「意見広告の会」ニュース297 【1】衆院選 各党への要請と返信(共産党・社民党)、【2】首大情勢 その後(充実の内容「事務屋のひとり言」・都立大学に何が起きたのか――総長の2年間――茂木 俊彦・同書について「たまらん」)(2005.9.8)

 

 

「意見広告の会」ニュース297

*ニュースの配布申し込み、投稿は、
  qahoujin at magellan.c.u-tokyo.ac.jp まで、お願い致します。
   
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** 目次 **
1 衆院選 各党への要請
1−1 事務局から各党への要請
1−2 返信 共産党
1−3 返信 社民党

2 首大情勢 その後
2−1  充実の内容「事務屋のひとり言」 東京都の事務員のひとり言です。
      http://blog.goo.ne.jp/sugi37/
2−2 岩波ブックサーチャーより
     都立大学に何が起きたのか―― 総長の2年間 ――  茂木 俊彦
2−3 同書について「たまらん」
      http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~hatsumi/index2.html


***
1 衆院選 各党への要請
 *以下のような要請を解散前5党に送りました。
 *現在までの返信2通をそのまま掲載致します。

1−1 事務局から各党への要請
私どもは、「国立大学法人法・意見広告の会」と申します。
このメールは、各政党とともに、文科関係の前職・現職の国会議員の方々にお送りして
おります。

 私どもは本年2月3日、多くの方々の支援・賛同金によって、「読売新聞」「毎日新
聞」の全国版に「国立大学の授業料値上げに反対する」意見広告を掲載いたしました。

 ご存知の通り、多くの国立大学法人は本年4月からの授業料を、年額52万800円
から53万5千800円に、1万5千円値上げしました。文部科学省令により「授業料
標準額」が1万5千円値上げされたことに基づくものです。

 「授業料標準額」に関わる本年度の予算審議の過程で、衆参両院の予算委員会や文科
・文教委員会では、議員の方々、政府関係者が「国立大学の授業料は既にこれほど高く
なっていたのか」「自分たちの学生時代には年額1万2千円だった、3万6千円だった
」等の驚きの声をあげました。我が国の大学進学のための家計負担は、先進諸外国と比
べても恐るべき高額に達しております。

 少子化の流れは、現在の日本社会がかかえる重大な問題です。その少子化の原因の一
つに、日本の教育費の高騰があげられていること、多くの識者の共通の認識でありまし
ょう。その教育費負担の高額化は、いま現在の小さなお子さんにかかる教育費だけの問
題ではありません。高等教育に関わる負担には、各家庭の将来への希望ないし不安が関
わっていると思います。能力ややる気があっても、大学や大学院を卒業するのに負担が
大きすぎる、そんな社会では出産・子育てに躊躇する人々が増大するのも当然です。

 貴党を含め多くの政党が、政策マニフェストの中に「少子化対策」「子育て支援」を
うたいあげておられます。私どもは、少子化対策は現在の子育て支援だけでは不十分で
、将来の希望につながるものでなければ有効ではないと考えます。能力とやる気があれ
ば誰でも高等教育を受けられるのだ、経済的理由によって進学を断念する必要はないの
だ。このような「希望」は、直接の利益者のみならず国民に普遍的に分配されます。そ
れは、将来社会全体の明るさに関わるものであるからです。

 どうぞ貴党のマニフェストに、私学を含めた大学の授業料の値下げ、家計負担の軽減
化をお加え下さい。貸与型の奨学金は学生や家計負担者にとって魅力のあるものではあ
りません。やる気と能力のある若者に高等教育の機会が均等に与えられる、そんな希望
のある社会が日本を活性化します。

 幸いに、大学の学費負担の軽減化のための国家的な経費は、さほど膨大なものではあ
りません。もちろん軽減化の規模にもよりますが、仮に些少なものであっても、それは
このような時代にあって国民に希望を与えます。希望の効果は多少の費用に換えられる
ものではありません。

 繰り返しますが、日本の高等教育にかかる家計負担は、世界標準から言っても異常な
ほどに高額です。貴党が高等教育への家計負担の軽減化のための政策をマニフェストと
して宣言して下さることを、願ってやみません。

 なお当会は、全国の国立大学関係者を中心に、電子メールによる「意見広告の会ニュ
ース」を発行しております。貴党からの何らかの形でのご回答は、当会のニュースに掲
載させて頂きたく存じます。

