靖国参拝 安倍長官のトンチンカン発言 国際的に通用しない 「しんぶん赤旗」(2006.7.27)

 

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik4/2006-07-27/2006072702_03_0.html

 

 

2006年7月27日(木)「しんぶん赤旗」

靖国参拝

安倍長官のトンチンカン発言

国際的に通用しない


 安倍晋三官房長官が、首相の靖国神社参拝に反対する意見に対し、二十三日の講演で、「(A級戦犯は)国内法的には犯罪者でないと国会で答弁されている。講和条約を受け入れたから参拝すべきでないという論議は、全くトンチンカンだ」(「読売」二十四日付)と批判しています。

 この主張は安倍氏の持論です。最近の著書『美しい国へ』でも展開されています。

 しかし、国際法廷で裁かれた犯罪者を「国内法的には犯罪者でない」などといっても、国際的には犯罪者であることに変わりないのですから、全く意味のない言い分です。当時の政府が「戦争犯罪者は、日本の法規の下に罰せられたものではない」(木村篤太郎法務総裁、一九五二年三月二十六日、参院法務委員会)と答弁していますが、一方で「戦争裁判法廷において課せられた一つの犯罪者なのであります」(同前)とものべざるをえませんでした。

 日本の国内法で裁かなかったから“普通の犯罪者”と性格を異にするというだけにすぎません。逆に国内でも戦犯を裁けという要求があったにもかかわらず、裁かなかったことが問われます。

戦争違法化の国際的な流れ

 もともと、日本はサンフランシスコ平和条約第一一条で、日本の戦争指導者を裁いた東京裁判を受け入れています。「トンチンカン」という安倍氏は、この政府の立場をどう考えているのでしょうか。

 国際裁判で侵略戦争の指導者を犯罪者として裁いたのは、ナチを裁いたニュルンベルク裁判と東京裁判が最初です。

 第一次世界大戦後、戦争の違法化という国際的な流れの大きな進展、国際連盟規約や一九二八年の不戦条約などを通じた国際法の大きな発展がありました。東京裁判は、天皇の責任を追及しないなど重大な弱点を抱えつつも、戦争そのものを国際法上の違法行為とする国際的な流れのなかで、侵略戦争の指導者を裁いたものです。そこで確認された原則は、国際連合でも確認され、その後の努力の積み重ねと到達点を盛り込んで、国際刑事裁判所規程の採択として実っています。

 こうした戦争違法化の国際的な流れを無視し、あるいは否定的にとらえて、侵略戦争の指導者を擁護してみせるところに、安倍氏の特異な歴史観がにじみでています。

国際秩序に挑戦する立場

 靖国問題の核心は、侵略戦争を正当化、美化する靖国神社に首相が参拝することで、この神社の立場に政府公認のお墨付きを与えることになるということです。同神社前宮司の湯沢貞氏は「A級戦犯だけ合祀(ごうし)しないのは極東裁判(東京裁判)を認めたことになる」(『正論』二〇〇五年八月号)とのべ、A級戦犯の合祀が、「東京裁判」に“抵抗”するためのものだったと明言しています。

 これは、日本、ドイツ、イタリアがおこなった戦争が、犯罪的な侵略戦争だったという共通認識に立ち、二度とこうした戦争を許さないという決意の上に成り立っている戦後の国際秩序に挑戦する立場にほかなりません。

 国際的に通用しない議論をもちだして首相の靖国参拝批判を封じようとする安倍氏の主張こそ、不見識です。(小林俊哉)