石原都知事 やっぱりフランス語は不得意?「太陽の季節」記念碑に誤訳 「週刊朝日」2005/8/19・26合併増大号(2005.8.18)
「自分の代表作のタイトルのフランス語訳を間違えるなんて笑止千万。しかも間違った文言を記念碑に彫り込もうというんですから」
そう指摘するのは、フランス語やカナダ文化が専門の小畑精和(よしかず)明治大学教授だ。
石原慎太郎東京都知事の芥川賞受賞50周年を記念して、今秋、神奈川県逗子市に文学記念碑が建てられる。その名も「太陽の季節」。記念碑制作者のホームページには、石原氏に「太陽の季節」の英訳を尋ねたところ、わざわざフランス語訳を引き合いに出し、
〈「Saison de la Soleil(セソン・ドラ・ソレイユ)だから、「Season of the Sun」だろう〉
と答えたと書かれている。ところが、このフランス語訳に明らかなミスがあると小畑教授は言うのだ。
「"de la Soleil"ではなく、"du Soleil"です。フランス語には男性名詞と女性名詞があり、冠詞を使い分けます。Soleilは男性名詞だから、男性冠詞の"du"を使うのが正しい」
石原氏といえば、現在フランス語で物議を醸している張本人。昨年10月、「首都大学東京」の支援組織の設立総会で、
「フランス語は数を勘定できない言葉だから、国際語として失格しているのもむべなるかな」
と発言。これに「フランス語を侮辱する発言をした」と、前出の小畑教授、フランス人学校校長らが猛反発。7月13日、東京地裁に提訴する事態となった。
しかし、実は石原氏は若い頃、かなりフランス語に入れ込んだ形跡がある。
A LA SILK
Je vois LE PETIT SALTANBANKE
(サーカスにて/小さな道化師を見た)
『十代のエスキース』から
若き日の石原氏がシュールな絵と共に記したフランス語の詩だ。この詩をフランス語辞書編集専門家に解説してもらった。
「フランス語の力はかなりのものですが、最初の一節は間違い。SILKのスペルは、正しくはCIRQUE。彼独特のセンスで、わざとそう表記しているのかもしれませんが、文法的にみれば、男性名詞なのに女性冠詞を使っているのも間違い。正しくはAU CIRQUEです」
10代の頃の作品でもあるし、ちっちゃな間違いはご愛敬かもしれないが、ではなぜ「大好きな」フランス語に牙をむいたのか。
小畑教授らの提訴に対抗するかのように7月22日、フランス人学校の土地・建物に関する税申告を怠ったとして、過去5年分、約1億円を支払うよう、都が課税通知したと一部新聞が報道した。しかしこの通知自体は1年前のものだっただけに、「なぜ今頃。報復のリークでは」との憶測も呼んだ。
愛した人に振られたからって悪く言うような、度量の狭い人なのでしょうか?
本誌・中釜由起子/白石義行