                          8月29日
                      「意見広告の会」事務局

1−2 返信 共産党
貴団体が国立大学の授業料値上げに反対する活動をすすめておられることに心から敬意
を表します。
 ご指摘のように、高等教育への家計負担の軽減化をはかることは、「少子化」問題の
克服を含め、日本の現状と未来を考えるとき、きわめて重要な課題だと思います。
 日本共産党は、8月11日、「総選挙にあたっての訴えと7つの重点公約」とともに
、「衆議院選挙にのぞむ日本共産党の各分野の政策」(分野別政策)を発表しました。
これらの日本共産党の政策・公約は、いわゆる政権公約ではなく、国民の運動と力をあ
わせて政治を動かすために奮闘する立場から「野党としての公約」という形でまとめた
ものです。
このなかでは、子どもに生きる希望をはぐくみ、若い世代が自立して人間らしく成長で
きる社会をつくるうえでも、国民の立場にたった大学をめざすうえでも、学費負担の軽
減が切実な問題であると考え、この課題をいくつかの「分野別政策」でとりあげていま
す。その具体的な内容は、以下のとおりです。

11、教育基本法の改悪に反対し、子どもに生きる希望をはぐくむ教育の実現をめざす
30人学級、学費無償化へ 国際的に遅れている教育条件を改善する
 学費負担の軽減……「学費の無償化」の国際人権規約を批准し、大学と高校の学費無
償化と給付制奨学金の導入にふみだします。教育扶助・就学援助の拡充をすすめます。

14、若い世代が自立し、人間らしく成長できる社会に
学費負担を軽減し、奨学金制度を拡充する
 国際人権規約は「高等教育の漸進的な無償化」をうたい、ドイツやフランスでは学費
は基本的に無償です。奨学金制度でも、欧米は返済不要な給付制を柱にすえています。
 ところが日本では、初年度納付金(入学金・授業料など)が国公立大学で80万円、
私立大学では平均130万円をこえました。公的奨学金も返済が必要な貸与制しかあり
ません。「お金がなくて進学をあきらめた」という声が出るほど、教育の機会均等
がふみにじられています。
 この原因は、大学予算の水準が、欧米の半分以下とあまりに低いことにあります。0
5年度予算でも、国立大運営費交付金が98億円削減され、授業料標準額は1万5千円
も値上げされました。私立大学の経常費にたいする国の助成金の割合も、1980年の
29・5%をピークに現在12%前後にまで落ち込んでいます。
 「高等教育の漸進的無償化」条項を批准していない国は、条約加盟151カ国のうち
、日本、マダガスカル、ルワンダの三ヶ国だけです。国連人権委員会は、日本政府に同
条項の批准を勧告しました。来年の六月が回答期限であり、日本の対応が問われていま
す。
 日本共産党は、「高等教育の漸進的無償化」条項の保留を撤回させ、学費負担の軽減
をめざします。当面、国立大運営費交付金をふやして国立大学費の引き下げや学費減免
制度の拡充、私立大学生への学費助成や私立大学の学費減免への特別助成制度の創設な
どにより私立大学生の負担軽減、希望者全員にたいする無利子奨学金支給、給付制奨学
金の導入をめざします。

16、学術・文化・スポーツの自由で豊かな発展のために
「学問の自由」を守り、国民の立場にたった大学改革をすすめる
 大学予算を大幅にふやし、学費負担の軽減、教育研究条件の抜本的整備をはかる……
欧米諸国の半分に満たない高等教育予算を大幅に増額し、国立大学の狭く老朽な施設の
改善をはじめ、大学の教育研究条件を抜本的に整備します。国会で決議されている、私
立大学の経常費2分の1国庫補助を実現します。私学助成のあり方として、「ひも付き
」ではない一般補助を充実させます。
 すべての国民に高等教育の機会を保障するため、国際人権規約(社会権規約)の「高
等教育の漸進的な無償化」条項(13条2項C)の留保を撤回し、国民の学費負担の軽
減をめざします。
 国公立大学の法人化を契機にした予算の一律削減を中止し、運営費交付金の増額をす
すめ、学費の引き下げと教育研究の基盤的経費の充実をはかります。私立大学生への学
費助成や私立大学の学費減免への特別助成制度をつくります。
 なお、以上の内容を含む「分野別政策」の全文は、日本共産党中央委員会ホームペー
ジ(
http://www.jcp.or.jp/seisaku/2005/05syuuin_kaku_bunya.html
)で公表しています。
2005年8月30日  日本共産党中央委員会 学術・文化委員会

