「医療過誤」の答弁書 ‖ 横浜市は説明責任果たせ 神奈川新聞の社説2005/07/17 「脳卒中から助かる会」最新情報 (2005.7.27)

 

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20050727(水曜日)

神奈川新聞の社説 -- 2005/07/17

「医療過誤」の答弁書 横浜市は説明責任果たせ

 皆様御存知の通り、横浜市立脳血管医療センターで発生した内視鏡手術での医療過誤事故で、奥様が重度障害を負った亀田さんが賠償を求める訴訟を起こされました。
 これに対し、横浜市が横浜地裁に提出した答弁書・「原告の主張は事実誤認」 が波紋を広げています。
 2005年 7月17日付けの神奈川新聞の社説では、次のように論じています。
 「医療過誤」と認定した同市設置の調査委員会の報告書とまったく食い違っている。さらけ出された自己矛盾について、横浜市民や市会に対して説明する義務を果たすべきだ。
 詳しくは、 
http://www.kanalog.jp/column/editorial/entry_9487.html
 をご覧下さい。

 

神奈川新聞の社説

2005/07/17 18:08:32

 

「医療過誤」の答弁書

 横浜市立脳血管医療センターで発生した内視鏡手術での医療過誤事故で、重度障害を負った女性患者の家族から約二億八千万円の賠償を求める訴訟を起こされたことを受け、同市が横浜地裁に提出した答弁書が波紋を広げている。「医療過誤」と認定した同市設置の調査委員会の報告書とまったく食い違って、「原告の主張は事実誤認」と断じているからだ。

 今回の訴訟とは別に県警に刑事告訴された執刀医らを相手にした訴訟であれば、こうした形で争うことも想定できよう。しかし、訴訟の主体は横浜市である。同市は報告書を踏まえて医療過誤を認め家族に謝罪し、関係した職員二十五人に停職などの処分を下し、センター長交代などの更迭人事も行った。こうした処理の根拠を答弁書は真っ向から否定している。さらけ出された自己矛盾について、横浜市は市民や市会に対して説明する義務を果たすべきだ。

 中田宏市長は「食い違いはない。市として非があることは今もって変わっていない。総体的な市の責任は明らかにした通りだ」と説明。一方で「市が認めたものとそれに見合う賠償金が社会的な常識の中にはあるが、今回の裁判は常識外の金額」とも付け加え、一方的に非を認めれば満額の支払いを迫られかねない、との懸念ものぞかせた。

 しかし、「公金支出の抑制」を理由としたところで、矛盾を押し切るのは困難だ。例えば、処分を受けた職員が答弁書を根拠に「市の対応は不当」との市人事委員会への申し立てや、訴訟を起こした場合はどうするのか。外形的な事実から言えば、答弁書は市が直接まとめたものであり、報告書を優越する。「不当処分」との判断が下されかねない。今回の対応が、自らの手で自らの首を絞めていることに気付くべきだ。

 また、提訴に至るまでの過程で、和解へ向けて誠意を尽くしたのかどうかも問われる。いったん示した賠償額を引き下げたり、賠償後の退院を強要するなどといった、患者家族を刺激し挑発するようなやりとりはなかったのか。市側はきちんと検証して市民や市会に説明すべきだ。実質的な決裁者は誰なのかなど、答弁書作成のプロセスにも注目が集まっている。少なくともこうした情報の公開なくして、公金を支出し訴訟へ臨むことへの理解は得られまい。

 裁判官は法定で示された証拠や証言を判断のよりどころとする。特に民事訴訟においては、原告と被告の双方が有利な判決に向け、さまざまな手を尽くす。今回の答弁書もその一側面であろう。横浜市という全国最大市の見解として示されたことにも重みがある。今回の訴訟は一医療事故をめぐる賠償の是非にとどまらず、「行政の一貫性の軽重」をも問う貴重な前例となるのは必至だ。

posted by カナロコ編集部│社説│この記事へのコメント(0) | トラックバック(0)