郵貯 民営化で赤字に追い込む 仕掛けは3事業解体 分社で発生 400億円消費税負担巨額保険料 銀行不始末穴埋め 「しんぶん赤旗」(2005.9.9)

 

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2005年9月9日(金)「しんぶん赤旗」

郵貯 民営化で赤字に追い込む

仕掛けは3事業解体

分社で発生 400億円消費税負担

巨額保険料 銀行不始末穴埋め


 民営化すると郵便貯金事業は十年後に六百億円の赤字になる――この問題の仕掛けは、郵便、郵便貯金、簡易保険の三事業をバラバラにすることから始まります。

 郵政事業は三事業が一体だからこそ黒字経営も維持されてきました。郵政民営化はそれをわざわざ解体し、郵便事業会社、郵便貯金銀行、郵便保険会社と、独立の会社を設立した上で、それぞれが郵便局会社(窓口会社)に業務の委託手数料を払う仕組みに変えてしまおうとしています。

 そこで新たに発生する手数料への消費税がそれぞれの経営に影響を及ぼすことになります。その額は、民営化の初年度と見られる二〇〇七年度で、郵便貯金銀行は四百十一億円、郵便保険会社は三百二十四億円にもなります。

 これには生田正治郵政公社総裁も「一つの会社を上下二つに割っちゃう、郵貯カンパニーと窓口会社の二つに割ってしまう、そのゆえに民間では起こりえない消費税が七百億円(簡保も含む)もでてしまう」(五月二十七日の衆院郵政特別委員会)と理不尽さに疑問を呈さざるを得ませんでした。

 もう一つは預金保険料の負担です。これは銀行や保険会社がみずからの破たんに備えて積み立てているもので、国庫ではなく金融業界の共同の積立金の金庫に入るものです。

 実はこの積立金は現在三・五兆円の欠損を抱えるなど破たん状態です。

 民営化した郵貯銀行は、そこに十年間で合計約九千百億円もの預金保険料を支払う予定になっています。

 銀行の不始末のツケを郵便局の利用者に負担させるようなもので、これによって預金保険料の値下げができるようになるなど、喜ぶのは銀行業界です。

 民営化しなければ生まれない理不尽なコスト負担で、郵貯事業は赤字に追い込まれた上に、それが結果として大銀行の負担軽減にもつながる―。郵政民営化が誰のためのものか、その一端がここにも表れています。


■民営化で株利益?

■使い道にも問題 無駄遣いを放置

 郵政民営化をめぐり、小泉首相は“民営化されたNTTも政府保有株の売却益などで国の収入が増えた”と宣伝しています。

 政府保有株の売却とは、政府が民営化当初は100%保有していた株式を売り払うことです。国が株を持つのはNTTやJRが公共性のある企業だからです。その株を手放すことは政府として自慢できることではありません。

 売却益の使い道にも問題があります。NTTでいえば十三・九兆円の売却収入(一九八五年度から二〇〇四年度までの累計)が上がっています。国の財政の補てんに寄与する形で使われるべきですが、十兆円は一般会計に繰り入れられ、公共事業に使われました。小泉政権になってからも約三兆円が一般会計に計上されています。採算の合わない不要・不急の事業にもつぎ込み、新たな借金と国民負担を生み出す格好です。

 小泉首相は“改革、改革”といいながら、関西空港二期工事など無駄遣いにはメスを入れようとしません。財政のことをいうならまず無駄遣いを改めるべきです。