迷走の末、急性期継続 横浜市立脳血管医療センター 「東京新聞」神奈川(2005.12.21)

 

 

迷走の末、急性期継続

横浜市立脳血管医療センター 

 「引き続き、救急医療および急性期医療を提供する」。全国有数の脳卒中専門病院「横浜市立脳血管医療センター」の医療機能の見直しを検討していた市病院経営局が、十九日に示した結論だ。

 昨年十二月に発足し今年五月をめどとした有識者の検討会議の結論が八月までずれこむなど議論は揺れたが、焦点だった急性期医療は継続。ほかは回復期リハ病棟の施設基準取得など今までやっていなかったのが疑問視されるような、厳しく言えば当然の内容が盛り込まれただけだった。

 その間、センターは、医療に支障をきたすほど深刻な医師不足に直面。一時は緊急の手術に対応できなくなり、救急車の受け入れをストップせざるを得ない混乱に陥った。

 医師不足の原因はさまざまだが、特に医療ミスを起こした医師らが次々と退職した脳神経外科で後任の医師の確保ができなかったのは、急性期医療をやめるかどうかという病院としての根本的な議論が迷走していたことが一つの大きな要因となった。

 「医療機能を継続するという結論を得るのに、これだけの混乱を生み出したのは何だったのか。責任を問われても仕方がない」との声は市の内部からも上がっている。

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 医療機能の見直し議論は、市が昨年末からまとめた「病院経営改革計画」で急性期医療をやめ、回復期や慢性期のリハビリ病院とする方向性をにじませたことから始まった。岩崎栄局長(72)も検討会議が議論を始めていた今年一月の市議会常任委員会で、「救急車で(患者を)運ばないよう要請するなど、急性期救急は軽度のものまでとする」とし、リハビリ病院化が望ましいとの考えを示した。

 ある市職員は、「急性期をやめるという方向性は、岩崎局長の個人的な考えだった。担当職員たちも、『なぜやめるのか』と疑問に思いながら仕事をしていた」と話す。

 市によると、厚生労働省関連の財団法人「日本医療機能評価機構」の理事でもある岩崎局長は昨年、市の参与となり、局長には今年四月に就任。病院企業管理者の特別職で、一般職員のような職務専念義務はないが、就任した四月以降平日百八十日のうち、出勤したのは百三十日程度だった。

 結局、医療機能の議論は右に左にと揺れながら、ようやく結論にたどりついた。センターは十月以降、脳神経外科医を二人確保し平日の救急車の受け入れを再開したが、依然全体の医師数は不足して当直体制が組めず、奇数週の土日は救急車の受け入れができない。今月末には麻酔医もゼロになる見通しで、厳しい状態が続く。

 センターが脳卒中専門病院として本来の機能を発揮するには、現在の医師の流出を防ぐための努力をしつつ、優秀な専門医を数多く集めることが何より求められている。 (金杉 貴雄)