大新聞の堕落を証明した郵政報道――郵政民営化法成立報道に現れたマスコミの知的衰弱・批判精神欠如・小泉政権へのゴマスリ競争のむなしさ  森田実政治日誌(2005.10.17)

 

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2005年森田実政治日誌[391

 

大新聞の堕落を証明した郵政報道――郵政民営化法成立報道に現れたマスコミの知的衰弱・批判精神欠如・小泉政権へのゴマスリ競争のむなしさ

 

「涙とともにパンを食べた者でなければ人生の味はわからない」(ゲーテ)

 

 

 現在の大新聞社の記者は特権階級である。生活の苦労をほとんど知らない。だから、国民がどういう状況におかれているかわからない。苦労を知らず、人生を知らず、社会を知らない、精神的に幼稚な記者が、マスコミを担い、動かしている。危ない社会である。

 

 1015日、各紙朝刊を読んだ。率直な感想を言えば、大新聞がここまでひどいとは驚きだった。日本国民は、高い購読料を払って、こんな低俗なゴマスリ新聞を読む必要はない。NHKのテレビ・ラジオでニュースを聞けば十分である。映像を見たければNHKのBSニュースを見ればよい。ニュースを知るためなら、新聞とくに中央紙は読む必要はない。より安い地方紙を読めばよいと思う。

 ゴマスリの代表は「毎日」の社説だ。見出しは「小泉さん!もうひと働きを」。さすがゴマスリのうまい「毎日」の論説、見出しもうまい。政治面の記事の見出しは「首相、20年越し執念実る」。1992年以後今日に至る小泉首相の発言まで並べている。

 毎日新聞は、郵政民営化の真の原動力となった「米国政府の日本政府に対する年次改革要望書」を無視しつづけた。この「年次改革要望書」こそ、郵政民営化の原点である。毎日新聞は、この重要な事実を隠しつづけ、「小泉首相の執念」をはやし立てつづけてきた。

 読者の皆さんの中には、気分を悪くする方もおいでになると思う。しかし、少しガマンしていただきたい。毎日新聞のゴマスリぶりを紹介したい。

《…小泉純一郎首相が郵政民営化を唱え始めて二十数年。かつて郵政事業は、族議員と支持団体、関係省庁が結束して既得権を守ってきた自民党政治の象徴でもあった。ここに大きな変化をもたらしたのは首相の執念というほかない。…

 変われば変わるものだ。小泉・自民党が圧勝した衆院選を受け、民営化法は衆院では200票差で可決され、この日の参院本会議でも通常国会で反対や棄権・欠席した自民党議員は、ごく一部を除き賛成に回った。首相が再三否定しても、来秋以降の任期延長を期待する声は消えそうもない。…

 首相が達成感に浸っていられては困るのである。他の課題にも、もっと執念を燃やし、もうひと働きしてもらわないといけない。》

 毎日新聞よ、権力者にここまであけすけにゴマをすって恥ずかしくないのか!?

 

 産経新聞もゴマスリでは毎日に負けていない。社説のタイトルは「郵政法成立・走りながら欠点の修正を」。だが、これは、どう見てもおかしい。欠点がわかっているなら、法案審議中に修正を求めるべきではないか。成立してから「修正」を言うのは大新聞社としては、無責任すぎる。

 社説のゴマスリに話題を戻す。次のように書いている。

《…郵政民営化に執念を燃やし、先の通常国会で廃案に追い込まれた法案を、衆院解散・総選挙に打って出て復活、成立させた小泉純一郎首相の政治的意志を評価したい。…》

 産経も「米国政府の日本政府に対する年次改革要望書」を無視し、隠しつづけてきた。340兆円もの巨大な郵貯・簡保資金が米国のハゲタカファンドに狙われており、法律上それを防ぐ手だてを講じていないことにも何らふれていない。

 郵政民営化問題で最も重視すべきは米国政府と米国ファンド、米保険業界の動きである。これを大新聞は、そろいもそろって隠し抜いてきた。

 

 もう二つ、代表的ゴマスリ発言を紹介する(産経新聞1015日朝刊)。一つは竹中経済財政・郵政民営化担当相。もう一つは奥田日本経団連会長。

《竹中平蔵経済財政・郵政民営化担当相

 「法案が成立したのは、小泉純一郎首相のすさまじい執念と力強いリーダーシップ、国民の理解があったからに尽きる。制度づくりで苦労したが、(民営化で発足する新会社を)担う人選も極めて重要。(トップには)『これぞ』という人になっていただきたい」

 奥田碩日本経団連会長

 「小泉首相の先見性と指導力に深く敬意を表したい。(社会保障制度改革など)残された構造改革の解決にスピード感をもって取り組んでもらいたい」》

 郵政民営化法には数々の問題点があるのに、ただただ郵政問題の本質が日米関係にあることを隠しつづけ、小泉首相にひたすらゴマをすりつづけている。

 このようなゴマスリばかりになったら、わが国の政治は堕落してしまう。

 最後に『荀子』の言葉で今日の政治日誌を結びたい。

 「我れを非として当たる者は吾れが師なり。我を諂諛(てんゆ=へつらうの意)する者は吾が賊なり」