1−3 返信 社民党
                                                         
2005年9月5日
国立大学法人法・意見広告の会事務局
                                                       
社会民主党政策審議会

                       
「貴党・マニフェスト」について
 8月29日にご質問ありました、「どうぞ貴党のマニフェストに、私学を含めた大学の
授業料の値下げ、家計負担の軽減化をお加え下さい。貸与型の奨学金は学生や家計負担
者にとって魅力のあるものではありません。やる気と能力のある若者に高等教育の機会
が均等に与えられる、そんな希望のある社会が日本を活性化します。」との件につきま
して、以下の通り回答させていただきます。皆様方のご提案の趣旨を党の政策に活かし
ていく所存ですので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

                                   


1.「我が国の大学進学のための家計負担は、先進諸外国と比べても恐るべき高額に達
しております
」、「少子化の原因の一つに、日本の教育費の高騰があげられている」という認識は私
たちも共通のものと考えています。マニフェストでは、「5.質の高い教育を保障しま
す」として、「教育予算の対GDP比5%達成で20人学級と教職員の30万人増を実
現します。奨学金・育英制度を拡充するとともに、私学助成を充実します。」というこ
とを盛りこんでいます。

2.マニフェストは830日の公示日には全国に届けなければならないものですが、総
務省届出パンフレットの扱いですので、その前の週に行われる総務省の事前審査に完成
原稿に出さなければなりません。したがって、事実上今回の場合25日頃が最終締め切り
でした。したがって、せっかくの貴重なご提案であると思いますが、すでに事前審査、
記者発表、印刷・製本、ホームページへの掲載が終わった段階ですので、残念ながらご
要望にはお応えできなかったと率直に申し上げさせていただきます

3.そのうえで、マニフェストとは別に、マニフェストに掲載できなかったものについ
て、「社民党総合政策ガイド2005」という形で作成をしホームページに掲載いたし
ております。そこでは、教育政策の中で、次のような主張を盛りこんでいます。基本的
に皆様方の趣旨は活かされているのではないかと思います。

「社民党総合政策ガイド2005」(抜粋)
   
(2)高等教育の無償化に向け、国際人権規約(社会権13条)の留保を撤回しま

   
 国際人権規約(社会権)第13条は、高等教育について「無償教育の漸進的な導
入により、能力に応じ、すべての者に対して均等に機会が与えられるものとする」こと
を定めています。日本はこの高等教育無償化条項を「留保」していますが、これは同規
約締約国151ヵ国(05年4月現在)中、日本、マダガスカル、ルワンダの3国のみ
であり、日本も早期に留保の撤回を表明し、無償化を目指します。
   
(3)高等教育の質の充実のためにGDP1%水準の達成を目指します
   
 例えばアメリカの高等教育への財政支出はGDP0・9%程度であるのに対して
、日本は0・5%にすぎません。高等教育の基礎研究の立ち遅れを改善するため、当面
GDP1%水準の達成を目指します。)
   
(4)多様な教育を育むため私学助成の拡充強化に努めます
   
 私立学校と公立学校は、公教育を担う車の両輪です。しかし、両者の教育条件に
はいぜん容認しがたい格差が存在し、格差の是正を急がなくてはなりません。長びく不
況の中で私学に通う子を持つ保護者の経済的負担も限界に来ており、私学助成制度の拡
充強化を行ないます。
   
@授業料減免制度の抜本拡充
   
A30人以下学級実現のための補助
   
Bバリアフリー化のための特別助成
   
C私大等の教育・研究の充実へ経常経費に対する2分の1助成
   
(5)機会均等を保障できる奨学金・育英制度を充実させます。
   
 奨学金制度の抜本的な充実は、教育の機会均等を保障するための不可欠の前提で
す。奨学金・育英制度を充実させます。無利子奨学金の拡充を図るとともに、選考基準
については経済的条件のみとする改善も行います。同時に、返還義務のない給費奨学金
制度、国が債務保証をする学費・生活費の無利子ローン制度を創設します。また、アジ
アを中心に留学生30万人の奨学制度を設立します。

  
(連絡先)
100-8981千代田区永田町2−2−1衆議院第一議員会館地下2階
社会民主党政策審議会事務局長 横 田 昌 三
TEL:03-3592-8345 FAX:03-3580-8068 メール:yokota@sdp.or.jp


2 首大情勢 その後
2−1 充実の内容「事務屋のひとり言」 東京都の事務員のひとり言です。
      http://blog.goo.ne.jp/sugi37/
*目次と記事の一部を紹介します。
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都立大改革の正体
大学管理本部の仕事
再リセットからの挽回
フランス語は失格か?

