森田実政治日誌 『月刊日本』3月号インタビュー記事(2006.3.1)

 

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2006年森田実政治日誌[115]

小泉首相は直ちに辞職せよ!/小泉構造改革は日本社会を崩壊させる

【『月刊日本』3月号インタビュー記事】


 万死に値する小泉・竹中コンビ

 ―― 小泉政権の推し進めてきた「構造改革」でインターネット社会が急速に進展しましたが、そのアダ花ともいうべきライブドアの堀江貴文容疑者が証券取引法違反容疑で逮捕されました。ホリエモン逮捕で、小泉改革の陰の部分が一気に噴出した感があります。
 森田 ホリエモンを生み出したのは、実は小泉「構造改革」です。小泉政権が推進してきた構造改革路線は、今回のホリエモンの逮捕によって正当性を失った、ということです。
 小泉純一郎首相、竹中平蔵経済財政・郵政民営化担当大臣、武部勤幹事長らが、逮捕されたライブドアの堀江容疑者を昨年の総選挙に立候補させ、応援しましたが、これが小泉政権の本質を象徴的にあらわしています。
 東京地検特捜部が堀江容疑者を逮捕しましたが、この容疑者を小泉首相と竹中大臣、さらに与党の幹事長が積極的に構造改革の旗手として推薦・応援していた。この責任は大変重く、内閣総辞職に値することだと思います。
 ―― 小泉首相ら政府与党幹部は、「ライブドアの実態がわからなかった」などと弁解しています。 森田 証券取引法違反という容疑は総選挙の1年前のことですから、あらゆる情報を収集分析できる立場にある官邸が何も知らなかったということはあり得ません。ホリエモンのやっていることは怪しいと、匂いでわかったはずです。
 ライブドアが市場原理主義を振りかざして、ニッポン放送やフジテレビの買収を仕掛けていた頃から、私はこの人物はおかしいと睨んで、株価を意図的につり上げて違法なことをやっているのではないかと、マスコミを通じて何度も警告してきました。この問題は私だけではなく、多くの評論家も指摘していました。
 そんな人物を政府与党の幹部がこぞって応援し、国会議員にしようとした責任は非常に重大です。
 しかも重要なことは、ニッポン放送株の買い占めが時間外に行われたことで、これは証券取引法に照らして明白な違法行為です。百歩譲っても、道義的に許されざる行為です。その張本人を小泉首相、竹中経済財政政策担当大臣らが擁護し、選挙の応援をしたのです。違法行為、百歩譲っても、道義的に許されざる行為を最高権力者が擁護したということは、許されざることだと思う。
 小泉首相は「事件と選挙応援は別問題だ」と言い逃れをし、さらには「メディアがホリエモンを持ち上げた。逮捕されると、手のひらを返すのはどうか」と、逆にメディア批判を展開しました。国家指導者として、あまりに姑息な対応であり、情けないほどの卑しさだと思いますす。
 こうして儲けるためには法を曲げ、時には法に違反してもいいという無責任な風潮や論理が蔓延していますが、このままでは日本の秩序は崩壊してしまいます。この一点で、小泉内閣は総辞職に値すると私は考えます。
 ―― 自民党はホリエモンを亀井静香さんの選挙区へ刺客として送り込みました。この時、森田さんは「堀江のような男を国会議員にしてはならない」と演説されましたが、このホリエモンを精力的に応援したのが竹中大臣だった。彼は「小泉首相とホリエモン、そして竹中のコンビが、小泉改革を実現する」と叫んでいたにもかかわらず、マスコミの竹中批判の声は小さい。
 森田 おっしゃるとおり、竹中大臣の責任が最も重いと思います。彼は5年間弱の小泉政権で、むしろ小泉首相を引っ張る形で、一貫して金融自由化を推進してきた人物です。ライブドアの主たる業務は金融です。政府の金融問題に関する最高責任者が、ライブドアの支援者という存在ですから、ライブドアはいわば政府が国家保証したようなのです。
 竹中大臣の果たした役割は大変悪質です。彼は政府保証をして株価をつり上げ、大儲したあげく、食い逃げするのを黙認した。竹中大臣の罪は万死に値します。これは、武部幹事長と同等に扱うべきではない。もっとずっと深刻な問題なのです。


