横浜市立大学の労基法第14条に基づく全教員任期制の強要、日本の全大学人への挑戦ではないか(2006.2.13)

 

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2006年02月13日

横浜市立大学の労基法第14条に基づく全教員任期制の強要、日本の全大学人への挑戦ではないか

 横浜市立大学は,任期制導入問題について,教員組合との団体交渉の際,「任期制に同意しない教員の既得権は認めるが、業績評価によって昇格が認められても、任期制に同意するまでは昇任を発効させない」とする態度を示し,個々の昇任をたてにとって力ずくで任期制の導入を強要しようとしている。

 横浜市立大学の任期制は,通常の任期制と次の点で特異な性格をもつ。一つは,全教員に適用させるものであり,いまひとつはその法的根拠を「大学の教員等の任期に関する法律」ではなく,労基法第14条に置いている点にある。この2つをセットにした任期制は,全国広しと言えども横浜市立大学をおいて他に例がないのではないか。そもそも労基法第14条は,有期の労働契約が特定使用者への長期間の緊縛をもたらすことがないよう,契約期間の上限を定めるものであって,あくまで職業選択の自由を保障する労働者への保護が立法趣旨である。この規定を逆手に利用して期間の定めのない常用雇用者を有期契約雇用者に,しかも在職教員を全員それに適用させる行為は暴挙というほかない(一般の民間営利企業でさえ,こうした乱暴な雇用条件の不利益変更は聞いたことがない。つまり課長や部長に昇進したければ皆有期雇用の契約にサインしろというのと同じ。)本来の任期制の趣旨とは遠く離れて,実質は全教員の不安定雇用化=「有期雇用化」である。

 厚生労働省は,「有期労働契約の締結、 更新及び雇止めに関する基準」告示において,有期労働契約を締結するに際して,「労働者に対して当該契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければならない」としているが,横浜市立大学の任期制は,この判断基準さえ具体的に示していないようだ。したがって,同大学のそれは大幅な規制緩和(改悪)を狙った2004年改正労基法にも悖る。

 日経新聞(2月2日付)において,宝田良一理事長は,下記のように,「それでも実施してみないことには教員の指導計画もつくれない」とのコメントを出している(教員の「指導計画」とは何かよく分からないが,とにかく実施することに重きを置いている)。他方,教員組合は,「現在の横浜市立大学における教員の地位と権利を守る闘いは、決して横浜市立大学だけの闘いではありません。われわれは、全国の大学教員の不安定雇用を拡大させる流れに抗し、日本の教育研究労働者のエネルギーの大いなる損失を食い止める闘いの最前線にいることを肝に銘じる必要があります」と述べている。まさに組合の主張通りだと思う。いま,全国の大学をみても,すさまじい勢いで,教員の雇用不安定化が進んでいる。大学教員の人材派遣さえ登場している中にあって,まさに市大の闘いは,日本の全大学関係者の闘いでもある。

日経新聞神奈川版(2006/02/02)

 横浜市立大学で四月に始まる教員の人事評価制度の準備が進んでいる。研究成果、授業の教え方。専門分野によって評価軸は異なる。医学部では大学病院の患者への対応までも考慮しなくてはいけない。昨年四月の独立法人化とともに年俸制と任期制がスタートした。評価制度は教員向け改革の総仕上げでもある。
 定年制の公務員から三年ないし五年の任期制度への変更には本人の同意が必要となる。「評価された結果、どうなるのかが見えないのに任期を限られても」。任期制導入からまもなく一年。全教員の三割は同意を保留したままだ。
 「一律に評価することは確かに難しい。それでも実施してみないことには教員の指導計画もつくれない」。宝田良一理事長は重要性を説く。評価項目など制度の概要が固まった後、任期制の同意が増えるかどうかは見えない。……

大学改革日誌(永岑三千輝氏)−最新日誌

2月10日 教員組合が騒いでいる「任期制同意」なるものは、たんなる大学改革への同意を求めたものに過ぎない、という「甘い言葉」[1]をささやく人がいる。昨年3月の任期制同意に関する文書は、そのようなものだという[2]。

本当か?

