横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー (1)団体交渉申し入れ書、(2)2006年2月1日団体交渉の記録(2006.3.17)
横浜市立大学教員組合週報 組合ウィークリー 2006.3.17
もくじ
● 団体交渉申し入れ書
● 2006年2月1日団体交渉の記録
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●団体交渉申し入れ書
教員組合が当局に対して提出した「団体交渉申し入れ書」は以下のとおりです。団交の日程はまだ未確定ですが、新年度に入る時期を目前にしてとりわけ教員の昇任人事の問題は緊急性があるとの見地から、組合では当局に対して早急に交渉に応じるよう要求しています。
平成18年3月9日
公立大学法人 横浜市立大学
理事長 宝田 良一
殿
横浜市立大学教員組合
執行委員長 岡 眞人
団体交渉申し入れ書
時下ますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
当教員組合は今般執行委員選挙を実施し、新たな役員体制で教員の教育・研究条件の向上を図るとともに、教育現場から本学の真の改革を目指す取り組みを継続して展開することになりました。建設的な労使関係の形成に向けてご高配を賜りますようお願い申しあげます。
さて今回、下記の要領で団体交渉を申し入れることにいたしました。ご多用の折恐縮ですが、議題の重要性にかんがみ、三月中を目途に可及的速やかな対応を要請いたします。
記
一 現在、大学当局が進めている教員昇任人事および関連事項に関する要求
(1)現在、大学当局が進めている本学教員の昇任人事プロセスは不透明かつ説得力に乏しく、教員間に不安や疑念を引き起こしている。今回は特に昇任候補者の推薦が誰のどのような判断基準に基づいて行われたのかについて明快な説明を求める。さらに、今後どのようなプロセスを経て昇任決定に至るのかについて具体的な説明を求める。
(2)今回の大学改革における教員全員任期制の導入は関連法規の条文と付帯決議、法曹界での議論にてらして違法性が極めて強いばかりでなく、関係教員の労働条件の一方的な不利益変更にあたるというのが当教員組合の一貫した基本的見解である。横浜市立大学から公立大学法人への移行に際して、教員の身分は法に基づいて継承されている。この身分継承者が教授等への昇進に際して、すでに獲得している定年までの期間の定めのない雇用保障に関する権利を放棄するよう強制されることは重大な労働条件の不利益変更に当り違法である。したがって、昇任有資格者と認定された者に対して、任期制受け入れの諾否に係らず速やかに昇任の発令をすることを求める。昇任の機会を利用して任期付き雇用契約への同意を強制することは、重大な違法行為であると当組合は考えていることを通告する。
(3)任期付の雇用契約を教員が受け入れた場合、どのようなメリットとリスクが生じるかについて、雇用主としての公立大学法人は詳細な説明を行い、労働契約条件を文書で示し、しかるべき考慮・検討時間を保証する必要がある。このプロセスを欠いた労働契約は無効であるというのが当組合の基本的見解である。この立場を踏まえ、次の事項を要求する。
@昇任後の賃金、労働条件について文書で明示することを求める。
A昇任人事に際して昇任候補者に推薦された教員が任期つき労働契約の締結を検討しようとする場合、「再任」の基準・条件が明示されていない状況においては、契約締結の諾否について適切な判断を当人が行うことは困難である。これに関して「普通にやっていれば再任される」という趣旨の発言が以前の当局説明会においてなされたが、「普通」とは具体的に何を意味しているのか曖昧なので具体的で明確な説明を求める。
(4)今回の昇任人事に関する規程および内規は平成17年12月20日施行とされているが、当組合がその存在を確認したのは平成18年2月1日の団交時であり、全文入手にはさらに数日を要した。教員の身分や労働条件に関する重要事項について、当局が当組合に速やかな周知を行わなかったことは労使間の誠実で信義ある関係を損なうもので極めて遺憾である。このような事態の再発防止を強く求めるとともに、今回の昇任人事規程および内規について内容を再検討するための協議を当組合と速やかに行うことを求める。
二 賃金および労働条件に関する要求
(1)当局は賃金制度について教員評価制度に基づく年俸制を導入するとしているが、その具体的内容については一年以上にわたり当組合に対して必要な説明を実施していない。当局は近い将来の制度導入に向けて検討を進めていると聞くが、事実とすれば、その検討内容について説明を求める。本件は極めて重要な労働条件の変更にあたるので、当組合との交渉に応じるのは当局に課せられた法的義務であることを申し添える。
(2)平成18年度における賃金等の改善についての当局の見解を求める。
(3)公立大学法人への移行時に講師と助教授の職名が準教授に統合された。法人化以前の特に文系学部における人事慣行では、講師と助教授の講義負担は大差なく、講師から助教授への昇格は比較的に短期間で行われていた。このため、法人化により講師から準教授になった者に対しては、以前の助教授並みの処遇体系に移行させるのが妥当なので、早急な改善を求める。
