教科書問題:「つくる会」採択、手続き違法と杉並区議らが提訴 「意見広告の会」ニュース324号より(2006.2.12)

 

 

2 杉並区:教科書採択をめぐり提訴
   
     8名の区民(2名の保護者含む)
2−1 教科書問題:「つくる会」採択、手続き違法と杉並区議らが提訴
       2/10 「毎日新聞」地方版・東京
 杉並区教育委員会が昨年8月、区立中学と養護学校で来年度から使う歴史教科書に「
新しい歴史教科書をつくる会」のメンバーが執筆した扶桑社発行の教科書を採択したこ
とを巡り、奥山妙子区議ら区民8人が9日、「採択手続きに違法性がある」として採択
取り消しを求めて東京地裁に提訴した。違法な採択で精神的苦痛を受けたなどとして1
人1000円の損害賠償も請求。「区民の声を無視しており、区の規則に反する」と主
張している。【武本光政】
 杉並区教委の話
 訴状を見ていないのでコメントできないが、採択は法令等に基づき適正に行った。

2−2 訴状 *一部略
*訴状は以下の奥山たえこ杉並区議のHP
      http://www.jca.apc.org/~okuyama/KYOhKASYOsosyou.html


訴  状
                        平成18年2月 9日
東京地方裁判所 民事部 御中
                  
                            
杉並区教育委員会による扶桑社教科書採択の取消及び損害賠償請求事件

訴訟物の価額        円  
貼用印紙額         円             
予納郵券        8480円 
             
第1.請求の趣旨
1.被告が平成17年8月12日に行った東京都杉並区教育委員会による中学校教科図書
歴史科目採択審議において行った、新しい歴史教科書をつくる会のメンバー執筆になる
株式会社扶桑社発行『新しい歴史教科書(改訂版)』(以下扶桑社のつくる会歴史教科
書)の採択決定処分を取り消せ。
2.被告は原告それぞれに金 1000円及び平成17年8月12日より完済までの間、年5
分の割合の金員を払え。         
3.訴訟費用は被告の負担とする。
   との判決及び第1−1項についての仮執行の宣言を求める。

第2.請求の原因
1.事実経過
 (1)原告らは、杉並区在住の住民であり、納税者であり、有権者であり、区内公立
学校に在籍する児童の保護者であり、日本国国民である。
 
 (2)扶桑社のつくる会歴史教科書採択処分の事実
原告が当該処分を知ったのは平成17年812日である。
 4年前の前回採択結果と異なり、今回は扶桑社歴史教科書を採択するかもしれない
、そんな噂は確かにあった。それを聞き付けて、日本国中のみならず韓国からも、採
択は慎重にしてほしいといった趣旨の要請文などが、以前にも増して杉並区教育委員会
に数千通届けられていた。だがわれわれは、よもや「この杉並区で」、「この教科書を
」採択できるとは思っていなかった。(「この」の理由は、本項目「3.違法な処分に
より原告ら区民・国民が被る精神的損害、著しい不名誉について」を参照)。
全国で採択が終わった後、扶桑社のつくる会歴史教科書を採択したのは、全国583採択
地区のうち東京都杉並区と栃木県大田原市の2地区のみ。冊数換算では0.4%弱となる
。全国のほとんどの採択地区が選ばなかった教科書を、なぜこの杉並区で選んだのか、
また選ぶことができたのか。杉並区においては、この5年ほどの間に教科書採択に関す
る手続き法令の変更がいくつもなされていた。また違法であったり、恣意的な運用がな
されていた。振り返ってみると、その意図はひとえに扶桑社のつくる会歴史教科書を採
択せんがための下準備であったことが、いまとなってはよく判る。
手続き法令変更の必要性について、教育委員会は議会に対して説明はおろか報告もして
いない。それを議会で追及されると言い逃れするていたらくである。
なるほど教育委員会は、条例や規則の制定にはついては議会の同意を必要とするものの
、要綱や細目、また手引きといった細かい手続き法令については自ら定める権限を有す
る。かくなる権能を有する者が、濫用や違法行為を行った時、もしそれを看過するなら
ば、法治国家の名の下に行政庁は自分たちのほしいままに、国費による教科書購入にお
いて、一企業である扶桑社のつくる会歴史教科書を意図的に指名しうることになる。