*記事の一部
それは8月1日から始まった。
2005-08-04 /
都立大改革の日々

 2003
年8月1日は事務屋にとっては静かな日でした。
夜遅くまで仕事をしていた私に、疲れた表情の南雲部長が話しかけてきたのが最初です

「なんか訳のわからんことを言われたよ」
「大変そうですね」
その時にはそれで終わってしまいました。

それからは何週間か、何度も人文学部の方の部長室のドアが閉じられ、様々な先生が出
たり入ったりしていたのが見えました。

次に動いたのは、2003年9月25日。「東京都立大学人文学部抗議声明」が張り出され
たのです。
「なんか凄いことになってる」
事務側へのインパクトは、この声明が最初でした。
さらに4日後の9月29日。 「『同意書』についての都立大学総長意見 」が出されま
す。

新聞が報道し、事務室のあらゆる電話に各所から問い合わせの電話が鳴り始めました。
ご存知の通り、この同意書の内容が凄い。とても事務のプロが考えたとは思えない文章
です。
「何やってるんだ、大学管理本部は」
呆れ返る言葉が現場を占めました。

総長の声明より先に出たことからもわかるように、人文学部が真っ先に大学管理本部に
異議を唱えました。もちろん、改革案が人文学部を直撃するからなのですが、それにし
ても、他の学部の動きが悪い。
特に経済学部、それも近代経済学の諸先生方の中には、「これで大学もちっとはマシに
なる」と人文削減案を奨励する声すら聞こえたほどです。

しかし、この頃から事務の現場にも流れ始めた大学管理本部の改革案は、ぎょっとする
内容ばかりでした。
「これは都立大、潰す気だぞ」
事務屋には事務屋の誇りがあります。「新宿でふんぞり返ってる人間に、勝手なことさ
れては困る」そういう考えの人も結構いたのです。
冷笑する近経の先生方を見て「そんなこと言ってて、いいのかしら?」と危機感を覚え
る日々でした。

2−2 岩波ブックサーチャーより
 
都立大学に何が起きたのか―― 総長の2年間 ―― 【岩波ブックレット】 茂木 俊

定価 504円(本体 480 + 5%) 200596日発行

2003
81日は,東京都立大学と,のちに「首都大学東京」と命名されることになる新
大学にとって特別な日となった.大学の意見は聞かず,まともに検討もせず,もっぱら
都立大学を破壊しようとする都政のねらいはどこにあったのか.総長として渦中にあっ
た著者が,その経過をたどりながら,自らの考え,思いを綴る.


2−3 同書について「たまらん」
      http://www.bcomp.metro-u.ac.jp/~hatsumi/index2.html
98日】
 茂木俊彦都立大学元総長による『都立大学に何が起きたのか総長の2年間』(岩波
ブックレット)という冊子が刊行されました。
 さっそく読んでみましたが、おおかた予想に違う内容ではありませんでした。
 石原都政による都立大学破壊の結果、たしかに大学はずたずたにされたが、総長をは
じめとする大学側の抵抗によって将来に向けた〈芽〉は残し得た、というのが茂木元総
長の公式見解になるかと思います。
 これを全面的に否定する気は私にありません。
 ただ、首大就任を肯った者のなかからもすでに脱出者が続出しており今後も当分これ
は続くだろうこと、そしてその前提として、少なからぬ首大教員たちの新大学に向けた
士気がきわめて低調であること、そうした点には目をつぶっているようです。

 ここで提示された〈総括〉とは別なところでこの文章は個人的に感慨深いものです。
 
 末尾近く、『日本の論点2005』に掲載された茂木氏の文章が自己引用されていますが
、そこでは一昨年11月に逝去された岡部仁さんの――葬儀の際にご遺族から紹介された
――
言葉が引かれています。
《文学は人間にとって何なのだろうか。僕は最近になってようやく分かったような気が
するのだよ。文学は人間が生きる、そのための実学なのだね。》
 都立大学、そしてその独文学専攻が死亡宣告された後の現在の状況などについて、岡
部さんと話すことができたらよかっただろうに、とつい思ってしまいました