り仕切ることになれば、それは、大学(法人と大学)への行政の直接介入以外の何ものでもないだろう。

 その意味では、大学の重要人事(学長・学部長・研究科長)に関する大学における自治的自立的決定のシステムが早急に構築されなければならないだろう。

 民主主義の観点から常識的には構成員による選挙である。この選挙制度はそれはそれでいろいろ問題のあることは確かだ。衆愚政治の現象、レベルの低い利益(誘導)政治もしばしば見られる。大学運営に求められる資質・実績の発見と検証は容易ではないだろう。しかし、民主主義的選挙による競争によってしかるべき組織の長を選出するオープンなシステムの真の意味での充実度こそは当該組織(大学)の生命力・活力を発揮する上で重要であろう。それは、外部からの任命、行政的任命と本質的・決定的に違ったものとして大学(大学自治)においては特に重要であろう。

 自立的独立的組織としての教員組合は、全学部で選出された代議員と連携しつつ、昇進等身分保障・労働生活条件・教育研究条件の安定的確立(たとえば持ち駒負担が多くては教育のための研究時間も不足するなど)のためにも、問題提起すべきものだろう。教員組合の運動方針には、この基本線が明確に規定されていると考えるが、それが昨日の総会で採択された。

 

投稿者 管理者 : 20050719 00:09