内閣総理大臣の靖国参拝 伊豆利彦 日々通信 いまを生きる 第177号(2005.10.20)

 

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    >>日々通信 いまを生きる 第177 20051020日<<
 
   
憲法第二十条【信教の自由、国の宗教活動の禁止】
   
信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体
     
も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
   
何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制
     
されない。
   
国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはな
     
らない。
 
   
小泉首相はさかしげに憲法を引用し、個人としての靖国参拝は憲法に保
   
障されていると得意気だった。
 
   
しかし、小泉氏は総理大臣だ。そして、靖国参拝はいまの緊急な政治問
   
題だ。総理大臣としての職務を個人としての小泉氏は遂行しなければな
   
らない。
 
   
個人としての信教の自由を主張して、いま政治問題と化している靖国参
   
拝を強行することは、それが総理大臣としてふさわしくないものであれ
   
ば、総理大臣の職務を個人の名においてきずつけたしたことになるので
   
はないか。
 
   
個人としての自由はにしても、そのような行為は総理大臣としてすべか
   
らざることであり、きわめて不適切で、その責任は追及されなくてはな
   
らない。
 
   
総理大臣は公人であり、その職責は重く、一般人の有する自由は制限さ
   
れている。
 
   
ひとりの男性が女性関係で問題を起したとしてもそれは恋愛の自由とし
   
て、倫理上の問題が論ぜられるだけであろう。しかし、総理大臣の場合
   
は政治問題になり得る。
 
   
個人が酔っぱらってあやしげな振舞いをしたからといって、その自由は
   
許されている。しかし、総理大臣が飲み屋で他国の悪口を大声で言った
   
りすれば、それは総理大臣としてふさわしくないとして、政治問題化す
   
る。(コイズミさんは言論の自由は憲法で保障されていると言うのだろ
   
うか。)
 