(4)公立大学法人移行後に採用された教員に対する労働契約の内容と提示方法について説明を求める。
以上
●2006年2月1日団体交渉の記録
先月初めに行なわれた団交で、当局が事実上、昇任人事を餌に任期制の受け入れを迫るという不当な姿勢を示したことは、すでに組合ウィークリーや総会・学習会の中でお伝えしてきましたが、その正式の記録については、当局との確認作業を経て、このたびようやく確定しましたので、これを以下に掲載します。
このなかで、昇任人事をめぐる任期制強要以外にも、いくつか当局の方針の問題点が明らかになりました。たとえば、従来の専任講師だった教員の給与の改善について、当局は「そのようなことは考えていない」と拒否する姿勢を示しています。これでは、専任講師と助教授は一括して「準教授」とされたものの、専任講師の給料水準はそのまま据え置かれ、昇進の機会もなくなっているため、従来の慣行に比べて不利益な変更がなされているという問題を放置することになります。「評価し、年俸に反映させ」るといっても、評価制度自体が不透明な状況です。組合としては、引き続きこの問題を取り上げていきます。
他方、教員組合の正当な要求に対して、当局側の前向きな回答も、いくつかの点においては得られました。現場教員の意見を無視して強行した結果招いた「TOEFL500点」をめぐる危機的状況については、「状況について英語教員の責任を問うつもりはない」として、責任をなすりつけたりはしないということを当局側は明言しました。また、4年後の次回学長選考の際には、「より一層教員の声を反映する制度」の導入に向けて検討していくことを当局側も約束しました。
こうした問題点と成果を踏まえ、教員組合はなお粘り強く交渉を続けていく方針です。
2006年2月1日団体交渉の記録(横浜市立大学・教員組合)
出席者
(経営側)松浦・副理事長、清水・事務局長、中上・経営企画室長、福島・人事担当課長、金井・学務センター長、渡邉・人事担当係長、田辺・人事係員
(組合側)上杉・執行委員長、真鍋・副執行委員長、随・書記長、和仁・書記次長、岡・独法化対策委員、小城原・独法化対策委員、山根・独法化対策委員、
(1)教員の待遇、勤務条件、教員の人事制度に関する要求
1.教員の昇格人事に際し、任期制を受け入れる旨の新規雇用契約を強制しないこと。
当局側回答
昇任人事については、基準についての内規を決め、推薦作業をお願いするなど、ようやく一昨日から具体的作業に入ったところである。昇任する場合、任期制が法人としての基本的な枠組みであるから、これを崩すわけにはいかない。したがって、審査の段階では任期制への同意の有無は問わないが、任期制を受け入れない場合には、新たな雇用契約が成立しないので、昇任の発令ができない。ただし、その場合も既得権は認め、いずれ任期制に応じる場合は昇任させる。
組合側発言
任期制を受け入れないという理由で、昇格の資格ありと認められた者を昇格させないというようなやり方は、深刻な問題を引き起こす。そのような方針は組合としてはとうてい受け入れられない。
2.教員人事の透明性を保障するために以下の措置を要求する。
@教員人事の審査と推薦候補者決定を当該コース所属教員の互選により選定された専門教員に任せること。選考過程に専門的学問以外の要素が入らないように工夫すること。
A審査の結果およびその過程等について全教員に周知すること。
B最近検討されていると言われている「特任教授」の制度上の趣旨を明確にするとともに、その採用に当たっては、その必要性を十分に吟味すること。なお、その際にも「透明性・公平性・公正性」の原則が貫かれるべきことを確認すること。
組合側補足発言
要求項目の@は以下のように修正したい。
「@教員人事の審査と推薦候補者決定を当該コース所属教員等の互選により選定された専門教員に任せること。選考過程では専門的学問の要素が最も重視されるように工夫すること。」
当局側回答
部会で細かく審査したものを人事委員会に上げるというやり方をとって、その中で専門的要素を重視するという形でやっていきたい。透明性については、学外の委員が2名入っており、十分確保している。周知についてはホームページの学内専用情報で行っていく。特別契約教授は、学外の専門家で活躍している方に協力していただく場合や、定年退職でやめられた方で後任が必ずしも十分に補充できないときに一年任期で就いていただく(更新あり)という趣旨のものである。専任教員の職域を狭めるような性質のものではない。透明性・公平性・公正性については、専任教員と同様の手続きを取ることで確保している。
組合側発言
学外委員が入っているというだけでは必ずしも透明性や公平性の保障にはならないのではないか。学内の教員に対する透明性の不足という問題がある。新任の教員がどのような専門業績を有する方かというような今まで教授会による審査過程で伝えられていたことが全教員に知らされておらず、仲間としてお迎えすることも十分にできないなど困った事態も生じている。学部長から全教員に伝えるというようなやり方もできるのではないか。
当局側発言
個人情報の問題もあるが、教員どうしの情報が伝わるような措置を講じたい。
組合側発言
実際に専門的学問内容の審査に当たる教員は3名と定められたと聞いているが、問題があるのではないか。
当局側発言
日程を急ぐ都合上から部会において個別ケースとしてそのような方式をとったのだと考える。規則として定めたわけではない。
