医師不足、専門手術できず 横浜市立脳血管医療センター 「東京新聞」 (2005.7.30)
http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20050730/eve_____sya_____002.shtml
医師不足、専門手術できず
横浜市立脳血管医療センター
国内有数の脳卒中専門病院「横浜市立脳血管医療センター」(横浜市磯子区)が、深刻な医師不足から専門的な外科手術を行えない状態が続いていることが分かった。昨年発覚した医療ミスで処分された医師が次々と退職した事情が背景にあり、手術が不要なリハビリ病院に転換する案も浮上。同病院が医師補充を求めた別の医療機関は派遣をためらい、市民からは「患者がしわ寄せを受けている」と市の責任を問う声が上がっている。
同センターでは一昨年七月、脳神経外科の三人の医師が経験のない内視鏡手術を試みて女性患者に重い後遺症が生じる医療ミスがあり、手術の十カ月後の昨年、内部からの指摘などで発覚。三人は停職処分などを受けた後、今年三月から五月末に相次いで退職した。ところが、後任の医師を確保できず、六月から脳神経外科は一人体制に。専門的な手術は、外部の医師の応援がなければ行えず、緊急手術にはまったく対応できなくなった。
同センターは以前、くも膜下出血や脳内出血などの手術を毎月十件前後のペースで行っていたが、六月は簡単な手術を二件実施しただけ。救急患者の受け入れも六月は百三十六件で前年同月より三割も減少。七月一日には、くも膜下出血で運び込まれた救急患者を別の病院に転送せざるを得ない事態も起きた。
市は、退職した医師の派遣元である横浜市立大学病院などに医師派遣を要請。市大病院側は、市が同センターのリハビリ病院への転換を検討していることを指摘、「センターの今後がどうなるか分からないから」と医師の派遣に応じなかった。
リハビリ病院へと転換する案は、市が今年一月にリハビリ施設不足などを理由に、見直しの方向性を示し、有識者の検討委員会に議論を委ねていた。ところが、市内外の医療関係者や患者から、発症時など緊急の際に必要な対応をする「急性期医療」における同センターの実績を評価する声が続出。検討委の議論も「当面は急性期医療を提供することが望ましい」とあいまいな結論にまとまりつつある。
こうした状況から最近まで医師の確保が難航。今月二十九日になって北里大学医学部から十月と十一月に一人ずつ計二人の医師を派遣してもらえる見通しになったが、それまでは緊急手術などに対応できない状態が続く。民事訴訟にも発展した医療ミスの“後遺症”と、センターの機能をめぐる市の施策の迷走が市民へのしわ寄せを生む形となっている。
同センターは、全国で三番目、関東で唯一の脳卒中専門病院として一九九九年八月に設立。後遺症で寝たきりにつながりやすい脳卒中の患者に、発症時の手術から回復期のリハビリまで一貫した治療を行ってきた。