『裁判員制度では冤罪増える…』 埼玉弁護士会の冊子 地裁が配布認めず 『東京新聞』埼玉(2006.1.27)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/stm/20060127/lcl_____stm_____000.shtml

 

 

『裁判員制度では冤罪増える…』 

埼玉弁護士会の冊子 地裁が配布認めず

 埼玉弁護士会(田中重仁会長)は26日、先月にさいたま市内で開催された最高裁など主催のフォーラムで、冊子を配布しようとして妨害されたとして、さいたま地裁に抗議の質問状を出したことを明らかにした。冊子は裁判員制度の導入で、冤罪(えんざい)が増加することを懸念した内容。地裁は「事実関係の認識で違っているところがある。弁護士会と話し合いたい」としている。 (藤原 正樹)

 冊子の題名は「疑わしきは被告人の利益に 裁判員となる市民のみなさんへ」。裁判員制度の導入で冤罪が増えることを懸念し「裁判員は、検察官の主張に疑問を感じる時は無罪の判断を」と訴えている。

 裁判員制度は国民の司法参加を目的に二〇〇九年五月までの導入が予定されている。重大な刑事事件の裁判で、裁判官三人と一般国民から無作為に選出される裁判員六人で審議し、多数決で被告人の有無罪や刑期を決める。

 この裁判員制度について理解を深めてもらおうと、最高裁や地裁などが主催し、埼玉弁護士会などの後援で「裁判員制度全国フォーラムin埼玉」が先月十七日、さいたま市浦和区のさいたま共済会館で開かれた。

 弁護士会によると、昨年十一月中旬、会場内で冊子を配布することを地裁に打診したが「会場でこの内容の冊子を配られると、裁判所の意図が誤解される」という理由で断られたという。このため、弁護士会はフォーラムの当日、会館の出入り口の外側で配布しようとしたが、裁判所の職員に制止されたという。

 弁護士会の質問状では「裁判所の管理権のない会場外で配布を制止するのは、表現の自由を侵害しかねない行為」と地裁の対応を強く批判している。田中会長は「素人の裁判員の判断は、プロの裁判官より重罰化が進むことが懸念されている。どんな事件もスピード判決が優先され、冤罪増加の危険性が高いと考えている。冊子の配布を妨害した裁判所の行為は許し難い」としている。