 平成版大政翼賛体制を可能にした電通の巨大な影響力

 ―― しかし、野党の竹中追及はきわめて弱い。また、どういうわけか、マスコミも竹中大臣に対しては腰が引けている。
 小泉政権の5年間、マスコミはワンフレーズの小泉言語の幻惑されて、政権批判を避けてきました。とくに昨年の郵政解散をめぐっては、郵政民営化の問題点を指摘した自民党の良識派を徹底して批判し、マスコミから干し上げましたね。
 森田 小泉応援団は、テレビをはじめとするマスコミでした。マスコミは権力者に都合の悪いことは報道しなかった。いわば、テレビ局は「権力の手先」になってしまった。テレビ局も新聞社も上層部が大体において政府に抑えられしまったのです。
 私は昨年の総選挙の前後、テレビで評論活動をしましたが、某テレビ局は、それまで私が一人で解説していた番組に自局の解説者を出演させ、敢えて私の発言を否定するコメントさせるなど、意図的に私の発言を邪魔しようとした。他のテレビ局もほとんど録画取材で、テレビ局の都合の悪い部分、つまり小泉批判の部分をカットして、放映する。テレビ局は完全に小泉政権の手先になってしまいました。テレビ局およびその政治部記者がほとんど権力の「お庭番」になってしまった。実に残念なことです。
 マスコミが報道姿勢を曲げた重要な原因の一つに、「広告」という要素があります。テレビ局は民放の場合、100%広告収入に頼っています。このテレビ局や新聞の広告収入に絶大な影響力をもっているのが、広告代理店最大手の電通です。新聞社の収入も、いまや購読料よりも広告料に比重が移っています。テレビや新聞が広告収入に依存する割合が大きくなった分だけ、電通が強大な影響力を行使するようになってきたのです。 ―― これまで電通を論じることはタブー視されてきました。「電通を批判したら、テレビや大新聞に登場できない」と言われてきましたが、森田さんは敢えて電通を批判しておられます。
 森田 すべてのマスコミは電通の軍門に下ったということです。「電通に睨まれたらオシマイだ」という状況下で、小泉政権は電通と手を組んだのです。小泉政権―電通―大新聞―テレビが一体になった「平成版大政翼賛体制」を可能にしたのは、電通の巨大な影響力です。
 この電通は実は、アメリカ共和党系の広告会社と提携しており、日本政府―アメリカ―電通が一体となって、日本のマスコミをコントロールしているといっても過言ではありません。アメリカは日本のマスコミを使って小泉政権を支え、小泉政権によって日本国民の富をかき集めてアメリカに流し込む、こうした役割を小泉政権に果たさせているのです。
 こうして、小泉政権は巧妙にメディア戦略を駆使しながら、公明党や官僚をも取り込み、「平成版大政翼賛体制」をつくって、国民を収奪しています。これが小泉政権の本質なのです。