しかし、そんな抽象的なことに同意をもとめられたのならば、どうしてそのような同意書に多くの教員(文科系の教員を中心に国際総合科学研究科・国際総合科学部の教員)が署名するのを拒否し、教員組合に預けたのであろうか? そんなにも多くの教員は愚かなのか?

記憶は薄れる。もしかしたら、私の記憶違いで、「改革に賛成してくださればいい」というようなあいまいな内容だったのかと、文書をひっくり返してみた。

タイトルからしてまぎれなく、「任期の定めのある雇用契約への同意について」とはっきり規定している。たしか就業規則で任期は3年とか5年などとなっている。同意を求める内容もかなり具体的な事項に踏み込んでいる。勤務時間のあり方も具体的に言及している。これらの部分が、同意書に署名した人々を拘束することは確実だろう(一体どこまでに同意したことになるのか、不安になるのは当然ではないか[3])。その意味で、やはり多くの教員が危惧を抱く内容・文面である。「改革に同意すればいいのです」というような抽象的で、誰も否定できないような「甘い文面」では決してない、と私は考える。誤解なら、明確な文書で責任を持って、誤解を解いてもらいたい。

教育研究業績の評価システムが、大学らしいものとして整備されていない段階(それは、現在の審議システム・学則では経営審議会・理事長副理事長などの経営責任者に責任があると思われるが)で、昇格審査者に対して研究業績教育業績等の審査に合格した後も任期制に同意しないうちは昇任させない、という団体交渉での回答とあわさって、大変な怒り・不信感を増幅させているのである。

巷には、当局回答が「組合側の誤解だ」などという説も出てきたが(どうしてそのように当局の考えを知っているのだろう?)、それならば、当局は、明文を持って、きちんと不安を取り除き教員のプライドを傷つけないような回答文書に仕上げ、組合に提示すればいいであろう。

昨日は、代議員会があったという。そのひとつの論点に、「昇任審査基準を公開しないのはなぜか」という問題があったということである。1月30日に人事委員会(誰が委員会メンバー?学長が委員長であることは確実だが)で制定されたというルールなのだから、公開すべきである。

誰が該当者か、基準がはっきりしなければ応募しようがないではないか。コース長が恣意的に基準の内容を伝え、本来の該当者を排除してしまう可能性だってある。人事における公明性・公開性はどうなったのか?

法人サイドに都合のいい(法人に従順な人だけを昇任させる・法人の言うままの大学・・・法人責任者は誰が任命しているか?・・・大学の自治は?)人事制度だという疑いをもたれても仕方がないのではないか?

他方では、かなり問題の条項もあるかに噂されている。それを隠すためか?

一方で審査基準が厳しくなったという噂を耳にする。他方で、研究教育業績などなくても、当局の言うままに行動すれば褒章が与えられる規準となっているとも耳にする。

現物を見ないので、疑心暗鬼! 「過去5年間に論文一本も書いていなくてもいいんだって・・・」などと[4]。

いらざる噂の徘徊を防ぐ道は、早急な基準公開であろう。

かつては教授会で公然と昇任基準を議論していた。誰でもが基準を知り、その基準をクリアすべく、努力していた。

現在は、学長等の管理職(全員法人任命のはず)で構成する人事委員会が決定権を持ち、しかも、それをわれわれ一般教員には分からないようにしたままで、ことを進めている。

いつになったら基準は公開されるのか?

人事委員会が責任を持って決めたものならば、普通の教員にわかるように、なぜ公開しないのか?

ごく少数のちょくせつの該当者だけがわかっていいものではない。なぜか?

いまだ候補資格はなくても、何年かけて、どのような業績を積めばいいのか、たくさんの若手教員は知りたいだろう。それなくしては努力の仕様がないだろう。規則・基準の公開性は、大学の人心を安定させるためには不可欠である。かつては教授会規則・教授会人事規定などとして誰でも分かる形になっていた。

そして次に問題となるのは、審査を誰がやるかである。

審査員を誰が決めるのか?

それによって、結論は初めからわかってしまう場合さえあろう。

 

投稿者 管理者 : 20060213 03:02