起立せぬ親と来賓調査 君が代 式典で徹底図る 『東京新聞』(2006.6.20)

 

http://www.tokyo-np.co.jp/00/sya/20060620/mng_____sya_____007.shtml

 

 

起立せぬ親と来賓調査 君が代 式典で徹底図る

 

 埼玉県戸田市の伊藤良一教育長が今月十三日の市議会で、同市立小中学校の卒業式や入学式の君が代斉唱の際に起立しない来賓や保護者について「はらわたが煮えくりかえる」と答弁、調査する方針を示していたことが分かった。伊藤教育長は十九日、本紙の取材に対しても起立しなかった来賓の氏名や人数を調査する意向をあらためて表明。起立の徹底を図ることを明らかにした。

 

■教育長『はらわた煮えくりかえる』

 

 君が代斉唱をめぐっては、東京都教委が、起立しなかった教員を処分するなどしているが、教委に指導権限のない来賓や保護者までも調査対象とするのは異例だ。

 

 関係者によると、十三日の定例市議会で、民主クラブの高橋秀樹市議が「保護者や来賓で起立しない人がいる」と指摘。これに対し、伊藤教育長は「(事実なら)はらわたが煮えくりかえる」「『内心の自由だ』と言う人がいるようだが、生徒たちの前で規律を乱すようなことはあってはならない」と答弁し、調査する意向を示した。

 

 伊藤教育長は、本紙の取材に対しても「表現は適切でなかったかもしれない」としながらも「式典は規律や礼節を学ぶ大切な場。来賓らには子供の模範となってもらいたい」と不起立を批判。市立の全小中学校長に、今春の入学式・卒業式の君が代斉唱で起立しなかった来賓の氏名や保護者の人数の報告を求める考えを明らかにした。

 

 起立しなかった来賓や保護者に対しては、教育委員に対応を慎重に検討してもらう方針。市教委では、以前から校長を通じて式典前に、君が代斉唱の際に起立するよう来賓らに文書で協力を依頼していたという。

 

 市教委は、教員や児童・生徒の不起立については「チェックしていないし、報告も受けていない」としている。

 

■教員以外にも「強制」が波及

 

 学校行事での君が代斉唱をめぐっては、東京都教委が校長の職務命令に違反して起立しなかったことなどを理由に、教職員延べ三百四十五人を戒告や減給などの懲戒処分にしている。権限の及ばない来賓や保護者に対しても、間接的に起立を強いる動きも出ている。東京都品川区では二〇〇一年、若月秀夫教育長らが君が代斉唱時に起立しない来賓を今後招待しない方針を示し、波紋を広げた。区議会で若月氏は「結婚式でも(式のやり方に)従わない人は招待しない」と述べた。

 

 〇四年四月には、中野区立小学校の入学式で当時PTA会長だった男性が教職員の大量処分問題に触れ、「子供たちが内心の自由を傷つけられるような事態にならないことを願う」と発言。

 

 その後、PTA会長を辞任した男性は「発言を問題視した校長に辞表を書くよう迫られた」と主張し、東京弁護士会は今年三月、人権侵害に当たるとして、当時の校長と副校長に警告書を出した。

 

 今春の都立高校の卒業式では、前任校に招待され、来賓席で起立しなかった教員が職務命令を受けていなかったにもかかわらず、「公務員として不適切」とされ、都教委から厳重注意を受けた。