 ブッシュのポチに成り下がった小泉政権

 ―― 「光と陰」が、流行の言葉になっています。
 森田 私に言わせれば、「光と陰」ではなく、構造改革を標榜してきた小泉政権は実は「暗黒社会」を日本にもたらしたのです。 光が当たっているのは大資本家やライブドアなど、「国民の大部分が貧困化してもよい。われわれだけが金儲けすればよい」と考えている連中だけです。彼らはリストラやマネーゲームで利益を上げ、大儲けしています。しかし、彼らは愛国心を失った、自分さえよければいいという連中です。大部分の国民は日陰に放置されたままです。
 ここで私が強調したいのは、小泉政権になって一番儲けているのは、アメリカだということです。小泉政権は日本国民の富をアメリカに移転する仕掛けを完成させ、アメリカに貢献してきたのです。
 ―― 「対米隷属政権」の小泉政権は、完全にブッシュのポチに成り下がったということですね。
 森田 そのとおりです。
 アメリカは冷戦時代に、ソビエト連邦に勝つために軍事力を拡大し、同時に国民の支持を得るために巨額の減税をしました。軍事費拡大と巨額の減税で、アメリカの財政は破綻寸前になりました。本来であれば、アメリカは自国民から税金を集めて、自国の国家戦略を遂行すべきです。ところが、レーガン政権はアメリカ国民に減税をする一方、軍事力を急速に拡大した結果、巨額の双子の赤字が出しました。
 実は、この赤字の穴埋めをしたのが日本なのです。
 中曾根政権下の1985年9月22日の「プラザ合意」で、対米従属の第一歩を踏み出しました。プラザ合意で急速な円高になった日本は、ドルを遮二無二買いました。そのドルでアメリカ国債を買った結果、日本の巨額な金融資産はアメリカに流出してしまった。アメリカ政府は「日本の安全はアメリカが保障している」と、このカネを返すつもりはありません。90年代後半期に訪米した橋本首相は「米国債を売ろうという誘惑にかられる時がある」と述べて、アメリカの怒りを買った橋本政権は吹っ飛ばされてしまいました。
 90年代初めにクリントン政権が登場して、「年次改革要望書」が出されれるようになりました。郵政民営化はこの「年次改革要望書」の中で、アメリカが執拗に要求していた問題なのです。クリントン政権下で一時は持ち直すかに見えたアメリカの双子の赤字は、ブッシュ政権になって再び急増して、アメリカの財政は破綻寸前です。そこで郵貯・簡保の350兆円の金融資産をアメリカに移転させ、赤字を埋めようようというのが郵政民営化の本質なのです。つまりアメリカの財政赤字を日本の金融資産で補填させようというのです。
 アメリカは、日本の金融資産による米国財政の赤字補填を露骨にやらずに、「年次改革要望書」という形で日本の構造改革を誘導しようとしました。それが小泉政権のいう「官から民へ」というスローガンで進められた郵政民営化なのです。民営化すれば、自由競争で強い者が勝つのは当然です。このアメリカの遠謀深慮が功を奏して昨年8〜9月に、ついに小泉首相が郵政クーデターをやったというわけです。
 07年10月に郵政公社が完全に民営化するや否や、外資が民営化した会社を買収して、日本人が営々として貯めた富がアメリカに流出することは目に見えています。
 ―― このまま小泉路線が続けば、日本の富は枯渇し、スッテンテンになってしまいますね。
 森田 日本は搾り取るだけ搾り取られて、2015年あるいは2020年頃にはボロボロになる。その時、アメリカはインドと中国を新しいパートナーにするでしょう。アメリカは、こうしたことを見通して、渡り鳥のように次の目標を設定して飛び立つ準備をしているのです。
 小泉首相は唯々諾々と、このアメリカの戦略に従っている。これが小泉政権の本質だと私は見ています。


 小泉構造改革で地域社会は死んだ 

 ――― 小泉構造改革の陰で全国の地方社会が疲弊したと聞きますが、実態は?
 森田 小泉首相は「三位一体改革」と称して、全国の地方自治体に対する補助金を大幅にカットしています。地方の公共事業もどんどん減らしています。公共事業と自治体に対する予算削減額は年間約6兆円に上っています。アメリカに巨額の資産を流出させていながら、地方からは搾り取っている。だから地方はもうカラカラになって、悲惨なものです。
 国庫補助金や公共事業を削減すれば、、公共事業でやってきた地域社会はどんどん疲弊しており、災害が起こっても復興事業を行えない状態になっています。それほど日本の地域社会はガタガタになっているんです。
 政府は「景気は回復した」と言っていますが、地方に行くと、「どこの国のこと?」という感じです。最近、帯広に行きましたが、町は閑散としており、地域経済はメチャメチャだそうです。熊本でも「東京が景気がいいそうだが、この景気が熊本にくるには10年ぐらいかかりますかね」と言っており、地方経済は大袈裟に言えば絶望的です。
 このように小泉構造改革の陰で全国の地方社会が疲弊し、賃金がどんどん下がって、平均年収200万円を割るなど、貧困化が急速に進んでいます。
 さらに小泉政権は政府系金融機関の整理統合を進め、中小零細企業向けの金融機関をなくそうとしています。この結果、今後、中小零細企業の倒産が増大する可能性があります。実はアメリカでは、行き過ぎた自由競争の結果、中小零細企業の倒産が相次ぎ、健全なアメリカ社会と構成していた中間層が崩壊してしまいました。小泉政権の構造改革の名の下に、日本でも健全な中産階級が崩壊するのは目前です。
 行き過ぎた小泉構造改革が作り出した社会の歪みを是正することが、ポスト小泉政権の喫緊の課題です。そのためには経済成長によって全国民の生活レベルを上げる政策をとり、全国民が希望を持てる世の中にすることです。


