勝負がついたNHKの政治圧力問題 天木直人「メディアを創る」 (2005.8.2)

 

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勝負がついたNHKの政治圧力問題

 

 政治的圧力によってNHK幹部が番組を変更したことは、当初より誰の目にも明らかであったのに、やれ安倍、中川両議員がNHKの職員に会った、会わない、会ったのは事前だった、いや事後だった、朝日の記者の取材方法が悪い、隠し録音は信義に反する、などと、論点をそらす議論がまた蒸し返されようとしている。しかしその論議も、8月1日に発売された月刊現代9月号の「政治介入の決定的証拠」という記事で終止符が打たれた。

この記事は朝日新聞の内部資料に基づいて書かれた可能性が強い。従って、これに怒ったNHKや朝日新聞批判者が、朝日の意図的な漏洩であると怒り、自民党は、これからは朝日の取材には応じないといった子供じみた対応を見せている。

 

しかしこの問題は、政治的圧力が確認されたことで決着がついたのだ。私は別に朝日の肩を持っているわけではない。仮に朝日の取材やその後の対応に批判される面があったとしても、だからどうだというのか。その事によって安倍、中川両氏の、政治家としての軽率、傲慢な行動が許される訳はなく、政治家におもねるNHKのジャーナリズム精神の放棄が容認されるものでもない。

8月2日の日刊ゲンダイ紙上で、「政府介入の決定的証拠」の執筆者であるフリージャナリスト魚住昭氏が次のごとく述べている。私は魚住氏の言う通りであると考える。

「・・・そこには松尾武・元NHK放送総局長や安倍晋三、中川昭一両議員が朝日の取材に答えた言葉が一言一句まで記されている。お読みになれば、従軍慰安婦問題をめぐるNHKの特集番組が政治的圧力によって改変された事実がはっきりとおわかりになるだろう・・・それを見れば松尾元総局長や中川議員は政治介入の事実を疑う余地がないほど明確に認めている。後になって『記事は自分の発言をねじ曲げたものだ』(松尾氏)とか、『当方から放送内容の変更や中止に関しては一切言っていない』と言いつくろうのは無責任極まりない態度である。安倍氏の姿勢も決して褒められたものではない。彼はテレビや雑誌のインタビューなどで、朝日の記者が『夜遅くにいきなり』やってきて(事実は夕方6時ごろだった)、夫人が『主人は風邪で寝込んでいます』と言ったのに『家内を脅かした』、とか『5分間にわたってインターフォン鳴らし続けた』、などと言いたい放題のことを言ったが、取材記録(これは録音されている)にはそんな形跡は全くない。ごく常識的な取材だったと断言していい・・・

いつのころからか、この国の言論空間は虚言・妄言の類に支配されるようになった。 週刊新潮は政治介入を告発したNHK職員と朝日記者を何の根拠もなしに、『変更プロデューサー』、『極左記者』と決めつけ、彼らを社会的に葬り去ろうとした。少なくとも事実を重んじる雑誌なら自らの行為を恥じたほうがいい。でなければいつかきっと読者に見放されてしまう。」