組合側発言
人事における権限が管理職に集中しており、恣意的な運用となる危険性が生じている。
当局側発言
発議段階で各コースの運営方針を反映している仕組みになっている。
3.教員人事評価制度のあり方を教員独自の組織で具体的に検討し、評価は同僚評価に基づく「能力向上」を目的として行えるよう工夫すること。評価を処遇に安易に反映させないこと。もし、処遇に反映させる場合にも、試行期間を十分にもって行われるべきことを確認していただきたい。
当局側回答
4月以降実施していきたいので、制度設計の中で望ましいものを作っていきたい。試行期間は十分に取るようにする。
4.これまで講師だった者の年俸算定基準を旧来の助教授の給料表に基づくものに移行させること。
当局側回答
これまでの給料表はなくなっており、年俸決定の際に評価し、年俸に反映させていきたい。
組合側発言
これまでであれば当然、専任講師が助教授に昇格するということがあったのに、それがなくなったという事態になっているので、政治的判断として実現していただくようお願いしたい。
当局側発言
そのようなことは考えていない。
5.サバティカルの制度化を早急に実現させること。
当局側回答
すぐに検討する段階には至っていない。中長期的な課題であると認識している。
(2)教員の教育研究条件に関する要求
1.キャリア支援センターの職員を充実させ、本来の事務的な教育研究補助の業務を教員に押し付けることを止めること。旧来事務で行ってきた学生に対する教務上の個別連絡、事務手続きを個別の教員に行わせないこと。
当局側回答
教員と職員の仕事を機械的に分けるという考え方ではなく、仕事を双方で分け合い、本来の業務に差し支えが生じないような、フレクシブルな関係をもう少し築いていくような努力を続けたい。
組合側発言
キャリア支援センターの人員は増やすのか?
当局側発言
最終的にはまだ決まっていない。市に帰る人員との調整を行なっているところである。
2.雑誌購入をカットしたために、電子ジャーナルで入手し得ない雑誌が激増している現状に鑑み、研究機関にふさわしく、その復活・拡充に努力すること。
当局側回答
件数が減っているという面はあるとしても、電子ジャーナルでカバーすれば時間外でも見られるというメリットもある。専門誌の重要性は認識しているが、予算が取れないという制約があることを理解していただきたい。
3.いわゆるTOEFL500点問題において、危機的状況の責任を英語教員に押しつけないこと。
当局側回答
状況について英語教員に責任を問うつもりはない。大学として決めたことであるから、全学をあげて努力していく。
4.研究費の配分基準をより明確にすること。
当局側回答
競争的研究費については、分野による戦略的配分を行なっており、それを研究戦略委員会・教育研究審議会での審議という手順をとって、きちんと基準に沿って進めている。限られた予算であるから不満もあるだろうが、公平性を確保しつつ効果的活用を図るという、いわば「選択と集中」がなされていることを理解していただきたい。
組合側発言
分野による偏りが大きすぎる結果になっていないか。
当局側発言
採択率などで考えれば、一概には言えない。
組合側発言
医学部では個々人に10万円が配分されるということが、十分周知されていない。
当局側発言
必要な情報は周知するよう努力する。
5.教員の担当コマ数の基準を明白にすること。
当局側回答
公平であるべきという理念に対し、現在はカリキュラム上の科目適合性を優先しているため、一部に集中している面があることは承知している。一律に何コマ以内と定めることは、それができるような時期が来れば考えたいが、現在は難しい。
(3)教員の大学運営への参加(大学行政)に関する要求
1.学長選考に現場の教員の声が反映する意向投票のような制度の導入を検討すること。その他のいわゆる管理職の選考に当たっても現場教員の意向を取り入れる仕組みを考案すべきこと。
当局側回答
候補者の推薦について、経営審議会及び教育研究審議会からの推薦だけでなく、学内の教授及び準教授15名以上の推薦により候補者となることを可能としており、学内意向は反映できるものと認識している。次回学長選考は4年後なので、その際にはより一層教員の声を反映する制度を導入することを検討していきたい。その他の管理職については、制度的にはともかく、現場との対応を十分念頭において選考されるものと考えている。
組合側発言
制度的保障がなければ、必ずしも現場の意向が尊重されているとは思われない。
2.現場の意見や苦情を直接学長及び理事長に届けることができる仕組みを確立すること。
当局側回答
現在も所属長を通じてはなされているが、今後さらにコミュニケーションを円滑にする努力はしていきたい。たとえば、あらかじめ時間を設定しておいて自由に訪問できるようにする「オープンドア」などについても考えていきたい。
組合側発言
昇任人事の内規や予算書は組合に提供してもらえるか。
当局側発言
内規は提供する。来年度予算など審議中のものは無理だが、過去の資料などは提供する。
以上
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教員組合に皆様の声をお寄せください
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