将棋名人戦移行問題 破格の条件提示で毎日新聞社は将棋名人戦死守なるか 『週刊文春』2006年8月3日号(2006.7.29)

 

『週刊文春』 http://www.bunshun.co.jp/mag/shukanbunshun/ 

 

資料

米長邦雄氏が、東京都教育委員/日本将棋連盟会長としてふさわしくない理由

 

 

破格の条件提示で毎日新聞社は将棋名人戦死守なるか 『週刊文春』2006年8月3日号(2006.7.29)

 

 毎日が三十年間守り続けた地位に留まるのか、挑戦者・朝日が奪取を果たすのか?

 春からモメ続けた将棋の名人戦主催問題。八月一日に開かれる日本将棋連盟の臨時棋士総会でいよいよ決着する見通しだ。

 「朝日の条件を上回る内容だし、長年の恩義もあるので、常識的には『毎日勝利』と見る人が多い。しかし、自ら主導した朝日への移管を目論む理事会側は、相当数の委任状を集めている様子です。票読みは難しい」(現役棋士)

 騒動の発端は三月中旬、朝日が連盟に単独開催案を提示したこと。その条件は、契約期間がこれまでの三年に対して五年。契約金は現在の三億三千四百万円を上回る、三億五千五百万円。他に、普及協力金一億五千万円を五年間払う。現在の朝日オープン将棋選手権(約一億三千五百万円)に替えて、四千万円の臨時棋戦を五年間実施する。

 この案に飛びついた連盟理事会は、同月末、毎日へ一方的に契約解除を通告したが、寝耳に水の毎日は徹底抗戦に出た。現役棋士の多くも、朝日と理事会の横暴を非難する側に回る。

 「五月の棋士会では、米長邦雄会長・中原誠副会長らの執行部に対して、『毎日が気の毒』『守銭奴』などと、厳しい批判の声も出たようです」(将棋記者)

 慌てた理事会は両杜共催案を提示したが、毎日は拒否。「この間に朝日は棋士を対象に説明会を開きましたが、一度目は十人。二度目は一ケタの人数しか出席しなかったといわれます」(連盟関係者)

 旗色の悪さを覚(さと)った朝日は、以後「連盟と毎日の交渉決裂待ち」という姿勢に転じる。

 その後に毎日が提示した条件は、契約金を百万円増額するほかに、将棋振興金三千万円を毎年拠出し、全日本都市対抗将棋大会(事業規模二干八百万円)を創設。契約期間は七年に延長した。

 「しかし、財政難の毎日新聞社が七年後まで存続しているのか、という懸念もあります(笑)」(前出・将棋記者)

 騒動を引き起こした米長会長は表決直前の一週間、通信手段もないモンゴルの砂漠へ出張とか。近著『不運のすすめ』(角川書店)の冒頭には、〔プロ棋士は、一度指した手を引っ込めてはいけない。それが勝負の世界のルールである〕とあるのだが……。