   
一国の総理大臣が個人の自由を標榜して、国の利益を著しくそこなう行
   
為をすれば、憲法などという大げさなものを持ち出す必要はなく、その
   
政治責任が問われる。
 
   
私は政治家でもなければ法律家でもない。法律のことはあまり知らない
   
普通の生活者である。しかし、常識でこう考えるのだ。その常識を持ち
   
合わせず、憲法だのなんだのと言い募る小泉氏がうとましい。馬鹿らし
   
くて見ていられない。
 
   
憲法上は問題あるかないか知らないが、このような個人は総理大臣とし
   
て不適切である。諸外国との友好親善、日本の名誉と利益をいちじるし
   
く破壊する小泉氏は即刻辞職すべきである。
 
   
どうして、日本の政治家はこんな当たり前のことが主張できないのだろ
   
うか。
 
   
一国の総理大臣は自己の個人的心情よりも政治責任を重視すべきだと思
   
う。なぜ、小泉氏は自己の心情ばかりを強調して、政治責任について自
   
覚しないのだろうか。
 
   
こんな総理大臣を日本国民が支持しているとすればその日本国民が世界
   
の批判を受けることになり、国際的に孤立する。日本はあの戦争を反省
   
していない国、口では反省したといいながら、することはその反対の信
   
用できない国、いまに、アジアをふたたび侵略するかもしれない国と思
   
われることをまぬがれない。
 
   
そんな筈がないじゃないか、自分はこんなに平和を願っているのにとい
   
くら言っても、国内外の反対をおしきって、A級戦犯を国に殉じた神と
   
してまつる、あの戦争を美化し肯定する聖地靖国神社に参拝する以上、
   
アジアだけでなく世界の人々の不信を招くのは当然である。
 
   
いま、広津について書いている。
   
いそぐ原稿なのだが、小泉の靖国参拝が気になって書けず、とうとう、
   
素人の私の気持を書きつづってしまった。
   
これだけのことを書いておかないと広津についての原稿が書きすすめら
   
れないのだ。
 
   
たどたどしい文章ですが、お許しください。
 
   
ようやく秋晴れの一日を迎えた。
   
昨日は、旧制高校時代の寮生活をともにした同年の友人4人がが集まっ
   
て、のどかな一日を過ごした。
   
高校2年のときに終戦を迎えた。そして、2年に短縮された高校が3年に
   
もどったのだった。
   
奇妙な高校生活だった。
   
私の同級生では軍隊に取られたのは私ひとりだったが上の学年では多く
   
の同級生が兵隊にされ、さらには多数の戦死者を出したのだろう。
   
いま、こうして生きていることの不思議を思う。
 
   
私はやがて死ぬ覚悟をして高校生活を送った。
   
戦後になって、それから60年もたって、いま、またあわただしく世の中
   
が動く時代にめぐりあって感慨は深い。
   
時代は、そのゆっくりと動く時代と、はげしく動く時代がある。私たち
   
の青春ははげしく動く時代だったのだろう。
   
しかし、当時はその意味をすこしも自覚せず、盲目的に生きていた。
   
いまの若者は、これからの10年をどう生きるのだろうか。
   
そして、そん10年を、さらに50年たってどのように思い返すのだろうか。
   
そもそも、その時、日本はどうなっているのだろうか。
   
前へ、前、ひたすら先をいそいであわただしく生きる毎日だが、ときに
   
立ちどまって過去を思い、未来を考えてみるのもいいだろう。
 
   
漱石は、「マードック先生の『日本歴史』」 (19113 )
 
   
「維新革命と同時に生まれた余から見ると、 明治の歴史は即ち余の歴史
   
である。」
 
   
「歴史は過去を振返った時始めて生れるものである。悲しいかな今の吾
   
等は刻々に押し流されて、瞬時も一所にてい徊して、吾等が歩んで来た
   
道を顧みる暇を有たない。吾等の過去は存在せざる過去の如くに、未来
   
の為に蹂躙されつつある。吾等は歴史を有せざる成り上がり者の如くに、
   
ただ、前へ前へと押されて行く」
 
   
我等の二つの眼は「二つながら、昼夜ともに前を望んでいる。そうして
   
足の眼に及ばざるを恨みとして、焦慮あせり に焦慮あせつ て、汗を流したり
   
呼息いきを切らしたりする」
 
   
「恐るべき神経衰弱はペストより劇はげしき病毒を社会に植付けつつあ
   
る」
 
   
「夜番の為に正宗の名刀と南蛮鉄の具足とを買うべく余儀なくせられた
   
る家族は、沢庵の尻尾を噛って日夜齷齪するにも拘わらず、夜番の方で
   
は頻りに刀と具足の不足を訴えている」
 
   
「吾等は渾身の気力を挙げて、吾等が過去を破壊しつつ、斃れるまで前
   
進するのである」
 
   
昭和という時代とともに生まれた私にh漱石の感慨は身近である。
   
過去をふりかえる彼を嘲笑してひたすら新しさを誇った若い人たちもい
   
ただろう。
    50
年の後、そのように自分の生涯をふりかえっただろう。
   
そして、100年の後、どのようにふりかえられることになったろう。
 
   
歴史というものを考える。
   
それは教科書や概説書、研究書に書かれているようなものではない。
   
私たちは歴史を知らないにもかかわらず歴史を生きるのだ。
   
そのことを自覚して、身をつつしむ必要があると79歳をむかえようとす
   
る老人は考える。
 
   
この老人も60年前には、あとさき考えず、老人たちを馬鹿にしていたの
   
だ。
   
私の2,3歳上の先輩たちは言挙げもせず、黙々と扇状戦場におもむき、
   
その多くが戦死した。
   
彼らは靖国にまつられているわけだが、小泉氏の参拝をどう思うだろう
   
か。
   
私はいやだ、あんな偽善とペテンの拝まれ方をするのはいやだ。
   
それ以上に、靖国にまつられるのがいやだ。
   
まして、あのA級戦犯と一緒にまつられるのはいやだ。
   
彼らはあの世でも特権的に暮らし、私たちを支配しつづけるのだろうか。
   
いやだ、い。それらの一切がいやだ。
   
靖国参拝などという馬鹿げた茶番はやめろ。
   
あの戦争の時代と同様に、靖国は私たちを当人の意志にかかわりなくま
   
つりこみ、ふたたび戦争に若者たちを動員しようとしているのだ。
   
あのしたり顔のコズルイ、コイズミさんがいやだ。
   
そこに100人を越える議員たちが、もっともらしく参拝した。
   
これもいやだ。
   
この日本は何処へ行くか。
   
若者たちは、ふたたび国のために殉じて靖国にまつられるか。
   
あの連中はいまの若者たち、これからの若者たちが喜んで国に殉ずるよ
   
うに靖国参拝をして見せているのだ。
   
彼らは、靖国の帰りになにをしたか。
   
まさか、杉村新議員が行きたがっている料亭で靖国万歳をやったわけで
   
はないだろう。
 
   
また延びてしまった。
   
皆さん、お元気で、束の間の秋の青空を楽しんでください。
 
   
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