首都大学東京、またもや露呈した法人運営の不透明性と機能不全(2005.10.11)

 

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20051011

首都大学東京、またもや露呈した法人運営の不透明性と機能不全

東京都立大学・短期大学教職員組合
 ●手から手へ、2364号(2005年10月6日)

またもや露呈した法人運営の不透明性と機能不全
オープン・ユニバーシティ来年度基本計画をめぐって

1.はじめに
 今年4月、法人による一方的な研究費配分が問題化しました。まずは首都大に就任しなった教員に傾斜的配分を行わないというものでした。組合の抗議もあり研究分担者としては配分を受けられることになりましたが、法人の差別的配分方針自体は完全に改まってはいません。さらに大学の実態を踏まえないで、各教員に「実験」・「非実験」の区別を設けて研究費を配分しようとしたため、なかには昨年の半分しか基礎的研究費の配分が行われなくなる学科・専攻もありました。加えて科研費配分書類作成をめぐっては、文科省・日本学術振興会の指示を無視して、学長ではなく理事長名で申請する方針が出されました。文科省の指摘でようやく法人は誤りを認めましたが、経営の優位を誇示する態度がこのような事態を招きました。
 そして先頃、学系教授会などで報告されたところによりますと、オープン・ユニバーシティ(OU)の基本計画策定をめぐって法人による一方的な方針の押しつけが行われ、教員と事務室に混乱がおきています。ここには首都大法人の運営上の問題点が集約的にあらわれているのです。 
  
2.事実経過
 OUは本年6月に開講しましたが、受講者が最低数に達しないため開講されなかった講座も少なくないといわれています。また開講されても受講者数が少ない状況が続いているようです。そのため事務職員と教員が開講のための努力を続けています。
 9月下旬、来年度基本計画案を作るためOU検討部会が開かれました。それにむけて事前に「法人の方針」なるものが示され、「300講座実施」というノルマが提示されてきました。今年は150講座実施となっていましたが、OU所属教員とはいえ、皆基本的には従来通り短大、学部、大学院の授業を担当しており、必ずしも教員の実態に即したものとはいえませんでした。来年は実施数が倍増することになりOU所属教員にさらに多くの授業負担が課せられることになります。また学部・学系にも講座の割り当てが機械的に降りてきました。教員側は、教員の実態をふまえた講座数の設定などを強く申し入れましたが、法人トップは聞き入れない態度をとっています。
 このことが報告された人文科学研究科教授会では、OU所属教員も人文科学研究科、人文・社会学系、人文学部の正規教員であり、このような負担増は、学部・大学院の来年度の教育・研究指導に重大な支障をきたすものであり、とうてい受け入れられないという強い意見が、OU所属教員以外から複数でました。さらに、教員の意向を反映した基本計画案とすることを求める意見表明を行うことが教授会決議として承認されました。

3.問題点
  この事例は、現在の大学の運営上の問題点をわかりやすい形で示しています。
@法人の意思決定過程の不透明性
 基本計画案はOU検討部会で作成することになっているはずなのに、今回、法人の方針なるものが変更不可能な形で降りてきました。方針は理事長、副理事長(学長)、事務局長など法人トップが作成したものと思われますが、これが一体どのようなプロセスで作成され、また経営審議会の議を経ているのかどうかも不明です。
A教員の意見の軽視 
 OU検討部会などでも批判的意見が出たのにもかかわらず、法人トップは自らの方針を絶対視し教員の意見を受け入れないといいます。これではOU検討部会が基本計画案を作成するという規定上の手続がまったく無意味になります。
また、基本計画案について教授会で議論するなどの、大学として最低限の手続も取られませんでした。
B調整主体であるOU長の「不在」
 本来ならばOU長(現在は学長が兼務)が、教員の意見を集約し調整を行う役割を負うべきなのですが、OU長が教員の意見をとりまとめるという手続は行われていません。このように教員側と法人の調整を行う主体が「不在」のなかで、教員の意見が法人に伝わらない状態が続いています。
 以上のような問題点を放置したまま「法人の方針」に固執すれば、新大学、旧大学の教育研究に大きな支障をきたすことになるでしょう。また現在、受講者が少ないため、事務室が中心となって受講者を集める努力が行われていますが、300講座実施というノルマの増加によって、事務職員にもさらなる負担がのしかかることになります。

4.大学運営の刷新を!
 今回の事例は、法人トップの意思決定プロセスが、きわめて不透明であることを示しました。このほか、例えば経営審議会の情報は、開催状況すら教職員に対してまったく明らかにされていないなど、法人運営の不透明性はいたるところに存在しています。さらに学長、副学長など大学の執行機関が大学全体を見渡しながら円滑な運営を行うというシステムができていないことが問題です。
 このような構造のなかで、法人トップが教職員の教育研究や事務体制の実態を把握せず、一方的に方針なるものを降ろしてくるという行動を繰り返すことになるのです。これでは大学は機能不全を起こしますし、教職員の法人トップに対する不信はますます募るばかりです。
 以上の事態は、経営の優位の名の下に、教授会、評議会など教学側の機能を奪ったことから派生しています。教学側の機能を剥奪して「トップダウン」で大学を運営することで迅速な意思決定ができるというのがその理由でしたが、むしろ「トップダウン」によって、法人それ自体も、大学も運営が滞ってしまっています。法人トップは、OUの基本計画を教員の意見をふまえて決定するという、大学本来の意思決定方式を尊重すべきです。
 今回OUの基本計画をめぐる問題は、氷山の一角にすぎないのであり、今こそ大学運営の主導権を教職員の手に取り戻し、大学運営を刷新しなければなりません。

 

投稿者 管理者 : 20051011 00:21