以下、被告の行った手続き法令濫用等の事実を述べる。この全ての行為は、扶桑社のつ
くる会歴史教科書を採択するための布石である。
  ・教育委員の入れ替え:被告山田宏杉並区長は、200011月、教育委員会人事を利
用し、定員5名中大藏雄之助、宮坂公夫を任命した。
なお、そもそも教育委員には教科書採択権限はなく、教科書はそれを使用する教師が選
定するものである。
  *2001年の採択結果:2対3で扶桑社本は採択されなかった。
  ・採択法令の改悪:現場教員意見の軽視環境つくりと教育委員会の権限強化。2004
(平成16)年526日:採択に関する要綱を規則に改定し、基礎的な調査を行う調査部
会の位置付けを格下げした(審議会から部会に変更)。改悪はこれに留まらない。(提
訴後、準備書面、証拠等提出することとする)
  ・扶桑社のつくる会歴史教科書を調査対象からはずさないための手続きの変更:中
学校の歴史教科書は、現在8社が刊行している。
  2001年の採択時には、調査担当者は2種類以上について調査をおこなえばよかった
。しかし2005年には手続きを変更し、全刊行書の調査を行わせることとした。
  ・教育委員の再度の入れ替え:・の2名のほかに、2003年6月、山田区長は教育長
を自らの意のままになる教育委員に入れ替えた。
  ・韓国の非難をかわすための採択延期:2005年の採択日は84日であった。しかし
、杉並の中学生が友好都市である韓国ソウル特別市ソチョ区との交流事業を控えていた
ので、帰国の日の12日に延期した。
  *この日の採択で、3対2で扶桑社のつくる会歴史教科書を採択した。
なお教育委員会は、扶桑社のつくる会歴史教科書以外は、概ね調査部会の報告方針に沿
った採択を行っている。これは、NHKテレビ番組「クローズアップ現代」200592
0
日放映番組でも指摘されている。


2.本件処分の違法性
  被告は本件処分(扶桑社のつくる会歴史教科書採択)を決定したが、以下の根拠規
則、要綱に照らして違法、手続き不備、著しい不正があり、要件を満たしていない。よ
って処分の取り消しを求める。
 ・被告は、本件処分に関連して種目別調査部会によって作成された教科書調査報告書
(学校用)の書換えを調査部会担当者に命じた。この命令は法令等に根拠がなく、また
杉並区立学校教科用図書の採択に関する規則(甲第1号証)に違反しており、違法であ
る。

 ・被告は、種目別調査部会によって作成された教科書調査報告書(学校用)の書換え
を命じ、実際に書き換えさせた。これは、杉並区立学校教科用図書の採択に関する規則
(甲第1号証)、杉並区の杉並区文書等管理規程(甲第2号証)に違反しており、違法
である。
 
 ・被告は、調査担当者がその専門的見地において記入する教科書調査報告書(学校用
)の内容に関して、箇所を具体的に指摘して、書換えを命じ、書き換えさせた。これは
、杉並区立学校教科用図書の採択に関する規則(甲第1号証)。杉並区の杉並区文書等
管理規程(甲第2号証)に違反しており、違法である。

 ・被告に属する中学校校長は、教科書調査報告書(学校用)を書き換えた。これは、
杉並区立学校教科用図書の採択に関する規則(甲第1号証)。杉並区立中学校教科用図
書調査事務処理要綱(甲第3号証)。中学校が行なう教科書採択に関する調査事務につ
いて(通知)(甲第4号証)。杉並区の杉並区文書等管理規程(甲第2号証)、及び刑
法の百五十六条「虚偽公文書作成等」(書証添付省略)に違反しており、違法である。
 
・本件処分においては、専門科目教員の調査を無視して採択を審議した。これは杉並区
立学校教科用図書の採択に関する規則(甲第1号証)に違反しており、違法である。

・本件処分においては、区民の意見を無視して採択を審議した。これは杉並区立学校教
科用図書の採択に関する規則(甲第1号証)に違反しており、違法である。

 書換えさせられた文書を添付する(甲第5号証)
 
3)以上のように、杉並区では、特定の教科書出版会社である扶桑社の教科書を採択す
るために、法令等を知悉し、制定する地位を利用して、ほしいままに極めて異常に組織
的、かつ恣意的に根拠法・規則・要綱違反行為がなされた。しかるに、被告は区議会質
問、各種申し入れに説明責任を果たさず、処分をこのまま執行せんとしている。
 つまり、これが看過されるなら、再犯の恐れが十分あるし、このような傲慢を杉並区
行政の常態とは断じて認められない。早急に違法状態を原状に復元すべく仮執行宣言を
求める次第である。

3.違法な処分により原告ら区民・国民が被る精神的損害、著しい不名誉について
1)区立中学校に子どもを通わせられないことによる重大な損害
 *略
2)ソウル特別市瑞草(ソチョ)区との友好関係に関わる重大な損害
 *略
3)私たちの被るであろう重大な損害とそれに比べれば些細な損害
 *略
4)裁判所にお願いしたいこと
 *略
4.よって請求の趣旨記載のとおり判決を求める。