 正常な判断能力を失った小泉首相

 森田 小泉構造改革は社会的・経済的強者だけに躍進のチャンスを与えました。地域で見ると、東京を繁栄させ、地方を切り捨てただけです。大工業を栄えさ、中小零細企業を衰退させました。国民は少数の成功者と、大多数の不成功者に分かれました。
 つまり小泉改革は強者に光をもたらす反面で、弱者を陰の地帯に放置したのです。
 しかも小泉首相が悪質なのは、マスコミを使って「改革だ。改革だ」と煽りたて、地域社会は火が消えたようになってしまったことです。この結果、生活保護者世帯が急増し、大衆の貧困化がすごい勢いで進んでおり、少数のホリエモンのような、どう考えてもまともな商売ではない手馴れた連中だけが儲かっています。
 去る2月1日の参院予算委員会で小泉首相は「格差は悪いことではない」と答弁しましたが、私はこの答弁は開き直りの暴言であり、内閣総辞職に値するものだと思います。
 さらに小泉首相は「成功者を妬んだり、能力ある者の足を引っ張ったりする風潮」を非難していますが、内閣総理大臣たる者は、このような国民を馬鹿にするような発言は厳に慎むべきだと思います。小泉首相はもはや正常な判断能力を失ったのではないかと思うほどです。9月の任期を待つことなく、いますぐにでも辞任すべきだと思います。
 前述のように、日本の巨額の国富をアメリカに移転させ、その結果、日本の中小零細企業をいじめ、地方を切り捨てて、中産階級を崩壊させてしまいました。小泉首相がやってきたことは、自民党を潰すことではなく、日本社会を潰すことだったのです。
 私は、小泉政権の5年間は「罪と罰」だと思います。「罪」多き者は「罰」を受けなければならないのです。


 日本のマスメディアはインチキだ

 ―― それにしても、マスコミは堕落、腐敗しましたね。
 森田 私は占領下の日本を知っていますが、この7年弱の占領期間中に日本のマスコミは完全にアメリカに骨を抜かれてしまった。終戦後、私のいた日本評論社は『日本評論』という総合雑誌を出版していましが、占領政策批判の記事を掲載したとたん、即刻発行禁止処分を受けました。当時の総合雑誌『改造』も占領政策批判をして同様に発行禁止にされ、結局倒産してしまいました。占領軍は、表向き民主主義を推進・擁護していましたが、裏へ回ると、アメリカや占領政策を批判をするものは容赦なく潰してきたのです。
 ―― 占領軍はプレス・コードを発令し、憲法で禁止さていた検閲を実施しました。

 森田 彼らの巧妙なところは事前検閲をし、検閲事態を闇の中に隠してしまったことです。当時の新聞社はそれに脅えて、「占領軍に睨まれたら終わりだ」「アメリカ批判さえしなかったら生き延びられる」ということで、批判精神を放棄してしまいました。マスコミは、アメリカを批判をせず、ゴマすりをし、さらにはアメリカ賛美の宣伝だけを報道するようになってしまった。これを私は自分で体験してきたからこそ、よく知っています。
 かつて江藤淳さんが、著書『閉ざされた言語空間』の中で、アメリカの資料を駆使してこのことを実証的に検証しています。
 ―― 彼ら大新聞は占領軍に協力して検閲をし、国民の「知る権利」を奪ってきた。しかし、いまだに彼らは自己批判していません。自分たちの都合のいい時だけ、国民の「知る権利」を主張していますが、これは許せない。
 森田 日本のマスメディアはインチキです。自分たちは格好のいことを主張しながら、肝心のアメリカには腰が引け、ゴマばかりすっています。戦後はアメリカで教育を受けた新聞社の編集者・記者が増えて、アメリカの徹底批判を避け、アメリカは日本よりすぐれた国だという幻想を振りまいているのです。アメリカ賛美がマスコミの役割になってしまっているのです。日本のマスコミはこういう状況に置かれてしまい、正当なる批判精神を失ってしまいました。真実を報道するという姿勢すら失ってしまったのです。
 とくに小泉政権になってから、権力によるマスコミの完全支配が確立しました。これに、電通が加わることで、二重三重に小泉政権によるマスコミの支配が確立してしまったのです。そして不思議なことは、誇り高いはずのマスコミ言論人が、権力に唯々諾々と従っていることです。ここが、問題なのです。


 日本人よ、独立心を取り戻せ!

