靖国参拝批判は中韓だけなのか 事実に反する小泉首相答弁 アジア・欧米にも広がる懸念 「しんぶん赤旗」(2006.1.28)

 

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2006年1月28日(土)「しんぶん赤旗」

靖国参拝批判は中韓だけなのか

事実に反する小泉首相答弁

アジア・欧米にも広がる懸念


 小泉純一郎首相は、二十五日の参院本会議で、日本共産党の市田忠義書記局長の代表質問に対し、「(靖国参拝を)批判しているのは中国と韓国だけだ。どこの国の首相も私の靖国神社参拝に、批判したことは一度もない」とのべました。

 日本外交を八方ふさがりにしている自らの靖国参拝を反省するどころか、日本の侵略戦争と植民地支配による被害を受けた国である中国、韓国からの批判を逆に敵視するとんでもない発言です。

 しかも事実は首相がいうのとは違って、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟の多くの国々から、小泉首相の靖国参拝に対し、批判や懸念の声が相次いでいます。

■アジア各国首脳が批判

 シンガポールのリー・シェンロン首相は昨年五月十七日、同国首相府で日本人記者団と会見し、「日本の占領を経験したアジアの多くの国々の観点からは、戦争犯罪人も合祀(ごうし)する靖国神社への参拝は多くの不幸な思い出を想起させる。日本が戦争中に悪事を行ったということを完全には受けいれていない意思表示と多くの人は考える」(「日経」〇五年五月十八日付)とのべています。

 マレーシアの現政権にも強い影響力をもつマハティール前首相も昨年八月、福岡県で講演し、「日本は戦争で傷ついた近隣諸国の感情を考慮するべきだ」「死者を弔うのはどこでもできる。近隣国の不安をかきたてない方法があるはずだ。過去の首相は慎重だった」(「朝日」〇五年八月三日付)とのべ、小泉首相を批判しました。

 なにより、昨年十二月、マレーシアでの日本・ASEAN首脳会議で、小泉首相自身が直接、他の首脳から懸念を表明されています。

 ASEAN議長国であるマレーシアのアブドラ首相は、「日中関係の対立を懸念している。両国が関係を適切に処理することが必要だ」と小泉首相に善処を求めました。

 フィリピンのアロヨ大統領も「アブドラ首相がのべた懸念を共有する」とのべ、賛同しました。

 日本の外交に対しASEAN諸国首脳から批判が噴出したことは、早速各国のメディアで「戦争神社論争」(マレーシアの英字紙)などと大きく取り上げられ紙面をにぎわせました。

 インドネシアの英字紙ジャカルタ・ポスト社説(昨年十二月十五日付)は、「この地域(ASEAN諸国)の多くの人たちは、日本の小泉首相が、中国や韓国がまったく受けいれられないとしているのを十分に知りつつ、靖国神社参拝をやめるのを頑固に拒否する態度に激怒させられてきた」と強い調子でのべています。

■米国政府の関係者も懸念

 小泉首相が“頼み”にしている米国政府も、ブッシュ大統領が昨年八月三十日、対日戦勝六十周年記念演説で、かつての日本の行動を「西側植民地主義をもっと過酷で抑圧的なバージョンにおきかえただけだった」と指摘しています。小泉首相が“大好きな”ブッシュ大統領も「あの戦争はアジア解放のためだった」とする侵略戦争正当化論を批判しているのです。

 議会関係者では、米国下院のハイド外交委員長が首相の連続参拝に対して「遺憾」の意を伝える書簡を日本政府に寄せています。

 小泉首相は、「米国を含め諸外国に広く理解されるよう、引き続き努力してまいります」(二十五日、参院本会議)といいますが、日本の侵略戦争を「自存自衛」「アジア解放」の戦争だと正当化する靖国神社への参拝をいくら重ねても、理解されるはずはありません。(小山田春樹)