BC級戦犯合祀『非公表に』 旧厚生省、都道府県に要請 「東京新聞」(2005.11.3)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sei/20051103/mng_____sei_____001.shtml

 

BC級戦犯合祀『非公表に』 

旧厚生省、都道府県に要請

 連合国によりBC級戦犯とされ刑死した旧軍幹部らの靖国神社への合祀(ごうし)をめぐり、旧厚生省(現厚生労働省)が一九五九年四月、各都道府県に公表を控えるよう求める文書を出していたことが二日、同省の内部資料で分かった。「重大な誤解を生じる恐れ」などがあるとして、公表に不安を訴えた神社側の意向に沿っていた。

 同年のBC級合祀、七八年のA級合祀とも神社側は公表せず、秘密裏に合祀を進めることで世論の反発を回避しようとした様子が浮かんだ。

 この内部資料は、五九年四月四日付で、厚生省引揚援護局(現社会・援護局)史料班長名で出された「平和条約第十一条関係死没者の靖国神社合祀について(内連絡)」と題した文書。「取扱注意」の判があった。

 文書は「外地裁判関係の死没軍人軍属」(国内裁判分を除くBC級戦犯)の約半数について、五九年の春の例大祭で合祀されると報告。合わせて「部外(多数の一般戦没者遺族を含む)」からの神社側への投書などに表れた意見に照らし「重大な誤解を生じ、ひいては将来の合祀にも支障を起す恐れもある」との懸念が記されていた。

 その上で「神社側は最も慎重な態度をとり、この際今次合祀者中に標記死没者が含まれていることを公表せず、世論と共に極めて自然に推移するよう希望」しているとして、「充分お含みおき下さるよう」と求めている。

 さらに(史料班長名の)私見として、いわゆる「戦犯」がすべて合祀基準に当てはまるのではなく、「国事に倒れたもの」と認定されることで合祀されると説明。「戦争犯罪者までも合祀された」と疑問を持つ人には「戦犯イコール合祀対象でない」と説明するよう要望している。史料班長は係長より上で課長補佐の下に当たる役職という。

 同神社は五九年四月の春季例大祭に合わせ、初めてBC級戦犯を合祀。旧厚生省は、これに先立つ同年三月、合祀予定者の名前を記した「祭神名票」を神社側に送り、合祀に協力していた。

 戦犯の合祀をめぐっては、当時の筑波藤麿宮司(故人)が「A級の人は責任者。責任者と犠牲者(一般戦没者)をすぐ一緒にお祭りしては、犠牲者が納得できないのではないか」と述べ、両者を区別していたことが明らかになっている。

<メモ>BC級戦犯

 第2次大戦中の行動が「通例の戦争犯罪(戦争の法規または慣例の違反)」や、「人道に対する罪」に当たるとして連合国側に裁かれた人たち。主に占領地の住民や連合国の捕虜を殺害したり、虐待したりしたことが問われた。起訴されたのは、ほとんどが准士官、下士官クラス。アメリカ、オーストラリアなど連合国の中の7カ国によって、約5700人が裁かれ、最終的に900人以上の死刑が確認されている。靖国神社では、1959年からBC級戦犯の合祀(ごうし)が始まった。