 ―― 最近の日本人には、独立国として生きていく気概が希薄になってしまったのでしょうか。
 森田 日本は独自の歴史・伝統・文化をもった人口1億2700万人の大国です。日本は独立自尊の国家として生きていくしか進路はありません。ところが、私が講演で全国各地に行くと、まったく異人種かと思うような人が時々いるのです。彼らはこう言うのです。「われわれ日本をアメリカの51番目の州にしてもらい、アメリカに全部面倒見てもらった方がいい」
「アメリカ市民として日本人に選挙権を与えてもらえれば、日本人を大統領に選べるチャンスがある」
 はじめは冗談かと思いましたが、そうではないのです。日本国民たる者は独立国日本として生きていくという気概をもっているものだと思ったら、こういう人が出てきたのですから、恐ろしい時代です。
 これは、長年にわたる日米同盟の宣伝のために日本人が独立心を失い、独立国家としての気概を失ってしまったからです。国連加盟国に中で、独立国として生きていくという気概・精神を失ってしまった国は他にあるのだろうかと思うと、情けない。かつてのソビエト連邦下の東欧衛星諸国は傀儡政権でしたが、彼らは厳しい統制下でも民族自決の気概を燃やし、国家独立の機会を虎視眈々と狙っていました。
 1億2700万人の人口を擁する大国の国民のなかから、「アメリカの一員にしてもらいたい」「植民地になってもいい」などと言う者が現れるほど、情けない国になってしまったのか、と言いたくなります。小泉政権になってから、そういう人が増えてきた。実に痛恨の極みです。
 ―― いまの政治家に何を期待しますか。
 森田 私は政界、官界、経済界、マスコミ界の指導者の能力が低く、時代とともに低下していることを本当に残念に思います。とくに政治指導層の力量の低さは深刻です。最近の政治家について言えば、政治能力は20〜30年前までの政治家に比べて著しく低下しています。30年ほど前の政治家には、第1次大戦、第2次大戦を体験した人も多く、高い政治能力をもつ人が多かったと思います。いまの政治家はもっと自己研鑽に励むべきです。
 それらの政治家と今の政治家の違いの一つは、昔の政治家が 「よく考えた」のに対して、いまの政治家はあまり考えません。日本の国のことを真剣に考えない政治家が増えています。古代の政治家キケロは「生きることということは考えることである」と言いましたが、最近の政治家は自分の頭で考えることをしない。もっと考えてほしいと思う。
 もう一つは、昔は長期的に物事を考える政治家が多かったが、いまはほとんどいません。孔子は「遠慮なければ近憂あり」(長い将来のことを考えないでいると、近くでよくないことが起こる)と言いましたが、日本の最近の指導者は遠い将来のことをあまり考えません。
 概していまの政治指導者には、国家の長期戦略がありません。アメリカが日本の基本方針を決定し、日本政府はそれをそのまま実行するというのが実態です。長期的視点に基づく戦略・戦術思考がないから、国際情勢の精密な分析ができない。国際情勢の見方・判断をアメリカに頼りきっています。また彼らは日本自体のことをも真剣に調査・研究していない。日本の指導層は、孫子のいう「彼」も「己」も知らない状態にある。これでは、うまくゆくはずがない。このことを自覚し、反省する必要がありますね。
 私も73歳になりましたが、小泉のような人物に日本を蹂躙され、アメリカの従属国にさせられたままでは、静かにあの世へ行くというわけにはいきません。
 私は最後のご奉公として、「老人パワー立ち上がれ!」「植民地日本を子孫に残せるか」と、立派な独立国としての日本を残すために、残されたパワーを炸裂させようじゃないかと、全国各地で呼びかけているのです。
【以上は『月刊日本』3月号に掲載されたインタビュー記事です。同誌編集部の承諾をいただき掲載しました】