9.11総選挙の歴史的意味に関する若干のコメント――(1)現行憲法体制の否定、(2)平成版翼賛選挙、(3)従米独裁政権  森田実政治日誌(2005.9.12)

 

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2005年森田実政治日誌[333

9.11総選挙の歴史的意味に関する若干のコメント――(1)現行憲法体制の否定、(2)平成版翼賛選挙、(3)従米独裁政権

 

「哲学的な眼で人間社会の諸事を考察する人びとにとって何よりも驚くべきことは、多数者が少数者に容易に支配されていることである」(デビット・ヒューム)

 

 今回の総選挙の歴史的意味について、二、三のポイントを指摘しておきたい。

 (1)小泉首相は、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」(憲法第41条)を否定して衆院解散・総選挙を実施した。結果として大勝したことにより、首相を国会を上回る最高権力者の地位に引き上げた。これは現行憲法体制の否定である。小泉首相は憲法に拘束されない大権力者になって、暴走するおそれがある。

 (2)今回の総選挙を、各選挙区の現場から見ると、マスコミは完全に小泉政権の広報機関化してしまっている。マスコミは小泉批判情報を一切カットし、小泉賛美の情報のみを流しつづけてきた。

 もう一つは、大規模に展開された企業選挙である。企業のパワーが今回の総選挙で爆発した。マスコミ界と経済界が、小泉首相と自公両党を勝利させた。

 この政治権力とマスコミ界と経済界と宗教界その他の社会組織が総結集して選挙を行うという構図は、昭和171942)年4月30日に東條内閣によって行われた「翼賛選挙」と非常によく似ている。今回の選挙は「平成版大政翼賛選挙」である。小泉首相は東條英機以上の大権力を手にする可能性がある。

 (3)1933年3月末のドイツにおける総選挙でナチスが大勝したときの選挙とも酷似している。ヒトラーはこの選挙で大権力をつかみ、暴走する。

 小泉政権の場合は、ヒトラー・ドイツと同じではない。米国の従属下での限定された独裁政権となり、もっぱら米国政府に奉仕するとみられている。340兆円の郵貯・簡保資金を、民営化=市場開放することによって、米国政府へ巨額資金の供給を行う方向へ動くのではないか、と私は危惧している。

 今回の総選挙で日本国民が選んだ道は、憲法違反、翼賛選挙、従米独裁国化である。過ちは正さなければならない。