日本は好戦国か 日々通信 いまを生きる 第216号(2006.7.17)

 

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>>日々通信 いまを生きる 第216 2006年7月17日<<

         伊豆利彦 http://homepage2.nifty.com/tizu 

 

        日本は好戦国か

 

        朝鮮(北)のミサイル発射に対して、日本はただちに国連安保理事会に

        アメリカなどを共同提案者として制裁決議案を上程した。

 

        中国は強くこれに反対し、朝鮮(北)説得のために最大の努力をした。

        アメリカは制裁決議をいそぐ日本をおさえ、中国の努力の結果をまった。

        朝鮮は中国の説得に応じず、中国の努力は失敗した。

        日本は制裁に固執する非難決議案を作製したが、これにも中国が平和的

        解決の道を閉ざすとしてつよく反対し、ロシアがこれに同調した。

 

        最初、日本の共同提案者になった英仏が制裁条項を削除すべきだと主張

        し、米国もこれに同調して日本をおさえ、制裁条項を削除した非難決議

        を全会一致で可決した。

 

        この間日本ではいまにも朝鮮がミサイルを撃ちこむかのような雰囲気が

        つくられ、「敵基地攻撃論」や迎撃ミサイル整備論などがが閣僚から発

        言された。このような日本政府の動向は、平和的解決を求める諸国の方

        針とかけ離れて異常だった。マスメディアはこの政府見解を正当化する

        情報を氾濫させ、国民世論を煽動したが、なぜ、日本はそれほど朝鮮制

        裁に固執したのだろうか。

 

        制裁にふみきれば、どのような事態が生ずるかを十分検討したのか疑わ

        しい。日本の好戦的態度が、中国、ロシア、韓国の平和を求める態度と

        対照的に際立って残念だ。

 

        元来、朝鮮も対米、対日国交回復と経済援助をつよく求め、199410

        に米朝合意が成立し、20029月には日朝平壌宣言が結ばれた。しかし、

        ブッシュ政権の「悪の枢軸」論により、米朝関係は敵対的になり、KE

        DOによる重油の供給や軽水炉建設が廃止された。日朝関係も拉致問題

        を理由として、日本の敵対的態度がつよまり、朝鮮制裁論が横行するよ

        うになった。

 

        朝鮮(北)は中国や韓国の支援を受け、改革開放路線への転換を図り、

        対米、対日国交回復を強く求めたが、一方で、対米、対日不信も根強く、

        核兵器やミサイルの開発をつづけた。

 

        6カ国協議はこのような状況を打開し、朝鮮半島の平和の維持と、東北

        アジアの安定を目的として、中国を主宰者として開かれ、20059月に

        は6カ国協議共同声明が発表された。

 

        しかし、米朝間の確執は深刻で、両国の関係が改善されなければ協議の

        持続も困難になった。朝鮮(北)のミサイル実験にこのような行き詰ま

        りの打開を求める意図があったことは否定出来ない。

 

        この実験を契機に日本は安保理に制裁決議を求めたが、結局非難決議に

        とどまった。朝鮮(北)はこの決議につよく反対したが、今後はこの決

        議にもとづいて、さらに中ロ、韓国の努力によって事態の平和的解決を

        めざすことになる。

 

        元来なら、平和主義の日本が先頭に立って平和的解決に努力するはずだ

        が、いまの日本は対決姿勢をつよめて、その役割を果たし得ない。平和

        解決のために尽力する中国を敵視する動向さえ見受けられる。

 

        この事件を通して、アメリカも平和的解決を求めており、強硬な制裁論

        は日本だけということが明らかになった。アメリカと中国の関係は、さ

        まざまな問題を内包するにせよ、ますます強まり、中国、韓国、朝鮮

        (北)との対立を強める日本は、アメリカから適当に利用されて、いよ

        いよとなれば見捨てられることになるだろう。

 

        <狡兎死して走狗煮らる>という言葉がますますつよく思われる。

        日本はいたずらな対米追従から、真に日本の前途を見通した方針を立て

        るべき時だと思う。

 

        平和憲法をあらためて確認し、平和主義にもとづく対アジア政策を確立

        すべき時だと思う。

 

        先日、高校時代の同級生の会があり、愉快なひとときを過ごした。

        漱石を読む会では「吾輩は猫である」をかなり丁寧に読んできた。

        日露戦争の最中に苦沙弥先生の家に集まるのは<太平の逸民>だった。

        今日から二三日、東京を離れて休養する。

        皆さんもそれぞれにリクリエーションのことも考えて、息長くいまの世

        に生きることをお考えください。