平安女学院大学就学権確認訴訟、控訴審判決報告集会の概要(2005.10.14)

 

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2005年10月14日

平安女学院大学就学権確認訴訟、控訴審判決報告集会の概要

平安女学院大学びわ湖守山キャンパス就学権確認訴訟を支援する大学人の会
 ●大学人の会ニュース23(2005/10/13)

就学権確認訴訟、控訴審判決報告集会の概要

 「就学権確認訴訟を支援する大学人の会」は,10月10日13時30分より,守山市民ホール中央公民館において,9月28日の控訴審判決についての報告集会を開催しました。この報告集会には,大学人の会の共同代表である福田菊・元龍谷大学教授,吉原稔弁護士をはじめ,関西の大学教員や遠くは横浜の大学関係者,地元の守山市民,そして平安女学院大学キャンパス移転・統合によって退学を余儀なくされた学生の父母らが,大勢参加してくれました。
   
 まず,報告集会の開催に先立ち,現在市の所有となっている「守山キャンパス」を実際に目で見る企画を催しました。守山キャンパスは,全体として閑散としていましたが,建物も立派なままであり,きれいに管理されている様子がうかがわれました。

 報告集会では,まず最初に主催者「大学人の会」を代表して福田菊先生が挨拶をされました。

 続いて,吉原稔弁護士から本件控訴審判決の内容について報告がなされました。今回の判決の評価は以下のようなものでした。
(1)結論から言えば,高裁判決も,第三者のためにする契約について,踏み込んだ判断を下すものではなかった。
(2)高裁判決は,地裁判決とは異なり,主に「補助金交付に際して,第三者(学生)に権利を付与するとまでは言っていない以上,第三者のためにする契約は成立していない」「本件事件は,過去の判例である電信送金契約(最高裁の1968年判決)とは異なり,第三者のためにする契約には該当しない。また電信送金契約の判例も棄却された」と簡単に述べるが,なぜ本件が第三者のためにする契約に当たらないのか,その理由やそうした判断を下すに至った論理展開を説得的に明示するものではなかった。その意味で,控訴審判決も,地裁判決と同様に「理由不備」である。
(3)その結果,非常に不満な判決だったため,最高裁に上告した。
(4)今後は,記録を受理した旨の通知を受けた後,50日以内に上告受理理由書を提出する予定である。

 次にこの報告を受けて質疑応答に入りましたが,吉原弁護士はフロアーからの以下の質問に対して,次のように応えていました。
質問1 「通常の大学がキャンパス移転を行う場合,法的に争う余地はあるのか?」
弁護士 「ないと思う。大学が自分で資金を出して建設する場合は大学の自治にあたると思う。キャンパスの移転・統合も同じ」「現在の法律の枠組みでは,地方公共団体からの補助金が支出されたケースにおいて,第三者のための契約という主張によってしか就学権は争えない」

質問2 「カリキュラムは変えてはいけないんだから,教育の場所も契約になってると思うがどうか?」
弁護士 「在学契約には特定の場所まで含まれていない」「ただし,今回の場合は市や県と被告が結んだ基本契約に特定の場所が明示されているため、学生の在学契約には特定場所が含まれているという主張をしている」「今後は,消費者契約法を改正し,就学権を法的に整備することも必要である」

質問3 「うちの娘の場合,平安女学院大学への入学直後にキャンパス移転の問題が表面化し,大学側が説明会をしたのですが,実際は入学前から理事者はその事実を決定して知っており、それを隠しながら学生募集をして入学させた。その上で入学金・授業料を納入させたのは詐欺ではないか?」
弁護士 「そうしたやり方は,詐欺と同じである」「入学金詐欺はリフォーム詐欺と同じようなもの」「その点についての損害賠償(詐欺罪)なら訴訟に持ち込んでも勝算は十分ある。

 守山キャンパス移転・統合によって退学を余儀なくされた学生の父母らの方は,この弁護士の話を聞き,是非「被害者の会」を作って訴訟を提起してほしいとの発言をされていました。なお,吉原弁護士は入学金・授業料返還訴訟や損害賠償の法的問題について,全国のいくつかの判例を引き合いに出しながら詳しく説明されました。また,本件のような問題で,大学の社会的責任を問うためには,学生を消費者の視点から問題を捉え,法的に争うことも必要である,と主張していました。

 守山市民の方は,守山キャンパスの処理の問題に関わり,最終的に立命館大学に無償で渡る経緯に触れ,「この問題で立命館はほんまに悪い学校やと思った」と率直な意見を語り,他方で,弁護士はキャンパスをめぐったお金の流れの議論と関わって,「キャンパスは基本的にほとんど県と市のお金で建設した。誰が考えても5年で撤退せざるを得ないような財政状況でキャンパスを建てたのはおかしい。大学経営者として非常に無理なことをした。大学を存続させるという見通しを持っていなかった。そういう意味で言えば、県と市の責任も非常に重い」と述べていました。

 報告集会は,全体としてシリアスな問題がテーマであったとはいえ,和やかな雰囲気で交流を深めることができました。議論のあと,昨年10月の地裁提訴から今日まで川戸さんの裁判を無償で弁護下さった吉原弁護士に対して,お礼とともにこの間大学人の会が全国から募ったカンパを川戸さんの手からお渡ししました。大変,喜んで頂けました。

 最後に,学術人権ネットワークの世話人から,「いま,大学を経営する者の社会的責任が問われている。本件事件で言えば,現行法で法的責任を追及できなくても道義的責任は免れない。経営者の責任を明確にすべきである」といった趣旨の報告集会を締めくくる挨拶をされました。

 報告会は,全体約2時間ほどで終了となりました。

「就学権確認訴訟を支援する大学人の会」事務局

 

投稿者 管理者 : 20051014 00:19