「君、国を売り給う勿れ」: 純ちゃんの「逃げる」「屈する」郵政民営化 田中康夫【奇っ怪ニッポン】 「日刊ゲンダイ」2005年4月21日付(2005.8.26)

 

http://gendai.net/contents.asp?c=025&id=19001 より

 

 

 

・・・御存知、「屈しない」指導者を自負する宰相・小泉純一郎氏の話題です。大言壮語していたものの蓋を開けてみれば、指導者にとって不可欠な「逃げない」姿勢を返上し、道路公団問題は丸投げ状態。ファミリー企業に天下る面々の“焼け太り”役人天国を形成しちゃいました。

 而して純ちゃんは、郵政民営化に至っては「逃げる」だけでなく「屈する」迷指導者振りを発揮しています。早い話が“売国奴”を演じているのです。与謝野馨政調会長の血縁に当たる与謝野晶子女史は来世で慨嘆している筈です。「君、国を売り給う勿れ」と。

 何故って、今や1千兆円と世界一の借金大国ニッポンは、全ての紙幣が紙切れと化すアルゼンチン状態に陥っても不思議ではないのです。にも拘らず辛うじて持ち堪えているのは、タンス預金も含めた個人貯蓄が1千5百兆円は存在するであろうから、という仮定に立っています。

 然れども早晩、郵政民営化後に株式も放出すれば、ハゲタカファンドを始めとする「鬼畜米英」企業が競い合って買い求めるでしょう。簡易保険と郵便貯金を合わせて4百兆円にも上る一般市民の“虎の子”は、白い肌をした輩の運用下に置かれるのです。

 一連のフジテレビジョン騒動を紐解く迄もなく、株主が経営に関与するのが資本主義です。従来、簡保や郵貯の運用益は小中学校や老人施設の建設費用に充当してきました。今後は、ハゲタカファンドの皆々様への利益還元ならぬ利益搾取に向けられるのです。

 その瞬間、ニッポンは国家たり得なくなるのです。アルゼンチン以上に悲惨な末路です。にも拘らず、護送船団・記者クラブ加盟の大新聞社は、裏が取れる話ではない、との「言い訳」を掲げて、斯くなる未来を隠蔽し続けています。

 国を売り渡す。これぞ愛国者・純ちゃんが思い描く「構造改革」なのでしょう。【田中康夫】